温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯上野温泉 つるぎふれあい館 アルプスの湯

2013年11月26日 | 富山県
 
前回まで取り上げていた「高天原温泉」からの下山後、山でかいた汗を洗い流すべく訪れたのが、上市町の中心部にある「アルプスの湯」です。こちらは町営の「上市町保健福祉総合センター」(愛称「つるぎふれあい館」)という立派な建物内部に併設されている日帰り温泉施設であり、この手の公営大規模施設に対して普段の私はあまり触手が伸びないのですが、綺麗且つ衛生的なお風呂で下山後の体をしっかり洗って帰り支度を整えたかった上、こちらではちょっと特徴的なお湯が湧いているという情報も得ましたので、今回訪問したわけです。日没の頃に現地へ到着したのですが、駐車場にはたくさんの車が止まっており、お風呂道具を小脇に抱えた人が次々に入口へと吸い込まれていました。人気の高さが窺えます。



エントランスホールは偉く立派な吹き抜けとなっていて、こんな施設に浴場があるのか疑わしくなったのですが・・・


 
辺りを見回すと、館内には入浴料金を支払う券売機が2台並んでいました。券売機の奥が浴場の入口です。
受付では入浴券および下足場のロッカーキーと引き換えに、脱衣室のロッカーキーを受け取ります。


 
脱衣室はスポーツクラブのように広々としており、明るく綺麗で清潔感があって、余裕のあるつくりなので使用時はストレスを感じません。公営施設らしく室内にはベビーベッドも用意されています。



ゆとりのあるスペースを活かして館内には様々な種類の浴槽が設けられており、内湯サイドには全身浴(主浴槽)・圧注浴・寝湯・香湯・歩行浴・水風呂・サウナが、露天サイドには源泉かけ流し槽と人工炭酸浴泉が用意されています。なお露天は浴室を挟んで前後2つに分かれており、手前側には源泉かけ流し槽が、奥側には人工炭酸浴泉が配置されています。

洗い場には広い浴室の手前右側に位置しており、コの字型の壁に沿う形で18基、その間の島に10基、計28基のシャワー付き混合水栓が取り付けられています。またこの他立って使うシャワーや、上がり湯用のステンレス槽なども設けられています。

上画像は全身浴(主浴槽)や圧注浴・寝湯の様子です。主浴槽は非常に大きく、浴槽ではなくプールかと見紛うほどです。上述のように館内には多様な浴槽があるのですが、温泉が用いられているのは露天の源泉かけ流し槽の他、内湯の全身浴・寝湯・圧注浴の計4種であり、他の浴槽では真湯が使用されています。また手前側の露天風呂では敢えて「源泉かけ流し」と称していることからも推測できるように、温泉を使っているその他の浴槽、つまり内湯の全身浴・寝湯・圧注浴では源泉を除鉄した上、加水加温循環ろ過消毒という徹底した管理が施されたお湯が供給されていまして、実際に私が入浴してみたところ、お湯は温泉の原型をほとんど留めておらず、真湯とあまり区別がつきませんでした。

何しろプールのような大きなお風呂ですので、利用客が多くてもあまり混雑しているようには感じられないのですが、とはいえお客さんの人気が集まる浴槽には偏りがあり、たとえば主浴槽や歩行浴は常時ガラガラである一方、サウナや圧注浴、そして屋外の人工炭酸風呂では、お客さんが集中しているようでした。



たくさん浴槽があるのに、私はこの手前側の露天風呂ばかり入り、他の浴槽はどんなものかを探る程度しか利用しませんでした。お風呂自体は8~10人サイズの石風呂で、頭上は東屋が覆い、周囲は壁で囲まれているため、屋外らしい開放感は全く無く、完全なる坪庭状態なのですが、この浴槽のみ上述のように「源泉かけ流し」を謳っており、事実、他の浴槽とはまったく個性を有するお湯が張られているのであります。


 
石積みの投入口から落とされるお湯は典型的な黒湯でして、浴槽内のステップに踏み込んだだけで自分の足が見えなくなってしまうほどコーヒーのような濃い色を呈しており、投入口付近では湯面が泡立っていました。放流式の湯使いを証明するかのように、湯口とは対称の位置にある排水口へ絶え間なくお湯が流下していました。

お湯を桶で汲んでみたところ、まるでお醤油を汲んだかのような感じとなり、その中央では湯の華も集まっていました。分析表を見る限りではかなり濃厚なお湯であり、特に鉄分や食塩が相当多く含まれているはずなのですが、実際に湯口のお湯を口に含んでみたところ、鉄分は殆ど感じられず、塩気もマイルドで甘塩味程度でしたが、見た目から予想できる通りにモール的な味や重曹味は明瞭に確認でき、そして砂消しゴム的な硫黄感も若干含まれているようでした。またツルスベ浴感がとても心地よく、食塩泉というより重曹泉に近いフィーリングを感じ取りました。
館内表示によれば循環ろ過は行っていない放流式の湯使いだそうですが、加温や加水は実施されているそうですから、あの塩味の薄さから想像するに、相当量の加水がなされているのではないかと思われます。なお状況に応じて塩素系薬剤も投入されるとのことが、今回はそれらしき臭いは感じられませんでした。このように分析表と実際の知覚ではかなりの開きがあるのですが、これは湯使いによるものかもしれませんし、あるいは分析後に泉質が変わっちゃったのかもしれません。
いずれにせよ濃いお湯であることに間違いはありませんから、もう少し源泉が持つ個性を活かした湯使いができれば面白いのですが…。しかしながら湯使いに関する館内表示は実に細かいので、利用者に対してきちんと情報を開示しようとする施設側の誠意はちゃんと伝わってきました。各設備のメンテナンスは良く、使い勝手も良好ですので、お湯のクオリティはともかく、気持ちよく入浴したい方にはもってこいな施設かと思われます。

上市町湯上野温泉(2号井)
ナトリウム-塩化物温泉 49.1℃ 溶存物質15299mg/kg 成分総計15365mg/kg
Na+:4936mg, NH4+:28.5mg, Mg++:59.4mg, Ca++:627.4mg, Mn++:1.6mg, Fe++:12.5mg,
Cl-:9050mg, Br-:32.6mg, I-:1.7mg, HCO3-:224.4mg,
H2SiO3:114.4mg, HBO2:80.5mg, CO2:66.0mg,
※ガスセパレーター通過後、除鉄・除マンガン処理し、次亜塩素酸を注入した後の数値
Na+:4950mg, NH4+:9.3mg, Mg++:58.9mg, Ca++:618.3mg, Mn++:0.1mg未満, Fe++:0.1未満mg,
Cl-:9050mg, Br-:31.8mg, I-:1.2mg, HCO3-:159.4mg,
H2SiO3:112.1mg, HBO2:72.8mg, CO2:98.8mg,
【温泉仕様状況】
露天風呂:供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環濾過使用せず、塩素系薬剤を使用する場合あり
全身浴・寝湯・圧注浴:源泉を除鉄した後に使用、供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環ろ過装置使用、塩素系薬剤を使用
人工炭酸風呂:源泉を除鉄した後に使用、供給量不足を補うため加水、入浴に適した温度に保つため加温、循環ろ過装置使用、塩素系薬剤を使用、炭酸ガスを高濃度溶かしこんでいる
香湯・歩行浴・打たせ湯・水風呂は温泉を使用していない

富山地方鉄道・上市駅より徒歩15分
富山県中新川郡上市町湯上野8  地図
076-473-9333
上市町公式ウェブサイト内の紹介ページ

10:00~21:00(入館20:30まで) 月曜定休(祝日の場合は翌日)
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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