「エコテロリズム」と「反資本主義」 共産主義者と密接な関係か 左派が価値観を押し付けても多くの人の賛同は得られない
早朝から漁船の前でドクロマークの入った旗を振るシー・シェパードのメンバー
【日本の解き方】 反捕鯨団体「シー・シェパード」創設者が拘束され、日本への引き渡しも焦点になっている。海外では美術館の作品にペンキをかけたり、国内では神宮外苑開発反対の落書きをしたりするなど「エコテロリズム」と呼ばれる行為も起きている。 【写真】ゴッホの絵画「ひまわり」にトマトスープをかけたアンナ・ホランド氏ら
エコテロリストは、悪意を持って環境破壊を行う人、または環境保護を理由に破壊活動やテロ活動を行う集団や人物だ。エコテロリズムは欧米の先進国で実施されることが多い。 シー・シェパードは1977年に設立され、アイスランドやノルウェーの捕鯨船に体当たりするなどして何隻も沈没させた。日本の調査捕鯨船にも体当たりをしたり、ワイヤを流してスクリューに巻き付かせたり、信号弾を投げ込んだりした。 別のグループによるエコテロリズムでは、ロンドンの英国立美術館でゴッホの「ひまわり」にトマトスープがぶちまけられたり、ポツダムの美術館でクロード・モネの「積みわら」にマッシュポテトが、パリのルーブル美術館でレオナルド・ダビンチの「モナリザ」にケーキが投げつけられたりもした。 そうした過激な映像が公開されると、多額の寄付が集まるというのはまったく不可解で、筆者にはそのような人たちの感情をなかなか理解できない。
普通に考えると、過激行為は単に非合法・違法行為である。しかし、エコテロリスト側は、「環境問題が切羽詰まっており、世界は環境問題によっていずれ破滅せざるを得ないので、今の法秩序なんて従う必要がない」とでも考えているとしか、筆者には思えない。 筆者の邪推かもしれないが、ソ連崩壊後、行き場を失った多くの共産主義者が環境問題に参入したのではないか。なので、環境運動家は「反資本主義」といったルーツがあり、共産主義者と密接な関係にあったのかもしれない。反資本主義の中で反核、反原発、反公害と親和性があったのだと筆者は考える。 共産主義者は、しばしば「革命無罪、造反有理」と言って自分たちの行動を正当化するので、今の体制の法秩序を無視してもいいと思いがちになる。その上、環境問題で世界が破滅するとなると、自己の過激な行動もさらにエスカレートして、正当化も激しくなりがちだ。 こうした〝左〟の急進的な考え方を理解できない人からすると、環境破壊によって世界が破滅しないようにするには、エコテロリズム以外の方法もあると考える。何より、今の社会を前提としてルールに基づいて行動すべきだ。もしルールが不都合ならば、面倒かもしれないが民主主義的手続きの中で行うべきで、自分だけの「正義」を他人に押し売りするのはよくない。そうした独りよがりの行動では、多くの人の賛同を得ることはできない。
パリ五輪開会式では「最後の晩餐(ばんさん)」のような場面をLGBT風にアレンジした演出があった。エコテロリズムの範疇(はんちゅう)ではないが、左派による主義主張の押しつけという点では共通しており、決して多くの人の賛同を受けられないだろう。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)