ネット上での評判が気になり、花巻市の旧石鳥谷町域にある日帰り入浴専門施設「ひまわり温泉ぎんがの湯」へ行ってきました。周囲には医療法人中庸会が運営する老人ホームや病院が建ち並んでいますが、この温泉もそれらの施設と一応別会社の形態をとりながらも同一系列に含まれており、後述する浴室内には「自然に恵まれた環境の中で『癒やす(ママ)医療』をやりたい。そのため温泉がほしい。平成6年夏、この地の西の方約1.2kmの、国有林に温泉の掘削成功す(以下省略)」と掘削の経緯が述べられたプレートが掲示されており、館主や掘削人とともに「言い出しっぺ人」というユニークな肩書で中庸会の理事長さんのお名前が記されていました。かと言って、この温泉は医療目的専門に用いられているわけではなく、花巻観光協会公式サイトでも紹介されていますし(こちらを参照)、花巻南インターの料金所を出たところにも周辺の名だたる温泉地と並んで案内看板が出ていますから(南インターではなくその隣の花巻インターの方が全然近いんですけど)、外来客の利用もウェルカムなのであります。ちょっとわかりにくい場所にあるのですが、近くまで来ると沿道には幟がたくさんはためいていたので、迷うことなく辿りつけました。
朝一番を狙って10時に伺ったのですが、既に館内には常連さんがいらっしゃるようで、下足場にはたくさんの靴が置かれていました。受付で直接料金を支払って中へと進みます。玄関ロビーでは、農産物の他、各種食品類や婆ちゃん向けの衣料品がたくさん陳列販売されていました。奥の方には軽食コーナーやお座敷の部屋があり、湯上りも館内でゆっくり過ごすことができるみたいです。
脱衣所はいかにも公衆浴場らしい実用本位の造りなのですが、お手入れがよく行き届いており、非常に綺麗で清潔です。棚の他にロッカーも完備され、洗面所には無料のドライヤーが二つもあるので、旅行者にはとても助かります。
浴室もシンプルなレイアウトで、浴槽がひとつと、洗い場があるだけですが、脱衣所同様、こちらも非常に綺麗で清潔感が漲っています。「ぎんがの湯」は平成9年に開業したそうですから今年(平成24年)で15周年を迎えるわけです。大抵このぐらいの経年ですと施設が徐々に草臥れはじめ、随所に劣化の端緒が見え始めるものですが、こちらではそのような形跡が見受けられず、とても15年も経っているとは思えない良好な状態がキープされていました。
洗い場にはシャワー付き混合水栓が5基とスパウトのみの水栓が1基設置されています。カランから出てくるお湯は真湯です。ボディーソープやシャンプーが用意されている点もうれしいですね。
私が感心したのは、施設全体の維持管理状態のみならず、常連さんのマナーの良さです。上の画像は浴室で用意されている桶と腰掛ですが、これって係員が並べたんじゃなく、常連さんが各自できちっと整頓しているんですよ。不特定多数の人が利用するお風呂では、備品類を使ったら使いっ放しの光景を良く目にしますが、こちらでは一人一人が気持ちよい浴場環境造りを心がけているんですね。施設側の姿勢とともに、利用者の意識の高さがあってこそ、施設というものは良好な状態が維持できるのだと改めて思い知らされました。
浴槽はタイル貼りで特に何ら変哲はありません。強いて言えば、底にお湯の吸引口がいくつか設けられており、温泉の循環消毒が行われているようです。尤も、お湯から漂う消毒薬臭はそれほどキツイものではありませんでしたから、薬品投入量は必要最小限に抑えられているのでしょう。医療関係の法人が関係する温浴施設で大腸菌やレジオネラ属菌の事故を起こすわけにはいきませんから、これは致し方ない措置です。従いまして、オーバーフロー量もそれほど多くなく、人が湯船に入った時に脱衣所側の浴槽縁の浅い切り欠けから溢れ出る程度です。
浴槽の隅っこに設けられているSUS製の箱を覗くと、そこには2本の湯口があり、手前の鉄管からはぬるいお湯が、奥のワインレッドの塩ビ管からは熱いお湯がそれぞれ吐出されていました。両者に温度以外のどのような違いがあるかは不明です。お湯の特徴としては、薄い黄色(やや褐色系か?)透明、ほろ苦い清涼感のある重曹味と上述した弱い消毒薬臭が感じられます。特筆すべきはその浴感でして、ヌルヌル感が非常に強く、まるでローション風呂に浸かっているみたいでした。アルカリ性に傾いたお湯で炭酸イオンがそれなりに多いので、数値的には当然なのかもしれませんが、花巻周辺のお湯は大抵があっさりしたお湯が多いので、その中でこのような特徴的な浴感を有する温泉は非常に貴重かと思います(周辺の温泉と異なり、1000mというかなり深い掘削深度からお湯を汲みあげていることがその原因かもしれませんね)。
さて、私は上述のように一番風呂を目指して10時頃に訪れたのですが、既に浴室内は多くの常連さんによって混雑していました。このお風呂は朝一番のお風呂を狙う常連さんが多いらしく、10時から30分間は入れ代わり立ち代わりでひっきりなしに入浴客がやってきて、洗い場が空くようなことはありませんでしたが、30分を過ぎると一気にその潮は引き去り、たちまち私一人が独占できる状態となって、館内はいままでの盛況が嘘であるかのような静寂に包まれました。たった数十分の違いで状況が一変するわけですから、お客さんの利用動向って面白いですね。
拙ブログは原則的に放流式(掛け流し)の湯使いを実施している施設しか取り扱っていないので、本来ですと循環メインのこの施設は対象外なのですが、基本的ながら清潔で使い勝手の良い状態が保たれている浴室、素晴らしい浴感、そして見習いたくなる常連客のマナーにすっかり感心したので、今回敢えてレポートさせていただきました。
来久保温泉1号井
アルカリ性単純温泉 46.6℃ pH9.1 190L/min(掘削・動力揚湯) 溶存物質0.7819g/kg 成分総計0.7823g/kg
Na+:217.7mg(98.44mval%),
F-:29.0mg(12.92mval%), HCO3-:335.4mg(56.41mval%), CO3--:71.4mg(24.41mval%),
H2SiO3:89.5mg, 遊離CO2:0.4mg,
気温が低い場合は加温。衛生管理のため循環ろ過装置および塩素系薬剤による消毒を実施。
岩手県花巻市石鳥谷町松林寺第3地割81-10 地図
0198-45-6789
10:00~21:00
300円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★