二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

「グーグル Google 既存のビジネスを破壊する」  佐々木俊尚(文春文庫)

2010年03月16日 | エッセイ(国内)
「なーんだ、いまごろそんな本を話題にしようとしているのか。古いね」といわれるだろうな(^^;) まあ、最新情報には弱いというのが、わたしの大きな特徴で、「よくそれでビジネスの世界に生きていられるね」と友人をあきれさせたことがある。
mixiには775件、アマゾンには76件のカスタマーレビューがある。いまリサーチしたばかりだけれど、本書は、この手の本としては、梅田望夫さんの「ウェブ進化論」と双璧をなす売れ行きをしめしたらしい。

情報ビジネスの世界に、巨大なニューウェーブが押し寄せていることは、ニュースや新聞を通じて、ぼんやりと理解はしていた。
本書はそれが、既存のビジネスにどういった変革をもたらしかを解説している。
新書という性格上、ビギナー向けに書かれていて、たいへんわかりやすい。聞きかじった情報というのは、ピースのたりないジグゾーパズルに似ている。
たとえば、1万ピースのうち、500たりないのか、1500たりないのか、・・・それによって、解き明かされる世界への理解の度合いは、幾何級数的に変化するだろう。

ネット社会の進展と、成熟。
そこにかくされた新たな危機。
既存ビジネスは、グーグルが提供するIT革命のなかで、存亡のときをむかえている。 グーグルはたんなる検索エンジンではない、・・・そのことがじつによくわかる。
筆者はそれを、「破壊」と「創造」の観点から、わかりやすく読み解いていく。
サーチエコノミー、ロングテール、インターネット大陸、アテンションといったインターネット上のキーワードは、いま現に進行中の変革がどういうものかを教えてくれる。 ポータルサイトの凋落。マイクロソフトが独占的優位をしめてきた囲い込み商法も、通用しにくくなってきたのだ。

そして、恐るべき「無料化」の大波。
グーグルのこういった情報革命は、国家という管理システムともぶつかる。

本書の刊行は、2006(平成18)年。もっとはやくに読んでおくべきだった。
なぜなら、この世界は、変化や進展が非常にはやいので、4年まえの「情報」であることを踏まえておく必要があるからだ。
この4年のあいだにおこったこと。
情報最前線では、当然「新しいもの」が最優先され、価値が高い、・・・ということになる。

私生活では、動植物的な実感に根をすえたスローライフの世界を理想とし、アナログ感覚を愛するわたしのような世代の人間には、「新しいもの」に対する信仰が絶対的に優位にたつこのデジタル思考は、はっきりいえば、けっして「居心地」のいいものではない。しかし、ビジネスマンの端くれとしては、当然ながら「無視し得ない時代のうねり」がある。それにいつまでも抵抗していると、ビジネス的には、スポイルされてしまうのだ。グローバル化というこの大きな時代のうねりの外へ出たいものだと願いながら、その瀬戸際で、もがいている。
そして、戦略思考的にふるまおう・・・と、意識をふるいたたせる。

――その意味で、本書はたいへんおもしろかった、といっておこう。


評価:★★★★☆(4.5)

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 下流志向  内田 樹(講談社) | トップ | ウェブ進化論  梅田望夫(... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

エッセイ(国内)」カテゴリの最新記事