二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

ヘルベルト・フォン・カラヤン ~その評価をめぐって

2010年09月26日 | 音楽(クラシック関連)
このあいだから、カラヤンが気になってきた。
きっかけは、カラヤン最晩年の「ブルックナー第8番ハ短調」のCDを手に入れたこと。
1988年11月に、ウィーン・フィルとやった演奏である。
しばらく前に、同じVPOとやったブル7も手に入れ、聴いてみた。
ところが、こっちは期待ほどではなかった。
マタチッチの2枚のCDの印象が強烈すぎて、物足りなかったのだ。

ところが、こっちのブル8はすごかった。
ハース版をもとに、80分以上かけて、じつにゆったり、スケール感の大きな演奏をしている。



カラヤンがうまいのは、だれでも知っている。
カラヤン&BPOの存在がなければ、若いころ、クラシック音楽にのめりこむことはなかったろうと、わたしは考えている。LP時代に集めた名盤は、3分の2がカラヤンだった。
ところが、彼は権力者になりたがった男。金儲けにも、抜け目がなかった・・・というようなことを知るようになって、徐々にいやけがさし、遠ざかってしまった。
とはいえ、20枚前後は、彼のCDをもっている。ベートーヴェンの交響曲全集(60年代のレコーディング)まである(/_;)

カラヤンほど、レコーディングに熱意をそそいだ指揮者はいないから、
BOOK OFFだの、ワンダーGOOだのの棚には、大量に在庫があり、お値段もリーズナブルなものが多い。

たまに読む宇野功芳さんや吉井亜彦さんなどはカラヤン嫌い。
カラヤンの演奏をことごとく貶しているので、そんなものかと思って、
ことしもあまり関心をもたないままやってきた。ある知り合いにも、
カラヤンより、バーンスタインを中心にCDをそろえたらいい、とアドバイスをうけていた。
バーンスタインもよく売れたとみえて、中古CDコーナーには、たくさん在庫がある。
どっちも、俗にいう「素人うけ」する指揮者。

そういうレベルからなんとか脱出したいという、これまた極めてミーハー的な願望がうずいている(~o~)デハ、ハ

だけど、このブル8は、なかなかのもんだ・・・と素直に思えたのである。
9月になって聴いたシベリウスにも、いささか心を動かされた。
巨匠がいない時代といわれるようになって久しい。
文学の場合でも、絵画の場合でも、そのような傾向がはっきりあらわれている。
レパートリーがあきれるくらい広いのが、カラヤンの特長だし、
なにをやらせてもうまいのは、たぶん、ほんとうのことだろう。
最後の巨匠という形容詞も、半分は正鵠を得ている、と思う。

「近ごろの音楽は、うまいだけで感動のない音楽ばかり」
一方では、そういったシニカルな評価は可能だし、
それはそのままカラヤンの音楽にもいえることかもしれないが・・・。

「マタチッチのブル7には、彼が生きてきた人生の全重量がこめられているのではないか」
何度となく耳をすましているうち、そう思える瞬間がたびたび訪れたものだ。
カラヤンはCDを大量につくりすぎたから、かえって見えにくくなっているだけかも。
「あの曲とこの曲。やっぱりカラヤンの何年の一枚に限るよ」
そういう意味で、お安い価格でならんでいる彼のCDは、
腰の据わったファンには、宝の山にひとしいのだろう。
きっとそうに違いない。
――そんなことを考えてみた。
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