二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ゆれてゆれて(ポエムNO.3-27)

2020年02月13日 | 俳句・短歌・詩集
風にさわさわゆれる木が
きみに大事なことをささやいている。
ほら
いたずらっぽいアヒルやいつも疲弊しているようなカワヤナギ。

それとやたら臆病でビクついているマスク星人や
五線紙からおっこちてきて大あわてしている音符。
そのかたわらでぼくはきみと出会った。
きみはゆれる木のほうを向き

ぼくという無口な存在感の薄い男にも
大きな●みたいなピリオドにも
うじゃうじゃと出現してきた新人類にも
唇の端にこびりついたご飯粒のような思想のたぐいには

てんで関心なんかなかった。
空は晴れていた。
雲ひとつなかった 見渡すかぎり。
その日きみに向けてぼくは

たしか50カットほどシャッターを押した
1980年代の古めかしいフィルムカメラで。
「しそう」って何?
「黄ばんだ下着のことかしら」

まあそれに近い何かではある。
一本の木が風にさわさわゆれている。
きみが そしてぼくが
その隣でゆれる。

生きていればそうしてゆれ
風が吹くままに ゆれて
ゆれて
生きていくほか手だてはないのだ。

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