温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

那須温泉 ホテルグリーンパール那須

2015年11月21日 | 栃木県
 
前回取り上げた「金ちゃん温泉」を出た後、まだ外が明るく、体力的にもう一軒ハシゴできそうだったので、那須湯本方面へ戻る形になりますが、「ホテルグリーンパール那須」で日帰り入浴することにしました。再び那須シャトルバスの「キュービー号」に乗り込み、今度は「藤城清治美術館」で下車です。「ホテルグリーンパール那須」は那須湯本と南ヶ丘牧場の中間くらいに位置しており、地図で見たときにはここが最寄りかと見当をつけていたのですが、でも実際にはこの一つ先の「ホテルサンバレー那須」で下車した方が良かったみたい。


 
バスを降りて徒歩14分で「ホテルグリーンパール那須」に到着しました。元々は荒川区の保養施設なのですが、現在は民間(ビューホテルグループ)との間で賃貸借契約が結ばれ、その民間事業者によって運営されており、区民のみならず一般客でも気軽に利用もできるようになりました。そうした経緯があるためか、外観は上場企業のふた昔前の福利厚生施設みたいです。民間委託後も荒川区の保養施設としての機能を果たしており、荒川区民は格安料金で利用することができます。この日も駐車場には足立ナンバーの車が数台とまっていましたから、区民が宿泊していたのでしょう。でも区民の利用率が良くないにもかかわらず、いまだに区のお金が投入されつづけているため、荒川区の内部(区議会等)では完全民営化を目指すべきではないか(つまり区と宿は縁を切るべきではないか)という声が上がっているとかいないとか…。


 

日帰り入浴客専用の下駄箱に靴を収めて入館します。フロントの方はとても丁寧に対応してくださいました。お風呂は2階にあるので、1階ロビーにある階段を上がって2階ホールへ向かいます。2階のホールにはお水のサービスが用意されていました。このホールは吹き抜けになっていて、1階のラウンジを見下ろせます。大きな窓と大きな煙突がとっても印象的で、高原リゾートらしい清々しい空間です。


 
ホールから伸びる廊下を進んで暖簾をくぐります。男女別大浴場の他、貸切の露天風呂もあるんだそうですが、日帰り入浴の場合は別料金が必要となるため、今回は大浴場のみの利用です。


 
洋風で瀟洒なホールから一転して脱衣室は和風な趣きです。扉を開けると硫黄の匂いがふんわり香ってきました。リゾートホテルとしてのプライドなのか、広い室内は清掃がよく行き届いており、アメニティも揃っていて、使い勝手は良好です。また扇風機も用意されているので、湯上り後のクールダウン対策もぬかりありません。


 
(上2枚の画像はクリックで拡大)
こちらのお風呂で使われているお湯は自家源泉ではなく、遠く離れた茶臼岳東側山腹の「奥の沢源泉」(明礬沢付近)など複数の源泉から集めたお湯を数キロ引っ張っています。室内にはどのようなルートで引湯されているのか、わかりやすく図示されていました。また状況に応じて加温することもあるため、どのようにお湯を集中管理しているのか、そして熱交換システムによっていかに加温しているのか、そうした仕組みに関しても図解していました。なおこうした引湯および集中管理は、専門の業者によって維持運営されており、このホテルではその業者からお湯を買って配湯してもらっているわけです。前々回の記事で取り上げた「町営いこいの家」では大丸温泉の源泉を引湯して使っていましたが、那須一帯ではこのような引湯があちこちで見られます。


 
 
浴室に入った途端、焦げたような臭いを伴う硫化水素臭がツーンと鼻孔を刺激してきました。男湯の場合は浴室の左側一面に窓が広がっており、とても明るく広々としています。この日は霧で視界が霞んでおり、付近の森林しか望めませんでしたが、晴れている日にはけだし素晴らしい眺望が楽しめることでしょう。
室内には複数の浴槽が据えられており、最奥には無色のお湯が張られた槽がふたつ並んでいますが、この2つは温泉ではなく循環ろ過の真湯ですので、今回はノータッチです。

窓と反対側に洗い場があり、シャワー付きのカランが向かい合わせに計11基並んでいました。備え付けのアメニティーはシャンプーとコンディショナーが分かれていますので、リンスインシャンプーだと髪がゴワゴワして嫌だというお客さんでも大丈夫。訪問時は桶や腰掛けがきちんと整頓されており、係員によってこまめに手入れされていることが窺えます。内装は石板貼りですが、暖色系の石材が用いられているため、温もりのある印象を受けます。


 
室内の一角にはガーデンのような小さな飾りがあり、リスの人形が置かれて可愛らしく演出されていました。またアンパンマンの車など子供向けの遊具も備え付けられており、ファミリーを意識した配慮が実践されていました。


 
 
窓下に据えられている瓢箪を半分に割ったような大きな浴槽が、ここの主役である温泉浴槽。周縁には岩が並べられており、サイズ的には10人前後でしょうか。浴室内は上述のように石板貼りであり、床には鉄平石が敷かれているのですが、この浴槽周りだけは元々の色が全くわからないほど真っ白に染まっているばかりか、その表面がガザガサに荒れていました。成分付着によるものか、あるいは腐食して剥離してしまったのかよくわかりませんが、このお湯が相当なクセ者であることに間違いなさそうです。

浴槽の一番奥(脱衣室側)には湯口があり、その反対側にあたる湯尻の岩の隙間からお湯が溢れ出ていました。気温によって加温されることもあるそうですが、基本的には放流式であり、お湯が溢れ出る周りはクリーム色に分厚くコーティングされていました。


 
湯口をクローズアップしてみました。黒御影石でつくられたこの湯口の表面には、硫酸塩の析出や硫黄の結晶などいろんな色を帯びた温泉成分がコンモリとこびりついており、まるで口を開けて何かを吐き出しているモンスターみたいです。また湯口だけではなく、温泉の飛沫が付着するその周辺(壁など)も黄色く染まっていました。更には、湯口だけでなく浴槽の縁に並べられた岩にも析出が付着してトゲトゲしており、入浴して縁にもたれかかると、背中や頭などがチクチクと刺激されました。

湯船のお湯は青みを帯びた灰白色に濁っており、光の入り方によっては灰色がやや濃い目に表れている乳白色濁りにも見えます。見た目こそ近所の那須湯本の鹿の湯源泉に似ていますが、酸性泉の那須湯本と違ってこちらはpH6.0なので酸味はあまり感じられません。でもその代わりに苦味はかなり強く、口腔内の粘膜がビリビリ痺れるほど苦くて渋みがあり、硫黄泉らしいタマゴ味もしっかり得られます。匂いに関しては脱衣室まで漏れてくるほど強く、まるで火山の噴気孔から吐き出されるガスような刺激を伴う硫化水素臭、そして何かが焦げているかのような匂いがはっきりと嗅ぎ取れました。分析書によれば、硫化水素イオンは10.1mg, 遊離硫化水素に至っては114.6mgという驚異的な数値であり、強い匂いはこうした大量の硫化水素によってもたらされているのでしょう。この量は日本に星の数ほどある温泉の中でも屈指の多さではないでしょうか。もちろん、室内では換気扇が回っており、窓の下部には通風用のルーバーも取り付けられていますから、ガス中毒は気にせずに入浴できますよ(当たり前ですが、そうでないと保健所から営業許可がおりませんからね)。また引湯してくる間にどんどん抜けてゆくはずですから、このお風呂における硫化水素の量は、分析書よりはるかに低い数値になっているかと思われます。

酸性泉の那須湯本の湯と異なり、こちらは中性に近い弱酸性ですから、入浴中は肌が刺激されるようなことはなく、体にまとわりつくようなトロミも弱く、味や匂いに反して浴感は意外にもマイルドで、程よい湯加減に調整されていることもあって、入りやすくてついつい長湯したくなります。長い距離を引湯されてくる間に、角が取れてお湯の感触がまろやかになるのでしょう。でも、決して熱くないにもかかわらず、硫黄による血管拡張効果が働くためか、気づけば心臓が激しく鼓動しており、軽くふらついて湯あたりを起こしそうになりました。さすが総硫黄124.7mgのお湯は伊達じゃありません。
規模の大きなリゾートホテルだからと言って侮るなかれ、非常に個性的で濃厚なお湯を堪能できる実力派のお風呂でした。


 
湯上がりにフロントの売店でりんどう湖ファミリー牧場のロイヤルジャージー牛乳を購入し、ぐびぐびっと一気飲み。ちょっとお高い牛乳ですが、さすがジャージー種の牛乳だけあって、とっても濃厚で美味。ささやかな贅沢を楽しませていただきました。


 
帰路は「サンバレー那須」の敷地を東西に突き抜ける公道を歩いて、県道の「新那須」バス停から那須塩原行き(黒磯駅経由)の路線バスに乗ることにしました。「サンバレー那須」の看板に下に小さく「グリーンパール那須」の看板も立っていますから、路線バスでも車でも、アクセスとしてはこちらからの方がわかりやすいかと思います。


新那須温泉供給(株)那須温泉(稲川1~4号、苦土稲川1・2号、県電気局B-3、八幡崎1号混合泉) 
単純硫黄温泉(硫化水素型) 54.4℃ pH6.0 545.0L/min 溶存物質0.847g/kg 成分総計1.205g/kg
Na+:41.5mg(18.20mval%), Ca++:120.3mg(60.49mval%), Mg++:21.3mg(18.17mval%), Mn++:0.2mg, Fe++:0.2mg,
Cl-:16.7mg, HS-:10.1mg, I-:0.8mg, SO4--:320.3mg(67.76mval%), HCO3-:145.2mg(24.19mval%),
H2SiO3:157.4mg, CO2:243.6mg, H2S:114.6mg,
源泉の温度により加水することあり

那須塩原駅もしくは黒磯駅より那須湯本方面行きの東野交通バスで「新那須」下車徒歩10分強、もしくは那須シャトルバス「キュービー号」で「ホテルサンバレー那須」下車
栃木県那須郡那須町湯本213  地図
0287-76-2523
ホームページ

日帰り入浴13:30~20:00(受付19:00まで)
平日500円・土日祝700円
ロッカー(貴重品用の小さなもの)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント (2)
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