温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

荒城温泉 恵比須之湯

2013年11月27日 | 岐阜県

温泉施設名をGoogleなどで検索すると、公式サイトや温泉関係のポータルサイトではなく、温泉ファンのサイトやブログが上位に表示されるような温泉は、大抵の場合はアタリ(つまり良泉)だったりしますが、岐阜県の丹生川ダム手前にある荒城温泉「恵比須之湯」もその典型であり、多くの温泉ファンから熱い支持を集めている公衆浴場であります。先日安房峠(トンネル)を経由して帰京することがあったので、そのついでにこちらへ寄り道してまいりました。到着したのは夜8時頃でしたが、駐車場にはたくさんの車が止まっており、また浴室から外へ漏れ聞こえるお客さんの声から察しても、館内は相当賑わっているようでした。



駐車場の一角には温泉スタンドがあるのですが、この日は「故障中」の札が下げられていました。
このスタンドの前には丹生川のコミュニティバスのバス停が立っているのですが、一日1~2本程度しかなく、山間部にお住まいの方が里へ出勤通学することを目的としたダイヤとなっているので、このバスを利用して温泉へアクセスすることは非現実的といえるでしょう。


 
東北の温泉地みたいな木造トタン屋根の湯屋ですが、建物内はウッディーで温かみが感じられます。私が館内に入りますと、番台に座っていたおばちゃんが明るく対応してくれ、料金を支払いますと、おばちゃんの手元に置かれた金庫よりお金を出し入れし、売上があるたびに出納帳に数字を記載していました。
脱衣室でも木材のぬくもりを全面に出しており、あまり広くはないもののあまりストレスを感じることはありませんでした。なお脱衣室に入ってすぐのところにロッカーが設置されているのですが、ボックスの数が少ないので早い者勝ちとなってしまうかと思います。



お風呂は内湯と半露天がありますが、まずは内湯から見て行きましょう。男湯の場合は浴室内の左側にシャワー付き混合水栓が6基並んでおり、右側には浴槽がひとつ据えられています。浴槽のお湯は恰も赤いパプリカのパウダーを混ぜたクリームソースのような橙色系に強く濁っており、透明度はほぼゼロ。お湯からは炭酸味と薄い塩味、金気味、そして強い石灰感が伝わってきます。湯使いは加温の上での放流式となっています。


 
ここを訪れる多くの温泉ファンが目を輝かせずにいられないのは、言わずもがなこの浴槽やその周りの床であります。浴槽は約6人サイズで、元の素材が何なのか全くわからないほど全面的に石灰華でコーティングされており、その周りの床にはものすごい状態の千枚田が現れていました。多くの温泉ファンの方と同じように、私もこの光景を目にして当然ながらアドレナリンを大量分泌して興奮し、石灰華のうろこ状の造形を指先で撫でてみたり、あるいは素足で歩いて痛がることに喜びを感じたりと、脳みそがどうかしている人のような奇妙な行動を繰り返してしまいました。

このような石灰華は、温泉の中に含まれるカルシウムイオンが炭酸イオンや炭酸水素イオンと結合することによって発生する炭酸カルシウムの沈殿によって形成されます。この温泉施設では約800メートル離れた深さ1100mの源泉井から引湯し、25℃の源泉を42℃くらいまで加温した上で浴用に供しているわけですが、この加温によって温泉に含まれている炭酸ガスが抜けてしまい、その結果として強い濁りや浴槽周りの石灰華を生み出しているわけですね。


 
周囲を壁で囲まれ、頭上も屋根でカバーされている半露天ゾーンには、露天の浴槽と源泉風呂という2つの槽が設けられています。露天の浴槽は内湯同様に加温されており、強く濁っているのですが、外気の影響を受けているのか或いは加温を抑えているのか、湯加減は39℃くらいでキープされており、この浴槽に入る人は、ぬるい湯を好んでいつまでも長湯するか、もしくはぬる湯を嫌ってすぐに出てゆくかのいずれかのタイプに分かれるのが面白いところです。
内湯ほどコテコテな石灰華は現れていませんが、それでも浴槽のまわりにはしっかりとこびりついており、槽の縁に置かれた飾りの石にもクリーム色の析出がコンモリとコーティングされていました。そして浴槽縁の湯面ライン上には庇のような出っ張りも形成されていました。なおこちらの湯使いも内湯同様に放流式です。


 
こちらのお風呂で特筆すべきは、この源泉風呂でしょう。上2つの浴槽は入浴に適した温度にするため、25℃の源泉を加温していますが、こちらは非加温状態の生源泉がドバドバ投入されている完全かけ流しであり、非加温ゆえに濁りや石灰華の発生も抑えられており、お湯は加温槽とは異なり灰白色の笹濁りを呈しています。そして浴槽や周りの床にも石灰華はあまり発生しておらず、赤黒く染まっている程度です。私などは温泉での石灰華を目にするとつい喜んでしまう癖がついているのですが、この手の泉質ならば、むしろこの非加温の源泉風呂のように、石灰華が出ていない状態のほうが鮮度が良く、且つ炭酸ガスの濃度も高いわけですから、内湯や露天に比べると一見大人しく見えるこの源泉風呂こそ、この温泉の真骨頂であると言えましょう。

湯口のお湯を口にしてみると、炭酸味がとても強くて口腔内がシュワシュワと刺激されます。また石灰感や薄い塩味とともに弱いタマゴ味やタマゴ臭も感じ取れました。温度が温度だけに、いきなり源泉風呂に入ることは厳しいのですが、加温槽でしっかり温まってからこの浴槽に入ると、その温度差が実に心地よく、また長い時間源泉風呂に浸かっていても、炭酸の血管拡張作用によってあまり冷たく感じないのが不思議であります。
源泉風呂と加温槽を何度も往復する長湯の常連さんが多いので、お客さんの回転が悪く、全体的なスペースの問題もあって混雑することもしばしばですが、お湯のクオリティは抜群ですし、炭酸のおかげで湯上がりは体の芯から長時間ポカポカし続けますから、泉質重視の方でしたら、界隈を訪れた際には訪問必須であります。
すぐにスケールが発生しちゃう泉質ですから、配管や浴室のメンテナンスには相当ご苦労なさっているかと思いますが、是非いつまでもこの浴場を守り続けていただきたいものですね。


含二酸化炭素-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩温泉 25.5℃ pH6.4 351L/min(掘削動力揚湯) 溶存物質3586mg/kg 成分総計4744mg/kg
Na+:420.1mg(41.44mval%), Mg++:74.3mg(13.86mval%), Ca++:366.0mg(41.42mval%), Fe++:19.1mg,
Cl-:180.2mg(11.60mval%), Br-:0.4mg, I-:0.1mg, HCO3-:2354mg(88.10mval%),
H2SiO3:129.7mg, HBO:15.6mg, CO2:1158mg,

岐阜県高山市丹生川町折敷地415  地図
0577-78-2877
ホームページ

13:00~21:00 毎週金曜・年末年始定休
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★★
コメント
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