二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

愛の終わりに(ポエムNO.51)

2011年09月05日 | 俳句・短歌・詩集


紙ヒコーキがどこからか飛んできて
ぼくのおでこにぶつかり 地面に落下する。
それはたぶん 十年も昔にぼく自身が飛ばしたヒコーキなんだ。
たぶん・・・いや 話しても仕方ないから話題をかえよう。

ぼくは突然欲望を覚えてテレビをみていたきみを強引にひき寄せた。
トレーナーをまくりあげてブラをむしり取り
甘い糖蜜にかぶりつこうとした瞬間
それはどうやら腐りやすい果物で
もう とっくに賞味期限が切れていた。

もし可能なら 上州の片田舎のある駅までひき返そう。
夏雲はとっくの昔に消えて
今日はいやにクッキリ 秋の鱗雲。
ぼくがやたら飛ばしたウソの紙ヒコーキが目白押ししながら
空をトンボのようにすいすい泳いでいたよ。

「さあ ぼくにかぶりついてごらん。
そうすればぼくも賞味期限切れだとわかるだろう」
田舎道はそこからもだらだらと折れ曲がりながら
片品の奥へとつづいていてね。
話は終わりそうで おわりはしないのさ。

それからぼくは眼をさます。
どこからころがり落ちたのか体中擦り傷だらけでヒリヒリと痛い。
ブラームスのピアノ・コンチェルトなんか聴いている場合じゃないだろう。
きみは「坊ちゃん」が生きていたころの明治の東京にもどって
清(きよ)の墓参りでもしてるんだろうか?
そんならそれでいいけれど。
ぼくはすべり落ちた昏い坂を匍匐(ほふく)しながら
きみといたベッドまでたどり着こうとしている。
まだいい香りがしていてね。

そのあたりから紙ヒコーキがやたらと飛んでくる。
ぼくのおでこにコツンとぶつかる。
せつないねえ せつない。
だからといって 明日やるべきことは
もう決まっているのだけれど。

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