二草庵摘録

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「銀河系惑星学の挑戦」松井孝典(NHK出版新書)レビュー

2018年12月09日 | エッセイ(国内)
  (ネットで検索し、近所の書店で購入)


「1万年目の人間圏」をさきに読みはじめたのだけれど、あとから読みはじめたこの「銀河系惑星学の挑戦」の方をまず読み終えた。
朝日カルチャースクールでの5回の講座が元になって編集された。したがって、首尾一貫した“読み物”になっている。文体はですます調で、読者に話しかけてくるような親しみがあり、たいした予備知識なしで、スラスラと読める。
かつて指摘したように、松井孝典先生は、理科系の学者・研究者なのだが、すぐれた文章家でもある。調べてみたら、わたしが知らなかっただけで、著書も非常に多く、いまならわりと容易に入手できる(*゚ー゚)v

専門は比較惑星学、アストロバイオロジー。
こう聞いてもすぐにピンとくる人は少ないだろう。NHKの「パノラマ太陽系」や「「地球大紀行」など大型番組にゲストとして登場したのを覚えている。しかし、むしろ番組の監修者だったのであろう。

銀河惑星学とは耳慣れないことばだと思ったけれど、惑星学はこれまで、事実上太陽系の学と相場が決まっていたのに、21世紀に入って、太陽系以外の銀河系で、つぎつぎ、惑星系をもつ恒星が発見され、太陽系はありふれた天体となってしまった・・・という。

ひと口で内容を紹介すると、つぎのようになる。
《1995年の系外惑星(太陽系の外の惑星)発見以降、惑星学のフィールドは太陽系から銀河系へとドラスティックに変化し続けている。太陽系と系外惑星の異なる点や、惑星や惑星系の生まれ方といった基本的知識から、系外惑星探査の最前線まで、惑星科学分野の泰斗である著者が易しく網羅的に描く、驚きと興奮に満ちた一冊。》(NHK出版新書より)

専門の学術論文ではなく、一般向けにこういう学問をおもしろく読ませるには、それなりの技術というか、センスが必要だが、松井さんは、そういう才覚にめぐまれている。
もくじを参照すると・・・

第1章  SFに追いついた天文学−−−−惑星探査の現状
第2章  人と惑星−−−−コペルニクス的転換が起こるまで
第3章  太陽系の誕生
第4章  惑星系はこうして生まれる
第5章  惑星の新しい定義とは
第6章  銀河系惑星学を拓いた二大発見
第7章  生命を宿す星はあるのか

刊行は2015年なので、最新の情報がふんだんに盛り込まれている。
そして、あらゆる命題は「生命を宿す星はあるのか」に集約される。コペルニクス、ガリレオなど歴史上の発見にも配慮しつつ、惑星科学の最新情報へとステップアップさせていく、その方法がじつに巧みなので、少しでも関心がある方なら、読みだしたらノンストップとなること請け合い(^^♪

「1万年目の人間圏」は雑誌連載だった。しかし、こちらは書下ろしというか、語り下ろし。編集過程で挿入されたと推測される図版が豊富で、読者の理解を助けてくれる。
冥王星が惑星から格下げされ、準惑星となったというニュースとか、水星より大きな太陽系惑星が発見されたとか、そういった知識は断片的に仕入れてあるが、本書を読むことで、それら断片が、一本のラインでつながった。

わたしにとっては、「読みたかった、こういう本を読みたかったんだよね!」
とばかり、よい意味で知的興奮の連続であった(*゚。゚)
これ以上内容に分け入るのはやめておこう。ミステリの種明かしと同じになってしまいそうだから。

この地球以外に、 生命を宿す星はあるのか!?
これはほとんど“究極の問い”といっていいだろう。
松井先生が、それに対し、どういった答えを用意してカルチャースクールの講座に臨んだのか。
いくらか辛抱してそこまで読んでいった読者に明かされる“驚愕の事実”とは・・・なんちゃって(笑)。
いや~、堪能堪能。
このうち何章かは、あとでもう一度読み返し、頭に叩き込んでおこうっと´0`*)



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