温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

小浜温泉 雲仙荘

2015年11月26日 | 長崎県
 
前回記事の脇浜共同浴場を出て、温泉街の中心部へと戻る途中、海食崖の真下に建つ小綺麗で新しい建物「雲仙荘」にも立ち寄って、日帰り入浴を楽しみました。こちらのお宿は正式名称を「一般社団法人 全国育児介護福祉協議会 保養施設 雲仙荘」というんだそうでして、その名の通り福祉や保養を目的とした施設らしいのですが、一般客でも気軽に利用でき、日帰り入浴も積極的に受け入れています。
通りに沿った植え込みには、「長崎県唯一 湯雨竹」と手書きされた看板が立てられており・・・


 
その看板が示すように、玄関の斜前には真っ白な湯気を朦々と上げている湯雨竹が設置されていました。湯雨竹とは読んで字の如く、無数の竹の枝を竹箒みたいな感じで末広がりに吊るし、その上から熱い温泉を雨のように降らせ、竹の細かな枝を滴り落ちる間に温泉の温度を冷却させて入浴に適した温度に調節する装置です。温泉ファンにとっては別府・鉄輪温泉の「ひょうたん温泉」でおなじみですが、実際に「ひょうたん温泉」の運営会社がこの湯雨竹の特許を有しております。拙ブログは東日本の読者の方が多いようですが、この湯雨竹は九州だけのものではなく、たとえば東北でも、福島県奥会津の昭和村にある「しらかば荘」でも採用されています。
こちらで使っている源泉は100℃近い熱湯であるため、この大規模な湯雨竹を使うことにより、加水せずに湯温を下げて、入浴に適した温度にしているのですね。


 
湯雨竹の前には足湯があり、専用のタオルも用意されていました。こうした小さな配慮は嬉しいですね。



天井が高くて窓が大きなロビーはとても開放的。フロントで料金を支払い、2階へ上がります。


 
浴室のある2階の廊下は綺麗なのですが、保養施設だからか妙に白すぎて、無機質で殺風景。まるでビジネスホテルの客室か病院の廊下を歩いているみたいです。男女別の浴室のほか、家族風呂も廊下に並んでいるのですが、今回は廊下の一番奥に位置する男湯のみ利用します。


 

真っ白な壁に簾状のビニル床材が敷かれた脱衣室は清潔感があり、ゆとりのある空間スペースが確保され、エアコンも完備されていて居心地も使い勝手も良好です。またお水のサービスのほか、ソファーセットやマッサージチェアなども置かれており、湯上り後の休憩スペースとしての機能も兼ねてました。


 
浴室は鉄平石敷きの床と黒い石材貼りの壁により、落ち着いた色合いです。また浴槽上の窓から差し込む陽光が柔らかな明るさをもたらしています。男湯の場合は入って右手に洗い場が配置されており、シャワー付きのカランが計8基、そして立って使うシャワーが1基設けられています。


 

内湯の浴槽は石材造りで、手前側は緩やかな曲線を描いており、直線部分の最大寸法は目測で2m×4m。窓側の縁と円弧の端緒が接する箇所に湯口が突き出ており、湯雨竹で冷却されたお湯が滔々と注がれ、壁際の溝へ惜しげも無くオーバーフローしていました。小浜温泉の各源泉はどこも湧出温度が高いため、各施設や旅館では投入量を絞ったり、あるいは加水をするなどして湯温調整に苦心していますが、こちらでは湯雨竹のおかげで、源泉と同じ濃さのお湯を全量ふんだんに掛け流せるんですね。ただ、浴室に入った瞬間にカルキのような臭いが感じられたのですが、これって塩素消毒のためなのか、はたまた温泉由来のものなのか、そのあたりは判然としませんでした。


 

内湯からドアを開けて屋外に出ると、ベランダのような空間に露天風呂が設けられていました。格子状の覆いの下に、おかめのお面みたいな曲線を描く石板貼りの浴槽がひとつ据えられており、内湯同様、こちらでも湯口からたっぷりとお湯が注がれ、湯船を満たしたお湯は、手すりの左側にある溝へ流れ落とされていました。内湯でも露天でも、お湯が溢れ出る流路にあたる石板は、元の色がわからなくなるほど黒く染まっており、お湯の濃さを物語っていました。

内湯も露天も同じお湯で、自家源泉を100%かけ流しています。湯船では潮汁のような僅かな白濁を呈しているのですが、光の当たり方によっては若干山吹色を帯びているようにも見えます。さすが加水していないだけあって、口に含むとしょっぱさとともに僅かながら苦汁の味が感じられ、トロミのあるお湯に浸かるとツルツルスベスベの浴感がはっきりと肌に伝わりました。濃厚な食塩泉らしい質感が維持されているのは、湯雨竹のおかげですね。でも上述のように、カルキと思しき臭いがあるほか、タンスの防虫剤のような匂いも湯口から漂っていました。前者は消毒剤でしょうけど、後者は温泉由来の匂いなのかな。


 
上画像は露天風呂からの眺めです。目下では湯雨竹から朦々と湯気が上がり、コメリや国道の向こうには、波が全く立っていない穏やかな橘湾が広がっています。この橘湾は湾全体がカルデラであり、海底の地下深いところにはマグマ溜りがあって、小浜温泉や雲仙の火山活動へ熱を供給していることが知られています。つまり目の前に広がる静かな海原の下に、沸騰状態の温泉や激しい噴火をもたらす強烈な熱の源が潜んでいるんですね。外面似菩薩、内面如夜叉の内海と言っても過言ではないでしょう。いま自分を温めてくれているお湯の熱が、眼前の湾の地下深くから来ているんだと思うと、景色から得られる感慨もひとしおです。

濃厚な食塩泉ですから、温まり方が実にパワフルで、迂闊に長湯しているとボディブローを食らったかのようにフラフラになっちゃいますから、このお風呂での全身浴は適度にとどめ、ベランダで海を眺めながら潮風に当たって、体をクールダウンさせることをおすすめします。綺麗なお風呂で濃い状態のままのお湯に入れる、貴重でありがたい施設でした。


全国養護福祉会雲仙荘源泉
ナトリウム-塩化物温泉 98.2℃ pH8.4 552L/min(自噴・深度100m) 溶存物質9.364g/kg 成分総計9.364g/kg
Na+:2855mg(80.13mval%), Mg++:162.9mg(8.65mval%), Ca++:176.3mg(5.68mval%), Mn++:0.7mg, Fe++:0.7mg,
Cl-:4995mg(91.54mval%), Br-:7.9mg, I-:0.4mg, SO4--:398.5mg(5.39mval%), HCO3-:173.2mg(1.85mval%), CO3--:52.4mg,
H2SiO3:163.0mg, HBO2:76.5mg,

長崎県雲仙市小浜町南本町145-2  地図
0957-76-0550
ホームページ

日帰り入浴12:30~22:30
500円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5

コメント
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