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「宮崎正弘の国際情勢解題」
令和三年(2021)12月25日(土曜日)弐
通巻7170号
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「黄金の日々」は終わった。中国ハイテク企業を襲う無力感
快適な自動車のドライブは明日から突然、自転車走行に減速
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アリババの株価は半分以下に凹んだ。その煽りを食らって、日本のソフトバンクGの株価も、この一年で半値に暴落した。アリババと深い連携がリスクと投資家が捉えたからだ。
アリババ傘下の金融子会社アントは上場延期(事実上の廃止)、テンセント、ハイセンス、etc。。。。
ウォール街から蹴飛ばされた中国のSNS関連企業は、ならば香港でIPO(新規株式公開)に持ち込もうとしたら、これも当局から待ったがかかった。
資金調達が円滑に出来なくなると、次の設備投資は難しくなる。
そして中国のIT、ビッグテック(BIGTECH)企業はハタと気がついたのだ。
「中国共産党はわれわれを敵視している」と。
データの独占を図り、仮想通貨も許さず、デジタル人民元で国民すべてのデータを管理する。そのためにはIT産業を強く規制し、罰金を課し、ゲームを制限し、党にまつろわぬ民間企業の、これ以上の膨脹、成長にストップをかける。
だからアリババのCEOだった馬雲を生け贄として、つぎにデータ提出に応じない中国のハイテク企業を徹底的に痛めつけるのが習近平政権の手法となる。
先が見えた。中国ハイテク企業を襲う無力感は現在、大量のレイオフを産み、確実に「黄金に日々」が終わりを告げたと認識するにいたった。百度関連企業では30%の大量レイオフの噂、業界では「35歳以上は首切り」という情報が飛び交った。
すでに家庭教師、予備校の講師ら300万人が失業している。つぎにゲームが規制を受けたため、ゲームソフト会社が悲鳴を挙げ、この余波は確実に日本のソフト産業にも及ぶ。
ハイテクのメッカ、深せん特別市が繁栄から失業者の町に代わろうとしている。
これまでの好調、ハイペースの成長も望めず、快適だった自動車の高速ドライブは、明日から突然、自転車走行に減速させられる。
ソフト開発の競合、インドにとっては、素晴らしい「クリスマス・プレゼント」?
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人種差別の根源はアメリカの社会構造に起因するとする「批判的人種理論」(Critical Race Theory)が全米で波紋を呼んでいる。白人は生まれた時から抑圧者であり、黒人は被害者であるという考えが広がり、ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動に拍車をかけた。中国の文化大革命を経験し、26歳で渡米したシー・バン・フリートさんは、過激化するBLM活動家やアンティファを「まるで紅衛兵だ」と表現する。人種問題を巡り、ますます分断が進むアメリカに対して、フリートさんは「中国と同じ方向へ向かっている」と警鐘を鳴らす。
全米の学校で教えられる「批判的人種理論」
今年6月、フリートさんは米バージニア州ラウドン郡教育委員会の会合で発言し、注目を浴びた。
「学校は子供たちに社会正義の戦士となり、国の歴史を憎悪するよう教育している」「中国共産党も同じ批判的人種理論を利用して国民を分断した…批判的人種理論のルーツは文化的マルクス主義だ。そんなものを学校で教えるべきではない」
会場の保護者たちから拍手が沸き起こった。
フリートさんは10年前くらいから、左傾化するアメリカを憂慮してきた。特に、数年前から始まった「キャンセル・カルチャー」や、教育現場で導入されている「批判的人種理論」に対しては、強い懸念を抱いている。毛沢東がこれらを積極的に利用して、文化大革命を発動したからだ。
「(どちらも)生まれた時点で罪を犯しているという考えだ。生まれながら白人は抑圧者であり、黒人は被抑圧者という理論だ…基本的に皆の運命は決まっていて、抑圧されている人は、常に被害者で有り続ける。これは文化大革命と全く同じ考えだ」
階級闘争は貧しい時代の中国とロシアで広がった。左派が富豪や地主らを糾弾し、革命運動を推進した。一方、「批判的人種理論」は、アメリカ仕様だとフリートさんは言う。先進国のアメリカで、階級闘争は適用できないからだ。
中国で起きた「階級闘争」と、アメリカの「人種問題」はどう似ているのか。
「どちらも、最も効果的に人を分断できる。これはマルクス主義の教科書に載っている分断の方法だ」
「(左派は)人々を分断するために、人種だけでなく、もっと多くの階級が必要だと思っている。今ではジェンダー、セクシュアリティ、インターセクショナリティーなどもある。これらは全て文化的マルクス主義に根差した、人々を分断するためのツールだ。毛沢東がこれを利用していたが、今は左派が利用している」
紅衛兵を彷彿とさせるアンティファとBLM
各地で暴動を繰り広げた紅衛兵は、主に若い学生たちだった。彼らは毛沢東のスローガン「造反に理あり」(造反有理)を唱え、伝統的な文化物や歴史的遺物を破壊し、大勢の知識人を吊し上げた。
「通り全体が破壊されたもので溢れ、家主が泣いているのを見た…また特定の髪形やファッションが批判の対象となり、紅衛兵が若い女の子の髪を切っていた。今でいうキャンセルカルチャーだ。完全に狂っていた」
なぜ、学生たちはそこまで暴力的になってしまったのか。彼らは責任を問われない事を知っているからこそ、何でもやってしまうとフリートさんは言う。
「彼らはどんな結果にも責任を負わない…アンティファやBLMを見ると、紅衛兵を思い出す。彼らも、自分たちは何をやってもいいと思っているからだ」
毛沢東は、「革命は人々を晩餐に招くことではない」「暴力だ」と言った。毛沢東のお墨付きがあるため、誰も紅衛兵を止めることはできなかった。彼らは法執行機関と裁判制度を解体し、自分たちでルールを作った。多くの教師や知識人が闘争集会に引きずり出され、糾弾された。
「殴り殺された人もいた…でも、紅衛兵たちは今日まで、何の責任にも問われていない。彼らの犯罪は起訴されていない。亡くなった人たちは、家族以外には忘れ去られ、無駄死にしたのだ」
(つづく)