(ブラームスの評伝とオリンパスOM-2N 2020年4月)
老年というものは こんなにもすみやかにやってくるのだ。
うとうと昼寝をして目を覚すまで ほんのわずかなあいだ。
さっきアゲハチョウがある花から つぎの花へ飛び移ったぞ。
つまずきそうになって足許をふっと見やる。
ああ 向こうで 洟たれ小僧がたわむれにひっかいたような数本のケヤキが
六月の空の下でにじんでいる。
あんなにも苦しかった経験や
薫風の中のきみの記憶すら にじんで。
生と死をへだてるボーダーラインがしだいに覚束なくなってきた。
ラインをひいた神様って どこにいるんだろう。
ダークスーツのポケットから顔を出している
いくらか汚れたハンカチがそうかしら?
ブラームスのホ短調のSinfonieを聴いていたら
不意に涙があふれて止まらなくなった。
泣いているわけじゃないのに。
悲しみとはこういうものだ。
ブラームスのあの気むずかしそうな表情の裏に
こんなデリカシーがあったことはとっくに気がついていた
描きおえたばかりの水彩画みたいな音符が
この世に六十数年生きた彼のあかし。
ぼくもおいしくいただこう この素晴らしい音楽のGiftを♪
※ ブラームスのSinfonie(ドイツ語)とは交響曲第4番ホ短調作品98を指しています。
老年というものは こんなにもすみやかにやってくるのだ。
うとうと昼寝をして目を覚すまで ほんのわずかなあいだ。
さっきアゲハチョウがある花から つぎの花へ飛び移ったぞ。
つまずきそうになって足許をふっと見やる。
ああ 向こうで 洟たれ小僧がたわむれにひっかいたような数本のケヤキが
六月の空の下でにじんでいる。
あんなにも苦しかった経験や
薫風の中のきみの記憶すら にじんで。
生と死をへだてるボーダーラインがしだいに覚束なくなってきた。
ラインをひいた神様って どこにいるんだろう。
ダークスーツのポケットから顔を出している
いくらか汚れたハンカチがそうかしら?
ブラームスのホ短調のSinfonieを聴いていたら
不意に涙があふれて止まらなくなった。
泣いているわけじゃないのに。
悲しみとはこういうものだ。
ブラームスのあの気むずかしそうな表情の裏に
こんなデリカシーがあったことはとっくに気がついていた
描きおえたばかりの水彩画みたいな音符が
この世に六十数年生きた彼のあかし。
ぼくもおいしくいただこう この素晴らしい音楽のGiftを♪
※ ブラームスのSinfonie(ドイツ語)とは交響曲第4番ホ短調作品98を指しています。