★ http://www.mag2.com/p/news/7914 から転載
モスクワ発】苦境のロシア・・・なぜ国民はプーチン支持をやめないのか?
『ロシア政治経済ジャーナル』No.1162(2015.02.25号)より
「イスラム国問題」ですっかり忘れられていたウクライナ。そして、「クリミア併合」とウクライナ東部「親ロシア派支持」で欧米プラス日本から制裁されているロシア。世界中の読者さんから、「ロシアの生活はどうなっていますか?」と質問されます。
残念ながら、「ロシア全土」のことはわかりません。しかし、私はモスクワ在住なので、モスクワ市民の生活についてなら、「実感圏」でわかります。
最大の不満は「インフレ」 ロシア危機の要因は、大きく三つあります。
1、欧米プラス日本による経済制裁
2、
原油価格の暴落
たとえば北海ブレントの価格は、去年6月時点で、バレル115ドルでした。それが、年末年始には50ドルを割り込んでいます。つまり半分 以下になった。この原稿を書いている時点で60ドルほどですが、ロシアにとって苦しいレベルにあることはかわりません。
3、
ルーブルの暴落
ロシアの通貨ルーブルは、2014年初時点で、1ドル33ルーブルでした。それが、今年初には、1ドル70ルーブルまで大暴落。つまり、一年 で半分以下になった。この原稿を書いている時点で1ドル61ルーブルまで上がっていますが。
以上挙げた、3つの大きな要因。庶民にもっとも大きな影響を与えているのは、「ルーブル暴落」です。
ルーブルがだいたい半分のレベルになったため、輸入品の値段が高騰した。それで、インフレがもっとも深刻な問題になっています。
ロシア政府は、「2014年のインフレは11.4%だった」と発表しましたが、誰も信じる人はいません。少なくとも「実感」では、「11%どころじゃないよね」とみないっています。
食品価格のインフレが一番ひどく、70%ぐらい上がった感じです。たとえば、1回スーパーにいって払う金額が、いままで1000ルーブルだった奥さん。今は、インフレで1700ルーブル払う。これは、不満ですね。インフレでも、物の値段と一緒に給料もあがれば問題ないですが。
しかし、現在のロシアでは、物の値段は上がっても、給料はあがらない。つまり、庶民の生活は、相当苦しくなっているのです。
その他、いろいろな人から聞く問題。
●リストラされた
●新しい職が見つからない
●会社でリストラを検討しはじめた
●家のローンが払えない
●外貨建てローンの返済額が、ルーブル暴落で実質倍になった
などなど、あちこちから不満が聞こえてきます。
先に挙げた3つの要因は、ロシア国民の生活をじわりじわりと苦しいものにしているのです。
聞かれないプーチン批判
それでも、驚くことに、「プーチン批判」はあまり聞かれません。いえ、正確にいうと、批判を聞くことはあるのですが、「怨嗟の声が国に満ち満ちている」という感じではない。
正しい表現をすれば、「プーチン批判を聞くことは、稀だ」となるでしょう。(もちろん、「反プーチン派」の集まりにいけば、たくさんきけるでしょうが。)
世論調査によると、プーチンの支持率は80%だそうです。そして、私の知人、友人に聞いてみても、「だいたいそんな感じだろう」と思います。
なぜ生活が苦しくなっているのに、国民は「プーチンを批判しない」のでしょうか? 私がモスクワに住んで思うことは、以下の三つです。
1、「クリミア併合=正しいこと」と、信じられている
今回のロシアの苦境。発端は、「クリミア併合」でした。
これは、ウクライナや、日本、欧米では、「絶対悪」とされています。ところが、ロシアでは、真逆で「絶対善」とされています。なぜ?
クリミア半島は、エカテリーナ2世時代の1783年から1954年までロシアのものだった。1954年、ロシアからウクライナに管轄が移っています。理由は、ソ連のフルシチョフ書記長が、クリミアをウクライナに「プレゼントした」から。
当時はロシアもウクライナも、同じソ連の一部。「東京の土地の一部を、埼玉の管轄にした」ぐらいで、大きな問題にならなかった。
しかし、ソ連崩壊後、クリミアは、ロシア領ではなくウクライナ領になった。この時、ロシア国民は、「おいおいクリミアは、ロシアの領土だろ!」と憤った。
プーチンは、その「歴史的不正」を「正した」。・・・とまあ、こんな論理なわけです。
皆さん、日本の総理大臣が、北方領土や竹島を、「サクッと」「無血」で取り戻したら、「英雄」になるでしょう? 今のプーチンも、そんな感じで、「歴史的偉業を成し遂げた英雄」という感じなのです。
「プーチンは正しいことをしたのだから、多少生活が苦しくても我慢しましょう」・・・そんな感じ。
2、ロシア国民の怒りは、プーチンではなく、○○○○にむかう
日本や欧米から見ると、今回の問題は、「クリミア併合」から起こっています。しかしロシアでは、「危機の起点」が違うのです。
ロシアでは、「今回の危機のきっかけは、アメリカがウクライナでクーデターを起こし、民主的に選ばれた親ロシアのヤヌコビッチ政権を打倒したことだ」と認識されている。
クリミア併合は、2014年3月。ヤヌコビッチ政権崩壊は、2014年2月。つまり、ロシア国民は、「先に手を出したのは、アメリカだ!」と信じている。
「ウクライナのクーデターは、アメリカの仕業」・・・このこと、プーチンは、クリミアを併合した2014年3月から、くりかえし、くりかえし発言しています。
日本人からしたら、「陰謀論」でしょう。しかし、最近「オバマ自身も、ウクライナ革命はアメリカがやったこと」を認めたそうです。
昨年2月ウクライナの首都キエフで起きたクーデターの内幕について、オバマ大統領がついに真実を口にした。
恐らく、もう恥じる事は何もないと考える時期が来たのだろう。
CNNのインタビューの中で、オバマ大統領は「米国は、ウクライナにおける権力の移行をやり遂げた」と認めた。
別の言い方をすれば、彼は、ウクライナを極めて困難な状況に導き、多くの犠牲者を生んだ昨年2月の国家クーデターが、米国が直接、組織的技術的に関与した中で実行された事を確認したわけである。
これによりオバマ大統領は、今までなされた米国の政治家や外交官の全ての発言、声明を否定した形になった。
これまで所謂「ユーロマイダン」は、汚職に満ちたヤヌコヴィチ体制に反対する幅広い一般大衆の抗議行動を基盤とした、ウクライナ内部から生まれたものだと美しく説明されてきたからだ。
米国務省のヌーランド報道官は、すでに1年前「米国は、ウクライナにおける民主主義発展のため50億ドル出した」と述べている。
(「ロシアの声」2015年2月3日より)
まあ、それはともかく、ロシアでは、「私たちが苦しいのは、プーチンのせいではない。わるいのは全部アメリカだ!」というプロパガンダが、完全に浸透しきっている。
それで、生活が苦しくなったロシア国民の怒りは、プーチンではなくアメリカにむかうのです。
3、ウクライナ、革命後の悲惨
ロシアのテレビニュースでは、去年からいままでずっと、「これはウクライナのテレビ局?」と思えるほど、「ウクライナのニュース」が多いです。あたかも「ロシア国内には何もニュースがない」がごとし。
で、ウクライナ関連のニュースの内容は?
●ウクライナ東部で、民間人を大虐殺するウクライナ軍
●ウクライナ軍に攻撃され、苦しむドネツク、ルガンスクの善良な人々
●ウクライナ軍に子供を殺され、嘆く母親たち
●馬鹿なポロシェンコ大統領と、その側近たち
●デフォルトに陥りそうで悲惨なウクライナ経済
などなど、とにかく「ウクライナ=悲惨」という印象を与える放送が多い。
そして
、「アメリカに革命を起こされた国の悲惨さはどうですか?ロシアでも、アメリカの革命を許せば、内戦になりますよ。だから、私たちはプーチンを支えていくしかないのです」 ・・・とまあ、こういう結論。
ロシアは、世界における情報戦でかなり劣勢ですが、国内の情報戦においては、がっしり固めているようです。
4つの自立で、ロシアはふんばれる
「制裁」「原油安」「ルーブル暴落」・・・トリプルパンチで、苦境にあるロシア。しかし、なんやかんやと持ちこたえています。
その理由は、私のいうところの「自立国家5条件」のうち、ロシアは4つをそろえているからです。
「自立国家5条件」とは、以下の5つのこと。
1、精神の自立
2、経済の自立
3、食糧の自立
4、エネルギーの自立
5、軍事の自立
このうち、ロシアは、「経済の自立」以外は全部そろっています。
1、精神の自立
ロシアは、日本と違い、米英情報ピラミッドに洗脳されていません。逆に、クレムリンピラミッドが国民を洗脳している。(これで、「精神の自立」といえるのか?疑問ではありますが。しかし、少なくとも米英に国民が洗脳されていないことは確かです。)
3、食糧の自立
日本と違い、ロシアは、自国民を食べさせていくことができます。報復制裁として、欧州からの食品輸入を制限するくらいですから。(それがインフレの一因にもなっているが。)
4、エネルギーの自立
ロシアは、いわずとしれた、世界的資源超大国。自給率がたった4%の日本とは違います。
5、軍事の自立
ロシアは、アメリカを上回る、世界一の核兵器大国です。
・・・というわけで、ロシアはなんやかんやと持ちこたえています。
ひるがえって日本は、ロシアと違って「自立国家の条件」が全然そろっていません。日本はまず、この「自立のための条件」を整えることが、不可欠でしょう。
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● 資本主義+民主主義なら、直ちにプーチン大統領は失脚でしょう。資本主義では
何事も富の増大とGDPが政権の評価になります。つまり富者の時代です。
● 武人時代の次は、君主主義の時代≒一部の知恵者による賢帝時代と書きました。
ソ連崩壊後のロシアなどは絶対資本主義にはならないとも書きました。
● 君主の時代とは、賢帝、聖職者、知恵者などが独裁~準独裁を行う時です。例えれば
日本の江戸時代≒徳川による君主政治などです。教会などを見れば分かるように、
上級の聖職者の言葉は絶対です。信者は子羊の様に従うのが普通です。
教会の組織は軍隊同様、階級はピラミッド型です。
● 信者は殉教も出来るし、お上の為なら腹切りもできるのです。共産主義の崩壊の時の
苦痛に比べたら今は大したことはないと言うのが、国民の信条なのでしょう。
信念を持った人は強いのです。贅沢は言わないものです。食い物と住宅と
お酒があればシベリアで幾らでも耐えられるという事でしょう。
● 江戸時代も、全ての面で自給が出来ていました。従って世界がどのように騒ごうとも、
信者は教会で瞑想にふけって、幸せな時を過ごすのです。お金ではないのです。
● 其処を理解できないとロシアとの戦いは勝てないどころか、喧嘩を吹っ掛けたのが
間違いであったと気づくでしょう。イスラムとの文明の衝突もそうです。
いくら叩いても,信念のある人の頭の中を変える事は出来ないのです。
● 全てはお金≒経済と民主主義=自由と選挙でしか見ない近代資本主義の利点は、
ここでは通用しないのです。勿論相対的なものですが、支配階級とそれを
支持する時代の申し子たちは、変わりようがないのです。
● 最近の体制変換から270年待たなくては、他国を変える事は出来ないのです。ロシアの
近代資本主義は、1990+270≒2260年から始まりますから、その時に黒船で
ロシアの閉鎖的国家をこじ開けるしかできなのです。
● しかし、あのように広大な資源のある国家が近代資本主義化すれば、今のUSAに匹敵する
超大国になると予想できます。人口もあっという間に数億にはなるでしょう。
● それまでには、日本は資源供給国としてのロシアに足場を築くのが大切でしょう。
多分第二次冷戦が終わる、2046年以降でないと、相思相愛も結ばれないのです。
つまり、英米仏+αの近代資本主義が崩壊して、国際金融機関が取り締まり
の対象となり、ドイツの左翼の傲慢さが消えたときでしょう。
● 今のドイツは、第二次大戦の反省のあまり、赤や極左等に乗っ取られている、反日
国家と思えます。ヒットラーと日本を同列に置く彼らは基本的に単なる
白人至上主義の馬鹿左翼でしかないのです。