(「祈り」 前橋市龍海院門前2016年11月)
――モモコさんに
犬や猫にまじって
人びとはうしろ向きに歩いている。
毀れかけたアーケード街をぬけ
橋のそばにあっためったに警官のいない交番の横を通って。
はやく昔になればいい。
あんたにも過去といえるものがあったとは
あったとは知らなかった。
親を捨てた少年と親に捨てられた少女が
手をつないでこっちへやってくる。
はやく昔になればいい。
そういえば“あのころ”という名の小さな一杯飲み屋があって
ゴミ屑が毎日 毎日大量に引っかかって
うだうだと日ごろの愚痴や上司の悪口。
前掛け姿ママの頭に栓抜きでは抜けない王冠がキラキラ光っていたよ。
はやく昔になればいい。
ああ この数日なんて静かなんだろう。
モモコさんのこと知らない他人がぞろぞろ向こうへいってしまった。
ぞろぞろぞろぞろ
だけど 死んじまった人は年をとらないなあ。
はやく昔になればいい。
愛してるよ といいたかったんだ
百回 千回。
愛してるよ愛してるよ と。
だから
だから はやく昔になればいい。
――モモコさんに
犬や猫にまじって
人びとはうしろ向きに歩いている。
毀れかけたアーケード街をぬけ
橋のそばにあっためったに警官のいない交番の横を通って。
はやく昔になればいい。
あんたにも過去といえるものがあったとは
あったとは知らなかった。
親を捨てた少年と親に捨てられた少女が
手をつないでこっちへやってくる。
はやく昔になればいい。
そういえば“あのころ”という名の小さな一杯飲み屋があって
ゴミ屑が毎日 毎日大量に引っかかって
うだうだと日ごろの愚痴や上司の悪口。
前掛け姿ママの頭に栓抜きでは抜けない王冠がキラキラ光っていたよ。
はやく昔になればいい。
ああ この数日なんて静かなんだろう。
モモコさんのこと知らない他人がぞろぞろ向こうへいってしまった。
ぞろぞろぞろぞろ
だけど 死んじまった人は年をとらないなあ。
はやく昔になればいい。
愛してるよ といいたかったんだ
百回 千回。
愛してるよ愛してるよ と。
だから
だから はやく昔になればいい。