
木や草がごう ごう音を立てて虚空でうなり
黄色いハイヒールをはいた二羽のセグロカモメや
むやみに太った片耳のない白黒猫が休止符のようにうずくまる。
田螺の奥にはぴかぴかと豪奢な応接室があって。
きみが昨日まで住んでいたのは
絵画のなかの世界 かなりシュールな。
このあたりには80年ばかり前まであの朔太郎さえ暮らしていたんだぜ
あのとてつもない変人のさ。
風が吹き 木や草が
ごう ごう音をたてて虚空でうなり
見えない虎ロープをこえ
制止を振り切ってこちらの胸へとなだれ込んでくる。
これこそ朔太郎がいたころの上州の風土そのもの。
目をあけていられないような砂塵と
とんがり帽子のこびとたちが舞う。
・・・空高く舞う。
そこに混じってきみもぼくも舞っている。
マーラーの交響曲のはずれの方にある目立たない八分音符のように。
ごう ごうぼくたちの胸を行き来し 舞いあがる
とんがり帽子のこびとたちと
七色の夢のかけらよ!