FRB、3月利上げ示唆。
【ニューヨーク=斉藤雄太】米連邦準備理事会(FRB)は26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明文で、政策金利を「まもなく引き上げるのが適切だ」と表明した。パウエル議長は記者会見で「委員会は(次回の)3月会合で利上げに適切な条件が整うと想定している」と語った。保有資産の縮小も「利上げプロセスの開始後に取り組む」と述べ、インフレ抑制に向けて金融引き締めを進める考えを示した。
今回の会合ではゼロ金利政策の維持を決め、短期金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0~0.25%に据え置いた。
FRBは2020年3月に新型コロナウイルス対応の緊急利下げに動き、リーマン危機以来のゼロ金利政策に踏み込んだ。次回の3月半ばの会合で実際に利上げを決めれば、2年ぶりのゼロ金利解除となる。金融引き締めにあたる利上げの実施自体は18年12月以来だ。
パウエル議長は利上げを進めるペースについて「何も決まっていない」と強調した。ただリーマン危機後の15年末以降の利上げ局面に比べ、経済環境は良好で物価上昇率は大幅に高いとも指摘。「こうした違いは政策調整のペースに重要な影響を与えうる」と語り、より速く利上げを進めたいとの意向をにじませた。
国債などを大量に購入する量的緩和は、終了時期を予定通り3月上旬とした。FRBは21年11月に量的緩和の縮小(テーパリング)に着手し、同12月に資産購入の減額ペースを早めた。資産購入を終えることで、利上げを始める準備が整うことになる。
パウエル議長は利上げ後に保有資産を減らす量的引き締め(QT)にも取り組む考えを示した。コロナ危機後に2倍以上に膨らみ、約9兆ドルに達したFRBの総資産は大きくなりすぎたとの認識を示し「大幅に縮小する必要がある」と語った。前回のQTは利上げ開始から2年近くたった17年秋に始めたが「おそらくもっと早く動いてもいい」と指摘した。
資産規模は「予測可能な方法で減らしていく」とも述べ、国債などを売るのではなく再投資を徐々に減らす形で市場の混乱を招かないようにQTを進める方針を示した。
声明文では物価情勢について「コロナ禍のもたらす需給の不均衡や経済活動の再開で高インフレが続いている」と指摘し、「(目標の)2%を大幅に上回る」と警戒感を示した。米消費者物価指数(CPI)の前年同月比の上昇率は21年12月に7%と約40年ぶりの高い伸びを記録した。パウエル議長は特に供給制約の問題が「予想以上に大きく、長く続いている」と語った。「賃金も急速に上昇し、継続すればインフレ圧力になりかねない」とも指摘し、高インフレ定着への危機感を示した。
FRBがこれまで金融緩和を続ける理由としてきた雇用環境も改善している。声明文では、失業率が21年12月に3.9%まで下がるなど「顕著に低下している」と評価した。ただ昨年末以降、新型コロナの「オミクロン型」の感染者数の急増でサービス業などは再び打撃を受けており「経済見通しのリスクは残っている」とも指摘した。
26日の米市場では、一時は前日比で500ドル以上上げたダウ工業株30種平均がパウエル議長の会見中に下げに転じ、終値は129ドル安だった。急ピッチで金融引き締めが進むとの思惑が再浮上し、米長期金利の指標になる10年物国債利回りは1.7%台から1.8%台後半まで上昇(債券価格は下落)した。米株相場は乱高下が続くが、パウエル議長は「金融の安定性は全体として管理可能だ」と語った。