高天原温泉。
温泉めぐりを趣味とする者ならば、誰しもがその名前を耳にし、そして憧憬を抱く秘湯中の秘湯、日本で最も遠くにある温泉である。拙ブログではこれまで、中岳温泉・かもしか温泉・赤湯温泉・本沢温泉・白馬鑓温泉・阿曽原温泉・仙人温泉など、到達までに登山を要する温泉をいくつか取り上げてきたが、このうち最も歩行距離や時間が長かったものは、富山県の裏剣ルートにある「仙人温泉」であった。しかし今回取り上げる「高天原温泉」は日本最奥の温泉として知られているわけであり、当然ながら「仙人温泉」以上に到達まで時間を要し、本格的な登山を実践しなければならない。
高天原温泉へアクセスするルートは何通りか考えられるが、今回は私のスケジュールの都合上、富山県折立から往復する最短のルートを選択し、2泊3日で全行程を踏破することにした。ただ単純に同じルートを往復するだけでは芸がないので、帰路には険しく危険を伴うことで知られている「大東新道」を経由することにした。また、登山の素人である私が今回のルートを単独行で挑戦するには不安があるため、当初は拙ブログでリンクさせていただいている「温泉を通じて」のしーさんさんと共に二人で訪れる予定だったが、私の都合が調整できなかったため、結局いつものように私一人で(つまり単独行で)挑むことにした。
日程:2013年9月中旬某日 2泊3日
1日目:折立→太郎平小屋→薬師沢小屋(泊)
2日目:薬師沢小屋→雲ノ平→高天原山荘・温泉(泊)
3日目:高天原山荘→大東新道→薬師沢小屋→太郎平小屋→折立
人数:単独行
天候:快晴
距離:約37km
最大標高差:約1240m
持ち物
ルートの距離や標高差などにつきましては、上地図をクリックしてルートラボをご参照あれ。
今回私が辿ったルートの難易度は、百名山を目指すような登山家の皆さんにしてみれば、一部を除けばそんなに大騒ぎするほどのものではないかと思われる。しかし素人の私が単独で踏破できたことは、自分としては大手柄であり、一大快挙でもある。その時の様子を思い浮かべながら記事を書いていたら、興奮のあまりに内容がどんどん膨らんでしまった。そこで、スタートから温泉に入って下山するまでの登山記を、全7回に分けて記事をアップすることにした。もし同じルートを目指して高天原温泉へ目指そうと考えている登山の初級者や中級者がいるならば、この冗長な記事が、いずれの日にか実行されるであろう山行のささやかな一助になれば幸いである。一方で、登山愛好者の方からは「無駄に長いし、大袈裟に表現しすぎだ」と嘲笑されてしまうかもしれないが、「はじめてのおつかい」で親からのミッションを遂行すべく泣きベソをかきながらお店へ向かう幼な子を見守るつもりで、どうかお付き合い願いたい。
【7:10 折立駐車場】
前日に都内で仕事を早めに終え、納車されたばかりの新車で関越道・上信越道・北陸道を飛ばして富山市内にて一泊。早朝(5:50)にホテルをチェックアウトし、途中のコンビニでこの日の昼飯を購入して、有峰林道(※)の亀谷ゲートにて通行料金1800円を支払う。本当はもっと早く行動したいのだが、有峰林道の料金所が開くのは6時からなので、車中泊やテント泊が苦手な私はゲートが開く時間に合わせる他ない。一丁前な料金を徴収する道路だけあって、林道とはいえ全面舗装されており、トンネルで険しい地形をたやすくクリアしてゆくので、一部の工事区間を除けばとても運転しやすい。ゲートから30~40分で折立駐車場に到着した。一見すると駐車台数が多いように見えるが、意外にも空きスペースが多く、幸いにも登山口からかなり近い場所に車をとめることができた。
登山道入口にはバス停が立っているが、毎日運行されるのは夏のみで、9月中旬は週末しか運行されない。この日の晩に山小屋で出会った方に伺ったお話によれば、その方は電車で最寄り駅まで行き、そこから事前に予約していたタクシーでこの折立まで乗ってきたそうだが、ここへ到達する間にメーターはぐるぐる回り、結局福沢諭吉が1枚飛んでいったという。
折立にはトイレが2箇所あるので、用をたすには苦労しない。また自販機もあるので、下山後に喉を潤すこともできる。なおこの自販機の販売価格は、500mlPETが170円、350ml缶が130円で、それほど悪い設定ではない。
登山届はここではなく、先の太郎平小屋にて提出する。
【7:30 折立 (1350m) 登山開始】
登山道入口には、昭和38年の冬、薬師岳へ目指そうとした際に猛吹雪にあって遭難してしまった愛知大学山岳部員の供養塔が建立されている。登山初心者の私は今回の登山に当たってまずここで合掌し、一緒に己の安全を祈願した。
樹林帯の中をひたすら登る。スタートから20分ほど経ったところで一旦短い坂を下り、泥々な区間を丸太で通過してから再び上り坂へとりかかる。日頃の運動不足が祟って、もうこの時点で、パッキンが腐食した蛇口のように汗が体中からピューピュー噴き出始めた。
【8:18 アラレちゃん】
このルートの名物である「アラレちゃん」の看板を通過。現在のアラレちゃんは5代目なんだそうだ。ここからは薬師岳が綺麗に眺められる。偶々近くにイタチと思しき小動物のフンがあったので、周囲に誰もいないことを確認した上で、アラレちゃんになったつもりで「ほよよ~」と言いながら木の枝でフンをツンツクツンと突いてみたが、いい年してバカな真似をしたことがあまりに虚しくなったので、フンが付いた枝を投げ捨てて早々に立ち去った。
森林の中をひたすら登る。岩盤が剥き出しになっている箇所もあり、雨の日にはツルツル滑りそうだが、この日はこの上ない快晴だったので、何の心配もなく通過。スタートからこの辺りまでの間に、6パーティー13人を追い抜かす。平日だからか、天気はいいのに登山者の数は少なめだ。
【8:43/50 三角点 (1870.6m)】
折立と太郎平小屋の中間地点にあたる三角点。ベンチがあるので7分休憩。この三角点以降の景色は樹林帯から徐々に抜け、笹ヤブの中の所々にシラビソが生えるような植生へと移ってゆく。
三角点を過ぎてちょっと進むと、全体的に傾斜している岩盤の上を歩く。ここも雨の日だったら滑っちゃいそうだ。この岩盤区間を抜けると、木道が続くようになる。
奥へ延々と伸びる木道。この上なく開放的な景色が続く。途中で振り返ると、有峰湖が台風一過の青空を映してコバルトブルーに輝いていた。
ちょっと下ってマツ林や笹薮の中を通り抜けてゆく。道幅は広く取られているので、藪漕ぎをすることは無く、快適に歩ける。マツの枝には距離標が括りつけられていた。
【9:25 折立から5.0km地点(三角点より1.4km)(2011m)】
この辺りが森林限界。三角点以降はこんな感じで細かく距離標が立てられており、いま自分がどの辺りを歩いているか、進捗状況が把握できて便利だ。またこの付近では石畳のような路面になり、登山道の管理が行き届いていて、関係各位のご尽力に頭が下がる思いだが、石の上はゴツゴツしているためにちょっと歩きにくい。
整備された石畳の登山道。実に快適だ。振り返ると彼方に広がる平野に市街地が見える。滑川あるいは魚津方面だろうか。
【9:53/10:03 五光岩ベンチ (2189m)】
三角点以降は随所にベンチが設けられており、休憩する場所選びにも苦労はしないのだが、それらの中でも景色が群を抜いてよかった「五光岩ベンチ」で10分間休憩することにした。路傍に立つ標識によれば、ここは三角点より2.4km、太郎平まで2.0kmとのこと。
左右にゆったりと裾を広げる薬師岳が眼前に聳える。
画像左(上):南東方向の彼方に聳えるあの山は白山だろう。
画像右(下):薬師岳から視線を左へ移すと、稜線の間から剣岳がその特徴的な頂きを覗かせていた。
雲一つない青空の下、爽快な高地の木道を軽快に進む。いくら歩いてもちっとも疲れない。むしろ、いつまでも歩いていたいほどだ。
前方に小屋が見えてきたぞ!
太郎平の手前では、綿毛のようなチングルマの穂があたり一面を埋め尽くしていた。開花時期には可憐な白い花が見渡す限り広がっていたのだろう。
【10:40/11:25 太郎平小屋 (2330m)】
折立から3時間10分で、この日に歩くべき行程の中間地点である太郎平小屋に到達できた。標準タイムは5時間だから、かなり快調だ。小屋には登山相談所があったり、警察の臨時派出所があったりと、界隈の登山活動の拠点でもある。また登山届を提出するのもこの小屋である。小屋の窓口には、薬師沢小屋で宿泊予定の人はここで一声かけてほしい旨が告知されているので、それに従い、登山届の提出とともに、その旨を申し上げた。
小屋の裏手には水場があり、ポンプアップされた水がタンクから垂れ流されていた。ここで給水することも可能だが、チップ入れが括りつけられていたので、利用の際には小銭が必要なのだろう。その奥には綺麗なバイオトイレも完備されている。
小屋前の広場からは薬師岳が綺麗に眺望できた。そよ風が吹いて涼しく、3時間登り続けて熱くなった体には、半袖1枚が実に心地よい。上空ではツバメが飛び交っていた。
小屋では温かいラーメンが食えるらしいが…
私はコンビニで買ったおにぎりを頬張ってエネルギーを補給した。
その2へ続く
温泉めぐりを趣味とする者ならば、誰しもがその名前を耳にし、そして憧憬を抱く秘湯中の秘湯、日本で最も遠くにある温泉である。拙ブログではこれまで、中岳温泉・かもしか温泉・赤湯温泉・本沢温泉・白馬鑓温泉・阿曽原温泉・仙人温泉など、到達までに登山を要する温泉をいくつか取り上げてきたが、このうち最も歩行距離や時間が長かったものは、富山県の裏剣ルートにある「仙人温泉」であった。しかし今回取り上げる「高天原温泉」は日本最奥の温泉として知られているわけであり、当然ながら「仙人温泉」以上に到達まで時間を要し、本格的な登山を実践しなければならない。
高天原温泉へアクセスするルートは何通りか考えられるが、今回は私のスケジュールの都合上、富山県折立から往復する最短のルートを選択し、2泊3日で全行程を踏破することにした。ただ単純に同じルートを往復するだけでは芸がないので、帰路には険しく危険を伴うことで知られている「大東新道」を経由することにした。また、登山の素人である私が今回のルートを単独行で挑戦するには不安があるため、当初は拙ブログでリンクさせていただいている「温泉を通じて」のしーさんさんと共に二人で訪れる予定だったが、私の都合が調整できなかったため、結局いつものように私一人で(つまり単独行で)挑むことにした。
日程:2013年9月中旬某日 2泊3日
1日目:折立→太郎平小屋→薬師沢小屋(泊)
2日目:薬師沢小屋→雲ノ平→高天原山荘・温泉(泊)
3日目:高天原山荘→大東新道→薬師沢小屋→太郎平小屋→折立
人数:単独行
天候:快晴
距離:約37km
最大標高差:約1240m
持ち物
秋登山の一般的な持ち物だが…
服装:上は、速乾性のTシャツ(肌着として)、長袖(ジップアップタイプ)、モンベルの「ライトシェルジャケット」(行動時のアウターとして)、薄手のフリース(防寒用)、以上4枚を着たり脱いだりして調整。
食料:2泊とも小屋泊だから自炊道具は必要なかったが、コーヒーを淹れたり、昼飯を自分でこさえたかったので、バーナーやコッヘルの他、ペーパードリップのコーヒー一式、リフィルタイプのインスタント麺、尾西・アルファ米シリーズなどを登山ではおなじみの品々、そして缶ビールを携行した。なお缶ビールは各小屋で販売されている(350ml缶が600円)。
服装:上は、速乾性のTシャツ(肌着として)、長袖(ジップアップタイプ)、モンベルの「ライトシェルジャケット」(行動時のアウターとして)、薄手のフリース(防寒用)、以上4枚を着たり脱いだりして調整。
食料:2泊とも小屋泊だから自炊道具は必要なかったが、コーヒーを淹れたり、昼飯を自分でこさえたかったので、バーナーやコッヘルの他、ペーパードリップのコーヒー一式、リフィルタイプのインスタント麺、尾西・アルファ米シリーズなどを登山ではおなじみの品々、そして缶ビールを携行した。なお缶ビールは各小屋で販売されている(350ml缶が600円)。
ルートの距離や標高差などにつきましては、上地図をクリックしてルートラボをご参照あれ。
今回私が辿ったルートの難易度は、百名山を目指すような登山家の皆さんにしてみれば、一部を除けばそんなに大騒ぎするほどのものではないかと思われる。しかし素人の私が単独で踏破できたことは、自分としては大手柄であり、一大快挙でもある。その時の様子を思い浮かべながら記事を書いていたら、興奮のあまりに内容がどんどん膨らんでしまった。そこで、スタートから温泉に入って下山するまでの登山記を、全7回に分けて記事をアップすることにした。もし同じルートを目指して高天原温泉へ目指そうと考えている登山の初級者や中級者がいるならば、この冗長な記事が、いずれの日にか実行されるであろう山行のささやかな一助になれば幸いである。一方で、登山愛好者の方からは「無駄に長いし、大袈裟に表現しすぎだ」と嘲笑されてしまうかもしれないが、「はじめてのおつかい」で親からのミッションを遂行すべく泣きベソをかきながらお店へ向かう幼な子を見守るつもりで、どうかお付き合い願いたい。
その1(折立から太郎平)【←今回の記事はここ】
その2(太郎平から薬師沢小屋)
その3(薬師沢小屋から雲ノ平へ)
その4(雲ノ平から高天原山荘へ)
その5(高天原温泉)
その6(帰路・大東新道を経て薬師沢へ)
その7(薬師沢から折立へ下山)
その2(太郎平から薬師沢小屋)
その3(薬師沢小屋から雲ノ平へ)
その4(雲ノ平から高天原山荘へ)
その5(高天原温泉)
その6(帰路・大東新道を経て薬師沢へ)
その7(薬師沢から折立へ下山)
【7:10 折立駐車場】
前日に都内で仕事を早めに終え、納車されたばかりの新車で関越道・上信越道・北陸道を飛ばして富山市内にて一泊。早朝(5:50)にホテルをチェックアウトし、途中のコンビニでこの日の昼飯を購入して、有峰林道(※)の亀谷ゲートにて通行料金1800円を支払う。本当はもっと早く行動したいのだが、有峰林道の料金所が開くのは6時からなので、車中泊やテント泊が苦手な私はゲートが開く時間に合わせる他ない。一丁前な料金を徴収する道路だけあって、林道とはいえ全面舗装されており、トンネルで険しい地形をたやすくクリアしてゆくので、一部の工事区間を除けばとても運転しやすい。ゲートから30~40分で折立駐車場に到着した。一見すると駐車台数が多いように見えるが、意外にも空きスペースが多く、幸いにも登山口からかなり近い場所に車をとめることができた。
(※)折立駐車場へ車で向かう際には、有料の有峰林道を通る必要がある。通行に際しては林道入口のゲートで料金を支払わなければならないが、このゲートのオープン時間は朝6時から夜7時までとなっており、それ以外は閉鎖されてしまう。従って朝6時より前にゲート内へ入っていたければ、前日の夜7時までにゲートを通過し、車中やテントなどで夜を明かさねばならない。また下山後の帰路は、夜7時までにゲートを通過できるよう、早めに駐車場を出発しなければならない。たとえば、折立から亀谷ゲートまでの所要時間は30~40分なので、折立を18:20頃までに出発しないと亀谷ゲートを通過できない。
登山道入口にはバス停が立っているが、毎日運行されるのは夏のみで、9月中旬は週末しか運行されない。この日の晩に山小屋で出会った方に伺ったお話によれば、その方は電車で最寄り駅まで行き、そこから事前に予約していたタクシーでこの折立まで乗ってきたそうだが、ここへ到達する間にメーターはぐるぐる回り、結局福沢諭吉が1枚飛んでいったという。
折立にはトイレが2箇所あるので、用をたすには苦労しない。また自販機もあるので、下山後に喉を潤すこともできる。なおこの自販機の販売価格は、500mlPETが170円、350ml缶が130円で、それほど悪い設定ではない。
登山届はここではなく、先の太郎平小屋にて提出する。
【7:30 折立 (1350m) 登山開始】
登山道入口には、昭和38年の冬、薬師岳へ目指そうとした際に猛吹雪にあって遭難してしまった愛知大学山岳部員の供養塔が建立されている。登山初心者の私は今回の登山に当たってまずここで合掌し、一緒に己の安全を祈願した。
樹林帯の中をひたすら登る。スタートから20分ほど経ったところで一旦短い坂を下り、泥々な区間を丸太で通過してから再び上り坂へとりかかる。日頃の運動不足が祟って、もうこの時点で、パッキンが腐食した蛇口のように汗が体中からピューピュー噴き出始めた。
【8:18 アラレちゃん】
このルートの名物である「アラレちゃん」の看板を通過。現在のアラレちゃんは5代目なんだそうだ。ここからは薬師岳が綺麗に眺められる。偶々近くにイタチと思しき小動物のフンがあったので、周囲に誰もいないことを確認した上で、アラレちゃんになったつもりで「ほよよ~」と言いながら木の枝でフンをツンツクツンと突いてみたが、いい年してバカな真似をしたことがあまりに虚しくなったので、フンが付いた枝を投げ捨てて早々に立ち去った。
森林の中をひたすら登る。岩盤が剥き出しになっている箇所もあり、雨の日にはツルツル滑りそうだが、この日はこの上ない快晴だったので、何の心配もなく通過。スタートからこの辺りまでの間に、6パーティー13人を追い抜かす。平日だからか、天気はいいのに登山者の数は少なめだ。
【8:43/50 三角点 (1870.6m)】
折立と太郎平小屋の中間地点にあたる三角点。ベンチがあるので7分休憩。この三角点以降の景色は樹林帯から徐々に抜け、笹ヤブの中の所々にシラビソが生えるような植生へと移ってゆく。
三角点を過ぎてちょっと進むと、全体的に傾斜している岩盤の上を歩く。ここも雨の日だったら滑っちゃいそうだ。この岩盤区間を抜けると、木道が続くようになる。
奥へ延々と伸びる木道。この上なく開放的な景色が続く。途中で振り返ると、有峰湖が台風一過の青空を映してコバルトブルーに輝いていた。
ちょっと下ってマツ林や笹薮の中を通り抜けてゆく。道幅は広く取られているので、藪漕ぎをすることは無く、快適に歩ける。マツの枝には距離標が括りつけられていた。
【9:25 折立から5.0km地点(三角点より1.4km)(2011m)】
この辺りが森林限界。三角点以降はこんな感じで細かく距離標が立てられており、いま自分がどの辺りを歩いているか、進捗状況が把握できて便利だ。またこの付近では石畳のような路面になり、登山道の管理が行き届いていて、関係各位のご尽力に頭が下がる思いだが、石の上はゴツゴツしているためにちょっと歩きにくい。
整備された石畳の登山道。実に快適だ。振り返ると彼方に広がる平野に市街地が見える。滑川あるいは魚津方面だろうか。
【9:53/10:03 五光岩ベンチ (2189m)】
三角点以降は随所にベンチが設けられており、休憩する場所選びにも苦労はしないのだが、それらの中でも景色が群を抜いてよかった「五光岩ベンチ」で10分間休憩することにした。路傍に立つ標識によれば、ここは三角点より2.4km、太郎平まで2.0kmとのこと。
左右にゆったりと裾を広げる薬師岳が眼前に聳える。
画像左(上):南東方向の彼方に聳えるあの山は白山だろう。
画像右(下):薬師岳から視線を左へ移すと、稜線の間から剣岳がその特徴的な頂きを覗かせていた。
雲一つない青空の下、爽快な高地の木道を軽快に進む。いくら歩いてもちっとも疲れない。むしろ、いつまでも歩いていたいほどだ。
前方に小屋が見えてきたぞ!
太郎平の手前では、綿毛のようなチングルマの穂があたり一面を埋め尽くしていた。開花時期には可憐な白い花が見渡す限り広がっていたのだろう。
【10:40/11:25 太郎平小屋 (2330m)】
折立から3時間10分で、この日に歩くべき行程の中間地点である太郎平小屋に到達できた。標準タイムは5時間だから、かなり快調だ。小屋には登山相談所があったり、警察の臨時派出所があったりと、界隈の登山活動の拠点でもある。また登山届を提出するのもこの小屋である。小屋の窓口には、薬師沢小屋で宿泊予定の人はここで一声かけてほしい旨が告知されているので、それに従い、登山届の提出とともに、その旨を申し上げた。
小屋の裏手には水場があり、ポンプアップされた水がタンクから垂れ流されていた。ここで給水することも可能だが、チップ入れが括りつけられていたので、利用の際には小銭が必要なのだろう。その奥には綺麗なバイオトイレも完備されている。
小屋前の広場からは薬師岳が綺麗に眺望できた。そよ風が吹いて涼しく、3時間登り続けて熱くなった体には、半袖1枚が実に心地よい。上空ではツバメが飛び交っていた。
小屋では温かいラーメンが食えるらしいが…
私はコンビニで買ったおにぎりを頬張ってエネルギーを補給した。
その2へ続く