温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

那須湯本温泉 はなやホテル 小鹿の湯

2015年11月15日 | 栃木県
 
共同浴場「鹿の湯」を頂点にして湯川沿いに川下へ伸びて分布する那須湯本温泉街の旅館の中でも、比較的下の方にあるバス通り沿いの「はなやホテル」には、離れの浴場棟「小鹿の湯」があり、日帰り入浴を積極的に受け入れていますので、どんなお風呂なのか体感すべく、「民宿南月」で一晩を過ごした翌朝に利用させていただきました。


 
客室を擁する本棟より低い位置に離れの湯小屋「小鹿の湯」が隣接しており、両棟に挟まれている階段を下ったところにある、浴場専用のプレハブ小屋の受付で料金を支払います。湯小屋は「鹿の湯」のイメージをインスパイアしたようなシックな総木造ですが、外側にはモルタルが塗られており、まるで漆喰を塗っているかのような風合いを醸し出していました。入口は男女別に分かれており、入口の手前に有料のロッカーが設置されています。



ちなみに上画像は宿泊棟入口(浴場側の通用口)。上述のように日帰り入浴は、専用の窓口で受付を行いますので、宿泊棟へ立ち入ることはありません。


 
また、裏手にまわれば、貸切露天風呂もあるのですが、外来者が使えるかどうかは不明(当然、宿泊者は利用できるかと思いますが…)。


 
杉材仕上げの脱衣室は照度を抑えており、程良いぬくもりと落ち着いた大人の雰囲気がバランス良く、行き届いた清掃のおかげもあって、居心地良好です。男湯の場合は右側に棚が並び、奥に洗面台とトイレが設けられています。室内にはこの「小鹿の湯」の建築工程を記録した写真が展示されているのですが、これを見ますと、客の立場だとなかなか意識しにくい箇所まで、微に入り細を穿つ心配りで、丁寧に築き上げられていったことがわかります。「なんとなく居心地が良いな」と感じる空間って、このようにオーナーや施工者の細かな配慮や工夫、そして努力の積み重ねによって実現されているんですね。


 
旅館に付帯するお風呂だけあり、内湯はとっても綺麗です。脱衣室は杉材でしたが、この浴室は松材が用いられており、総木造ならではのぬくもりと落ち着きを兼ね備えた温泉風情たっぷりのお風呂です。高い天井は片傾斜になっており、一番高い部分が湯気抜きになっています。床にも全て松材が用いられており、羽目板をスノコ状に並べて排水性を高めているのですが、酸性のお湯による腐食を防ぐためか、金属の釘は用いられておらず、すべて竹釘で打ち付けられていました。
洗い場にはシャワー付きのカランが4基並んでおり、一つ一つの間隔が広く確保されているため、隣同士で干渉するようなことはありません。

浴槽は大小に2分割されており、こちらも総木造です。小さな方は4~5人サイズでかなり熱く、大きな方は6~7人サイズで一般客向けの42~3℃。大小の両浴槽にまたがる形で湯口の木箱が置かれており、そこから双方へお湯を注ぐ那須湯本の伝統スタイルを踏襲しているのですが、他の浴場のように木の栓を湯口に差し込んで湯量を調整するような方法は採用せず、木箱から樋へ吐出される段階で既に湯量が調整されていました。いずれの浴槽でも私が入るとザバーッと勢いよくお湯が溢れ、その音を耳にしながら湯浴みすると豪快な気分に浸れました。


 

内湯のみの「鹿の湯」に対して、この「小鹿の湯」には露天風呂が設けられています。とはいえ四方を高い塀で囲まれているため景色を楽しむことはできず、それどころか塀の向こう側はバス通りであるため、通りを行き交う車の音が頻りに聞こえてきますが、内湯と同様にスノコ敷きであり、落ち着いた色調で統一され、ベンチも用意されているので、露天風呂として湯浴みを楽しむのはもちろん、内湯で火照った体をクールダウンさせる空間としても役に立ちます。なおこの露天ゾーンには打たせ湯も設けられているのですが、私の訪問時は使用が停止されていました。


 
露天の浴槽も総木造で、2人サイズの小ぢんまりとしたもの。黄色く染まった木の枡から短い樋を通じてお湯が注がれており、私の訪問時にはちょっと熱めの43~4℃でしたが、むしろこのくらいの熱さの方が外気の冷たさに対抗するにはちょうど良いかも。小さな浴槽に対してしっかりとした量が投入されており、私が湯船に入ると、まるで洪水が発生したかのように、勢いよく豪快に溢れ出てゆきました。

こちらに引かれているお湯は、温泉街の他旅館と同じく、鹿の湯と行人の湯の混合泉であり、明礬系の硫黄臭やフルーティ感を伴う収斂酸味、そして綺麗な白濁など、お湯のフィーリングは他のお宿のお湯とほぼ同様なのですが、源泉から離れている上、温泉街の中央にある分湯場から更に下流に位置しているためか、ここまで流下してくる間に角が取れてこなれており、酸味や苦みなど諸々の知覚的特徴、そして湯中における体への当たりが若干マイルドになっているような感を受けました。
内湯・露天ともに湯中では微細な白い湯の花が無数に浮遊して強い白濁を生み出しており、透明度は15cm程度で、光の入り方によって青白かったり灰白色になったりと、いろんな表情を見せてくれました。もちろん湯使いは完全かけながしです。

名湯「鹿の湯」はいつも混雑していますが、この「小鹿の湯」は比較的ゆとりがあり、湯屋としての雰囲気もよく、しかもお湯は本物ですから、混雑を避けたい場合はこちらを訪れてみるのも良いかもしれません。私は朝9:30頃に訪問したのですが、既に先客が2人いらっしゃり、後から更に2人入ってきて、朝から結構な賑わいを見せていました。おしゃべりの訛りから推測するに、みなさん地元の方のようでしたから、地元の方は混雑する「鹿の湯」を敬遠してこちらを利用するのかもしれません。


 
受付小屋では湯の花やミネラルウォーターなどとともに、その場で食べられる温泉卵が売られていました。私がお風呂から上がると、ちょうど受付のおばちゃんができたての卵を保温用の発泡スチロールの箱に入れていたところでしたので、その中のひとつを購入していただいてみることに。半熟なので、受付でもらう小さな紙コップに入れてから、お塩を振りかけていただきました。できたての温泉卵はとっても美味しかったですよ。


鹿の湯・行人の湯混合泉
単純酸性硫黄温泉(硫化水素型) 57.2℃ pH2.6 溶存物質0.843g/kg 成分総計0.899g/kg 
H+:2.5mg, Na+:28.5mg, Mg++:22.1mg, Al+++:7.6mg, Fe++:0.7mg,
Cl-:76.0mg, HSO4-31.3mg, SO4--:370.1mg,
H2SO4:0.2mg, H2SiO3:225.5mg, H2S:56.3mg,

那須塩原駅もしくは黒磯駅より東野交通の那須湯本方面行バスで「湯本一丁目」下車
栃木県那須郡那須町湯本77  地図
0287-76-2333

日帰り入浴9:00~21:00
400円
有料ロッカー(通常サイズは100円・大きなロッカーは200円)・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする