二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

音楽のGift(ポエムNO.3-83)

2020年06月27日 | 俳句・短歌・詩集
   (ブラームスの評伝とオリンパスOM-2N 2020年4月)



老年というものは こんなにもすみやかにやってくるのだ。
うとうと昼寝をして目を覚すまで ほんのわずかなあいだ。
さっきアゲハチョウがある花から つぎの花へ飛び移ったぞ。
つまずきそうになって足許をふっと見やる。

ああ 向こうで 洟たれ小僧がたわむれにひっかいたような数本のケヤキが
六月の空の下でにじんでいる。
あんなにも苦しかった経験や
薫風の中のきみの記憶すら にじんで。

生と死をへだてるボーダーラインがしだいに覚束なくなってきた。
ラインをひいた神様って どこにいるんだろう。
ダークスーツのポケットから顔を出している 
いくらか汚れたハンカチがそうかしら?

ブラームスのホ短調のSinfonieを聴いていたら
不意に涙があふれて止まらなくなった。
泣いているわけじゃないのに。
悲しみとはこういうものだ。

ブラームスのあの気むずかしそうな表情の裏に
こんなデリカシーがあったことはとっくに気がついていた
描きおえたばかりの水彩画みたいな音符が
この世に六十数年生きた彼のあかし。

ぼくもおいしくいただこう この素晴らしい音楽のGiftを♪



※ ブラームスのSinfonie(ドイツ語)とは交響曲第4番ホ短調作品98を指しています。

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