二草庵摘録

本のレビューと散歩写真を中心に掲載しています。二草庵とは、わが茅屋のこと。最近は詩(ポエム)もアップしています。

panta rhei(ポエムNO.2-100)

2017年11月01日 | 俳句・短歌・詩集
  (初夏の長瀞2014年、ローライフレックス3.5F)



川岸にたたずんで向こうを見ていた男の後ろ姿が
銀色の川霧のかなたに霞み 消えていく。
コツ コツと淋しげな硬い靴音だけを残し。
またたくまに過ぎていった黄金時代の夢のかけらを
泥だらけの手で後生大事に握りしめて。

おとといとあさってのあいだに落葉が舞い落ちる。
舞い落ちている・・・が
あれはほんとうは何なのだろう?
エフェソスで生まれた厭世家がつぶやいている。
パンタ・レイ。

鎮火してまもない火事場の現実。
人のいない 空虚な木の椅子のうしろ
そそり立つ沈黙の石壁にギリシャ文字が刻まれている。
panta rhei その真偽をたしかめるためにやってくる人びとの
ためいきが満ちている遺跡。

今日もバスにゆられて観光客がやってくる。
おとといとあさってのあいだにかつて美しい春の野辺があって
おさげ髪の女の子が
たんぽぽやすみれを摘んでいた。
永遠ということばのむごたらしさ。

ぼくは老いた たぶんね。
老いるということがどういうことかわかる程度には。
記憶という名のどこにでもある草ばかり生い繁にまかせ
一歩 また一歩と石ころだらけの坂を登っていく。
おとといとあさってのあいだにある坂を。



※ panta rheiはギリシャ語で「万物は流転する」の意味です。 

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