温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

塩原 畑下温泉 某所S (そして「塩原渓谷フリーきっぷ」)

2013年11月15日 | 栃木県
 
前々回前回に引き続き、2013年の「塩原古式湯まつり」における「温泉ふるまい」で無料開放された共同浴場を巡ってまいります。今回は前回までの古町温泉エリアを抜け、箒川に沿って若干下流側にある畑下温泉へと向かいます。古町地区や門前地区を抜けた箒川はすぐ下流で南へ大きく湾曲しますが、その川の流れと国道とによって挟まれた半島状のエリアに民家や中小規模の旅館が軒先を寄せ合っているのが畑下温泉でありまして、拙ブログでも以前に「ホテルぬりや」さんを日帰り入浴で取り上げております。国道から温泉街へと下りる道沿いに高く聳える源泉枡からは、畑下温泉の余り湯が道路へ捨てられていました。


 
畑下温泉エリアには「高砂の湯」など、地元住民専用の共同浴場がいくつかありますが、2013年の「温泉ふるまい」で一般開放されたのは、旅館が集まる一角で周囲の大きな建物の間に身を潜めるようにひっそりと佇んでいる「Sの湯」です(今回も本文中では名称を伏せますが、画像では写しておりますので、どの浴場がお知りになりたい方は画像をご参照ください)。
この小ぢんまりした湯屋の魅力に惹かれてか、この日の一般開放が開始された時間には温泉ファンが一気に押し寄せ、順番待ちするほどの混雑が発生したようですが、私が訪れた昼下がりにはそんな熱狂も一段落し、入口の扉に「温泉ふるまい」の案内が貼り出されている他は、いつもの浴場と同じような静かな空気が辺りを包んでいました。念のため、目の前にある旅館のフロントへ「前の「Sの湯」に入浴させてください」と声をかけてから、共同浴場の戸を開けます。


 
入ってすぐ左右に分かれて脱衣室がありました。特に男女の区分は明記されていませんが、地元の方の間では区分に関して暗黙の了解があるのかもしれません。いずれの脱衣室とも2人以上同時に着替えたら窮屈さを覚えそうなほどコンパクトなスペースでして、ただ単に棚が括り付けられているだけですが、棚の各段にはなぜか段ボールが敷かれていました。ゴミ除けなのか結露除けなのか…。
脱衣室と浴室の間には仕切りが無く、浴槽はひとつのみの混浴です。浴室内には洗い場用の水栓が無く、かけ湯するなら桶で湯船のお湯を直接汲む他ありません。このようなコンパクトさ、そして必要最低限の備品しか無いところが、いかにも利用者の限定されている地元民専用浴場らしい佇まいであります。


 
浴槽は古めかしいコンクリ造で2~3人サイズ。長年に及ぶ温泉成分の付着により、浴槽内部は黒ずんでいました。奥の壁から突き出たパイプよりお湯がトポトポと注がれています。そのパイプは成分析出のトゲトゲによって覆われており、またお湯が湯面に落とされる周囲もサンゴ礁のような細かな凹凸が出来上っていました。湯口から吐出されたばかりのお湯は直に触れないほど熱く、そのままでは入浴に適さないため、ホースの水で適当に加水して温度調整しています。それでも源泉投入量はしっかりキープされていますから、体を湯船に沈めた時に伝わってきた鮮度感は抜群でした。湯船のお湯は浴槽縁の切り欠けから排湯されていますが、私が湯船に入ったら一気に溢れ出て、浴室内が洪水状態になってしまいました。

室内が薄暗かったのではっきりとしたことは言えませんが、お湯の色は薄い黄色系(橙色系?)の笹濁りで、湯中では橙色の浮遊物が少ないながらもユラユラしています。お湯を口に含むと薄い塩味と明瞭な金気味、そして重曹味に弱い土気味が舌に伝わり、金気や土気の匂いとともに、パラフィンのような硫酸塩的味覚と臭覚、そして何かが焦げたような匂いやそれと関係する苦味も感じられました。ツルスベ浴感がメインですが、キシキシも混在しており、湯中で肌を擦ると両者が拮抗していました。名湯の名に相応しいシャキッとした浴感が実に気持ちよく、熱いお湯で体が逆上せそうになりながらも、その浴感の良さの虜になってしまい、なかなかこのお風呂から出ることができませんでした。こんな素晴らしいお湯を一般開放してくださった地元の方々に感謝です。


温泉分析表掲示なし

栃木県那須塩原市の畑下温泉地区某所(地図による場所の特定は控えさせていただきます)

2013年の「温泉ふるまい」における一般開放時間は9:00~17:00
備品類なし(桶などはいくつか備え付けあり)

私の好み:★★★


●塩原渓谷フリーきっぷ
塩原温泉へ足を運ぶ際、普段は自分の車でアクセスしますが、今回は趣向を変えて、西那須野駅までJRに乗り、西那須野駅からは路線バスを利用して塩原温泉郷の各地を巡りました。
西那須野駅から塩原温泉まで路線バスで単純往復すると1800円の運賃を要するのですが、JRバス関東で発売されている「塩原渓谷フリーきっぷ」(1600円)を購入すれば、単純往復するだけでも200円安く上がりますし、2日間有効でフリーエリア内は乗降自由ですから、バスを利用して湯めぐりや観光名所巡りする場合には非常に便利です。




西那須野駅で電車を降り、改札を出てから、新幹線の高架下にあるJRバス関東の西那須野支店にて「塩原渓谷フリーきっぷ」を購入しました。支店でなくとも車内でも購入できるそうですが、支店窓口で購入すればバス時刻表のコピーがいただけます。バスの券とはいえJRですから、券面のデザインは国鉄やJRで一昔前まで売られていた企画乗車券を彷彿とさせてくれるものですね。券面右下には入鋏用のM字の文様が描かれていますが、これを使うことってあるのでしょうか。
裏面にはフリー区間および各観光名所とバス停の位置関係が図説されています。バス停間の距離も記されており、かなり実用的で役立ちました。なおこの券にはかつて「おみやげ品割引券」も付随していたようですが、現在はありません。



雨がそぼ降る西那須野駅前よりバスに乗車です。この路線には常に長尺車が使用されるようですが、その長い車体に反してこの時の利用客は10人を下回っており、せっかくの輸送力を持て余していました(繁忙期には長尺車ならではの輸送力が発揮されるのでしょう)。



約45分で塩原温泉バスターミナルに到着です。
昼間のバスは那須塩原駅発着となり、西那須野駅も経由しますので、「塩原渓谷フリーきっぷ」には那須塩原発着の設定もあります。詳しくはJRバス関東のHPをご参照あれ。
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