二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

小谷野敦「バカのための読書術」(ちくま新書 2001年刊)レビュー

2019年03月28日 | エッセイ(国内)
三つ星にとどめようかと考えていたが、評価のランクを一つ上げておこう。
読書ガイド、読書術というジャンルの本は、過去に2-3冊しか読んでいない。モームの「世界の十大小説」が愛読書なので、これまで3回か4回読んできた。。しかしこれはメインテーマは作家論、わたしの場合、読書ガイドの役割もたはしたというだけのことである。

「バカのための読書術」は個性的ではあるけど、ごくまっとうな、正面切った読書ガイド、読書術に関する本である。BOOK OFFの棚の108円のコーナーにあったので、昨日買ってきて、2時間くらいで読みおえたので、レビューを書く気になった。
前日までモームの「サミング・アップ」を読んでいたが、読みおえる前に、そこに割り込んできた。



自己中心的・偶像破壊的で、読みやすいが、しゃべりことばに近いきわめて饒舌な文体を駆使する。ツイッターがあるのでのぞいたら、匿名の人は人間扱いしないとか、自分の著書を25冊は読んでから発言しろとか、こちらでも、いいたい放題、自己中心的にふるまっておられる。

《現在、「知」は混迷状態に陥っている。インテリたちはかつてないほど熱心に西洋の新理論の輸入に血道をあげ、難解な言葉と言い回しに身をやつしている。その一方で、有名大学の学生がフランス革命の存在を知らなかったりする。では、この両極の中間に位置する人は、何をどう読めばよいのか。学校は出たけれどもっと勉強したい人、抽象的な議論がどうも苦手だという人。そういう「バカ」たちのために、本書はひたすら「事実」に就くことを指針とし、インチキ現代思想やオカルト学問、一時の流行に惑わされず、本を読み勉強するための羅針盤となるべき一冊である。本邦初「読んではいけない」リスト付き。》(amazonにあるBOOKデータベースをそのまま引用させていただいた)

刊行から18年たっていて、経年劣化がはじまっている。しかし、読みようによっては、おもしろく読める。多くの読者が認めているところだろうが、本邦初「読んではいけない」リスト付きはめずらしい。ここを拾い読みしてアハハハとつい笑ってしまって、買うはめになったようなものだ(・ω・) もっとも108円だったしね。

読んでいない人のため、目次をコピーしよう。
序 章 バカは「歴史」を学ぶべし
第一章 「難解本」とのつきあい方
第二章 私の「知的生活の方法」
第三章 入門書の探し方
第四章 書評を信用しないこと
第五章 歴史をどう学ぶか
第六章 「文学」は無理に勉強しなくていい
終 章 「意見」によって「事実」を捩じ曲げてはならない

基本的に権威だとか、ヒエラルキーを認めず、おちょくったり、小バカにしたり、論旨がいきなり飛躍したりする。TVに出てくる漫談家と比較しては気の毒だけど、その分文章の「生きががイイ」ともいえるな(笑)。
ご本人もお認めになっているように、暴言もしばしば吐く。
こういう本に対してきまじめな書評を書くにはいささか抵抗がある。本書でしばしば言及されるマンガ評論家の呉智英さんの著書は読んだことがないので、わたし的にはスルーするしかない。

ズバリいわせていただけば、B級の著者によるB級本。
ただし、B級グルメと同じく、B級ならではのおもしろさ、話題性は持っているので、わたし的に評価を一つ上げることにしたのだ。「おれはバカだけど、あんたもバカだよね」と開きなおり、読者を巻き込んでいく。そういう意味ではB級ならではの「高等戦術」といえる( ・ὢ・ )

ヘーゲルはじめ、小林秀雄、吉本隆明を批判し、ご自分に噛みくだけないものは「相手にせず」というのが小谷野さんのスタンス。むろん、フランスの現代思想には洟をひっかけている。そいう路線を好む読者がついてくるのだ。わたしは半分は賛成、半分は反対という中途半端な立ち位置にある(^^;)
Amazonにはけっこうたくさんカスタマーレビューが投稿されているから、そこそこ売れたのだろう。齋藤美奈子さんの流儀に似ているが、コンプレックスも、こういうふうに居直れば武器になる。そして、“すきまを”を見つけたらしつこく食い下がる。

ただし小谷野さん、ご自分の流儀というか、守備範囲はしっかり堅持している。このまま“因業おやじ”“頑固おやじ”に徹してくれるなら、もう少し(さらに2-3冊)おつきあいしてもいいかもしれない。

そういえば「私小説のすすめ」(平凡社新書)を以前読んだことがあったなあ。もうほとんど覚えていないけど。


評価:☆☆☆☆


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ツクシ発見(*^-^) | トップ | 玉乗りケンタ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

エッセイ(国内)」カテゴリの最新記事