二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

G・グールドを聴く

2012年09月01日 | 音楽(クラシック関連)
<サンピア夕景>


このあいだ、BOOK OFFを散歩していて、グレン・グールドが演奏する「ゴルトベルク変奏曲」の新盤が置いていあったのを眼にとめ、買って帰って三度ばかり聴いた。
二十世紀最高の天才ピアニストといわれている。
ただし、J・S・バッハの――という限定がつくけれど。

これほど興味深い人物は、そう多くは存在しないだろう。
わたしはバッハは、ドイツ系正統派と目されているリヒターやヴァルヒャを愛聴してきたので、正直いって、グレン・グールドは異端だと考えてきた。
現在でも、その思いを完全に払拭しているわけではない。
しかし、レコードショップへいってみるとたちどころにわかるが、G・Gの人気はすばらしいものがある。
ピアニストはなんだかんだといって、避けて通ることができないはずのショパンを、「感情過多」という一語で片づけてしまい、いっさい弾いていないというだけでも変わっている。

「ゴルトベルク変奏曲」は、ヴァルヒャやレオンハルトで聴くのとは、ずいぶん違った音楽として耳に入ってくる。この曲の旧盤を手に入れて、はじめて聴いたのはいつだったか?
おそらく30代のなかばころだろう。もう25年も昔だが、ある種の拒絶反応があったので、それから、グレン・グールドのバッハは、まったく聴いてはいなかった。

■映画「天才ピアニストの愛と孤独」PR
http://www.youtube.com/watch?v=7Sexg1lpt_w

Recording:1981年April22-25 May15,19

これは「ゴルトベルク変奏曲」のCDに付されたレコーディングの日付。
彼は1982年10月4日に、50歳で急死している。

この人物がどういう人であったのかは、ここに要領よくまとめられている。
■「グレン・グールド賛歌」
http://kajipon.sakura.ne.jp/kt/gould.html

なぜこんな日記を書いているのかというと、いろいろとググって調べたり、YouTubeを閲覧したりしているうち「食わず嫌い」を返上してみようという気になったからである。
グールドに関する情報は、ネット上に、非常にたくさん存在している。おそらく、その情報量の多さでは、ずばぬけた一位・・・は、グールドということになるだろう。ピアニストの中では。

http://www.youtube.com/watch?v=jVfvDoDfziw

ここで、動物たちに向かって大まじめで歌を聴かせているグールド!
これは映画の一場面だろうか、実写だろうか?
ネットで調べれば調べるほど、「猿の惑星」の猿に似たこの特異な風貌の人物は、ほんとうは何者だったのだろうかという興味がむくむくと頭をもたげる。

「イギリス組曲」
「インヴェンションとシンフォニア」
「パルティータ」
「フランス組曲」
「平均律クラヴィーア曲集」
「ゴルトベルク変奏曲」

「レコード芸術」編の「名曲名盤300」には、バッハが19曲ノミネートされているが、そのうち、上記の6曲において、グールドの人気はぶっちぎりの第1位。
・・・そして、いま、何枚か買ってきて、耳をすましてみる気持になっている(笑)。

ピアニストは、ピアニストから指揮者へ転向して成功をおさめる人物がいるにはいるけれど、一般的には一匹狼タイプがとても多い。
しかし、こういった彼のエピソードや、人気ぶりがわかってみると、単なる“変人”というだけではすまされないものがある。

こういう人物は、過去に出会ったことがある。
結局は深い交友には発展しなかった学生時代の友人や、仕事上で出会った何人かの変人を、いま思い浮かべる。
書物の中でも出会っている。
ドストエフスキーの「死の家の記録」や、「悪霊」には、この種の人物が次からつぎと登場する。しかし、こういう人物が、天才ピアニストであった例を、わたしはほかに知らない。

いま聞こえている新盤CDからも、グールドの「歌」が響いている。
歌というより、うめきであり、うなり声である(^^;)
奇々怪々な、規格はずれの人物は、よく観察していれば、そこいらにごろごろ存在するだろう。
その人の生活スタイルは、その人のこころの闇の部分から発している。
こういった人間的な興味から彼の音楽に近づくのは邪道だろうか?

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