温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

雲仙温泉 別所共同浴場

2015年11月28日 | 長崎県
 
前回記事まで取り上げていた小浜温泉から山道を登り、濃霧に包まれた雲仙の温泉街へとやってまいりました。まず私が赴いたのは、観光客が訪れなさそうな別所地区にある共同浴場です。周囲の民家に隠れるようにひっそりと佇む、いかにもマニア受けしそうなこの地味な湯屋には、特に存在を示す看板や標識が無いため、事前に知らないとたどり着けないのですが、天井からちょこんと突き出る湯気抜きが、この小屋が湯屋であることを密かに物語っていますし、雲仙温泉観光協会の公式サイトでも「日帰り入浴施設」の一つとして紹介されていますので、地元の方のみならず私のような一見の外来客も利用可能です。
こちらの共同浴場は無人であり、出入口は男女別。男湯の入口左側に立つ銀色の細長いポストに、湯銭100円を投入して内部へお邪魔します。


 
ドアを開けるといきなり脱衣ゾーンとなり、その奥の低い位置に浴槽のお湯が覗いています。九州の共同浴場でよく見られる脱衣室と浴室が一体になっているタイプの造りなんですね。脱衣ゾーンには小さな棚にプラ籠が4つ置かれているだけで至って簡素。脱衣ゾーンと入浴ゾーンは一応は簡易な塀で仕切られていますが、そのパーテーションとして用いられているアクリルの波板といい、塗装されていないモルタル壁といい、飾り気が一切ない手作り感の溢れる質素な佇まいは、いかにも地元民向けの共同浴場らしい、なんとも言えない風情です。


 
脱衣室からステップを数段下ると、浴槽が据えられている入浴ゾーンです。年季の入った浴室いっぱいに浴槽が設けられており、赤茶色の床タイルが申し訳なさそうに僅かな幅で浴槽の周りを縁取っていました。


 
浴槽の周りには水道の蛇口が計4つ取り付けられていますが、いずれも硫化して真っ黒です。4つの蛇口のうち、奥のコーナー部分にあるものはシャワーと直結されており、また湯船の上のものは浴槽への加水用となっていました。シャワーと言ってもお湯は出ませんのではないので、掛け湯するなら桶で湯船のお湯を汲むことになります。

四角い浴槽は3~4人サイズのコンクリ造。ちょっとベージュ色を帯びた弱い白濁のお湯が張られており、その濁りによって、底面に敷かれている石材、そして沈殿している赤い湯の花がボンヤリと見えます。また浴槽縁の湯面ライン上には結晶が線状にこびりついていました。


 
小さい湯船でありながら、温泉の投入口はふたつあり、ひとつは洗い場の壁をぐるっと回って這ってくる塩ビ管、もうひとつは壁から湯面の真上に突き出ている配管です。後者の先には洗濯機の排水で使われるような蛇腹のホースが接続されており、槽内にてお湯を吐出していました。
一方、排湯に関しては、浴槽縁の切り欠けからの溢れ出しの他、壁際に立ち上がっている塩ビ管がオーバーフロー管になっており、この双方からお湯が排出されていました。
湯船のキャパに対して投入量が多く、且つ湯口にいける投入温度が50℃以上あるためか、私が入室した際の湯船は体感で47~8℃という熱い湯加減であったため、加水して45~6℃まで下げさせていただいてから入浴しました。お湯からは火山の噴気孔のような硫化水素臭と金気臭が漂い、口に含むとビタミンCのタブレット錠みたいな酸味、そして弱い金気味が得られました。浴槽周りを赤く染めているのはこの金気の仕業なのでしょう。サラスベの中に少々の引っかかりが混在する浴感は、造成泉を連想させるのですが、実のところ、ここの源泉はどのようになっているのでしょうか。館内には分析書の掲示が無いため、源泉や泉質に関してはよくわかりません。しかしながら、雲仙温泉といえば白濁した硫黄泉のイメージがありますが、当地のメジャーな温泉施設のお湯とは一線を画す独特なフィーリングですし、観光客の利用を想定していない飾り気のない湯屋は、鄙び系の湯めぐりがお好みの方には外せませんので、マニア的には立ち寄って正解の一湯でした。


温泉分析書掲示なし

長崎県雲仙市小浜町雲仙(場所の特定は控えさせていただきます)
雲仙温泉観光協会公式サイト内の紹介ページ

9:00~22:00
100円
備品類なし

私の好み:★★


コメント
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