温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

木賊温泉共同浴場「岩風呂」で夜に入浴

2012年07月13日 | 福島県
とある日の夜、麻布十番のお店で会津出身の女性と飲んでいたときのこと、その人の口から「子供の頃に、よくお父さんに川沿いにある露天風呂へ連れて行ってもらったんだけど、何ていう名前か忘れちゃった。どこだかわかる?」と質問されました。更に詳しく聞き出してみると、曰く、車で若松市街から田島方面へ向かっていった、道路から長い階段で谷底へ下りてゆく、露天風呂の目の前には川が流れ、男女混浴、裸のまま風呂から川の水へ飛び込む人もいた、と記憶しているとのこと。温泉天国の会津には野趣あふれる露天風呂がたくさんありますが、彼女の記憶に基づいてプロファイリングすると、最も有力な候補は木賊温泉、第二候補として湯野上温泉が挙げられるので、その2つの地名を伝えてみたのですが、両方とも地名を聞いたことこそあるけど、記憶が曖昧だからどちらが正解か断言できない、寧ろそんなにこの話題に食いついてくるとは思わなかった、事細かに聞かれる様子はまるで警察の事情聴取みたい、と怪訝な顔をされてしまいました。温泉の話題になって水を得た魚のようになり、冷静さを欠いて曖昧な記憶を掘り起こそうと必死になってしまった空気の読めない私のおかげで、その場の雰囲気はすっかりぶち壊しになってしまったのですが、私の関心はもはやその女性から温泉へとシフトしてしまい、とりわけしばらく訪れていない木賊のことで頭の中が占められてしまいました。こんなことだから、いつまで経っても結婚できないままなんだよなぁ。



 
ということで、木賊の岩風呂にどうしても入りたくなって、その数日後に本当にやってきてしまいました。
木賊温泉は休日になると野趣あふれる露天風呂を求めて各地から外来客が集まってきますが、あのお風呂を独占することはできないものか、そうだ、夜に入ってみよう、と思いつき、誰もいない夜の木賊温泉露天風呂に入るべく、日没直前の時間に現地到着できるよう、途中いろいろと道草を食いながらこちらまでやってきました。ちょうど夏至が近い日だったため、夜7時になっても外は明るいままです。


 
階段を下りて川岸へ。上述の女性が子供の頃に父親と一緒に下りた階段って、おそらくここだと思うんだけどなぁ・・・。


 
ここに来るのはいつ以来だろう…。間違いなく前回訪問より7~8年は経っており、その間にこの露天風呂は豪雨に飲み込まれているはずにもかかわらず、川岸へ下りる階段から見下ろすこの光景は以前とほとんど変わっておらず、記憶のままの景色を目にして安堵しました。

料金箱に100円玉2枚を投入。こちらのお風呂は混浴ながらも、ちゃんと女性用の更衣室や湯浴み着(200円)が用意されているところは感心させられます。
誰もいない露天風呂を狙っていたのですが、ちょうど訪問時は地元の男性たちがこの日の汗を流すべく、次々にやってきていました。夕方から夜にかけて、この露天風呂は公衆浴場みたいに利用されるんですね。尤も、地元の皆さんは体を洗ってシャンプーして髭を剃り、ザブンと烏の行水を済ませて仲間たちと二言三言交わし終われば、すぐに出て行ってしまいます。その様子をぼんやりと眺めていた私を見て、常連さんの一人は「もう俺が出たら誰も来ないから、独り占めしてゆっくり入っていって」と声をかけてくださり、四方山話をしてからその方が出て行ったあとは、本当にどなたも来ることがありませんでした。



岩を穿った浴槽は二つあって、こちらは若干ぬるい(というか一般の方には丁度良い湯加減となっている)下流側の浴槽。槽内の岩肌には薄らと白い湯の華が付着。


 
一方こちらは源泉が足元の岩盤からこんこんと湧出してくる上流側浴槽。


 
奥の方に敷き詰められている石の下から、泡をプクプクと上げながらお湯が自噴しており、その湯量は非常に豊富。無色澄明、白い湯の華が少々見られますが、湧いたばかりで外気にほとんど触れていないお湯ですから、湯の華が少ないのは寧ろお湯がこの上なく新鮮である証であります。タマゴ系の香ばしい硫黄味&臭、そして焼いたような石膏の味&臭が感じられ、とっても上質なお湯です。


 
川沿いの露天風呂ですから、川が増水するたびにお風呂が濁流に飲み込まれ、ひどいときには上屋が流出してしまうわけですが、現在の上屋は再建されてまだ間もないのでしょう、ぱっと見ただけでも結構新しいことがわかりますし、ズラリと並んで提げられている寄付者の名札も、昨年か今年のものばかりです。そういえばちょうど昨年(2011年)の今頃に新潟福島県境付近を記録的豪雨が襲ったんですよね。


 
あんまり気持ち良い上、だれもいなかったので、ついつい自画撮りしちゃいました。
ふぅぅ、いい湯だなぁ…。この温泉を一人占めできるなんて、極楽ゴクラク。
まだこの日(6月上旬)は渓流沿いの露天風呂にとって大敵であるアブやブヨの類が発生していなかったので、お邪魔虫を気にせず入浴でき、より一層爽快でした。
でも周囲は真っ暗闇ですし、誰もいません。そんな状態でもし鉄砲水が襲ってきたらどうしよう、おっかない物体が流れついたらどうしよう、なんて考えるとちょっと怖くなりますし、一度少しでも恐怖感が芽生えると、頭上の梢がこすれる音や渓流のせせらぎが人の喋り声のように聞こえてしまい、その都度、何度となく辺りをキョロキョロと見回してしまいました。こんな情けない姿はあの女性には決して見せられないな。



裸のまんま河原に立って進んでいると・・・
んん!? 川の中の黒い影は魚じゃねーのか!



多少の恐怖感を覚えながらも、なんだかんだ言って、一人占めのお風呂を存分に楽しんじゃいました。
木賊温泉、また来るぜ!


福島県南会津郡南会津町宮里字湯坂

24時間入浴可能
200円
備品類なし

私の好み:★★★

コメント (7)
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