二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

詩を書く人(ポエムNO.50)

2011年09月04日 | 俳句・短歌・詩集


夕焼けだけでできている思い出をたぐり寄せようとしてみた。
そんなものなんの役に立つかって?
役には立たないさ 決まってる。
この世は役に立つものより 立たないもののほうがはるかに多い。
涙が ほらお金に換算できるのかね。
だとしたら きみの涙はずいぶん安いのだね。

今日はまだ だれともしゃべっていない。
電話はかかってきたけれど 無言電話だったのでね。
そんな日があるってことも折り込み済みで 
時間は何事もなく流れていく。
世間から完全にドロップアウトしちまったような一日
・・・のはずれに浮かびあがる なんてことない夕焼け。

だれにも読んでもらえない詩を書いている人が
今日もどこかにいるだろう。
ぼくに似た人が。
だからって いまさら東電の社員にはなれやしない。
――ミッキーマウスの友達にだって。
なりたくなんかないけどね むろん。

ぼくの後頭部には疑問符の海が拡がっている。
タツノオトシゴみたいなね。
無邪気そうにふるまってるが 邪悪なやつらさ。
そいつがいろいろささやいてぼくを惑わせる。
さあ 金をかせぐんだ。生活は金 金でできている。
台風が去っても青空はもどってこないぞ。

いくら支払ったらあの青空が買えるんだろう?
いくら支払ったらぼくは蕪村の隣に立てるんだね
天明期はお金で買えるほど近くない。
あの日の夕焼けも 空をうめつくすほど群れ飛んでいた赤トンボもね。
だから・・・だれにも読んでもらえない詩を書いている人が
今日もどこかにいるだろう。

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