温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

平山温泉 湯の蔵

2015年12月11日 | 熊本県
 
九州各地に数ある温泉地の中でも近年人気を集めている平山温泉。その中でも人気のある「湯の蔵」で立ち寄り入浴してまいりました。


 
広い敷地内に宿泊棟や離れの貸切風呂などいくつかの建物に分かれていますが、日帰り入浴は本館大浴場を利用します。本棟にはお食事処「わらじ」も併設。玄関まわりでは昔噺のような世界観を演出すべく、水車が回り、モロコシが干されていました。


 
ロビーホールはいかにも当世風のシックな民芸調。黒川温泉のヒット以来、この手のデザインは、九州の各温泉地でどこでも見られるようになりましたね。たしかに良い雰囲気なんですけど、ちょっと食傷気味かな。でも居心地良いことには違いなく、室内は照度を落として落ち着いた空間がつくり出されており、高い天井の上からは大きな行灯が二つ吊られ、古民家にありそうな懐かしい調度品が飾り置かれていました。奥へ進むとお座敷や食事処「わらび」となります。


 
券売機で料金を支払い、券を受付に差し出します。浴室入口は受付の左側。もちろん男女別ですが、週替わりで男女が入れ替わるんだとか。


 
凝った民芸調のデザインだったホールと打って変わって、一応出入口には古い家具が置かれているものの、脱衣室は至って普通の実用的な空間で、特にグリーンのスチールロッカーは思いっきり艶消しかも。でもメンテナンスはよく行き届いており、大変綺麗で清潔感に溢れていました。


 

内湯は蔵や古民家などをイメージしたようなモダン和風の内装で、浴槽の上には大きな窓があるものの、明るすぎない落ち着いた環境が生み出されています。たしかに居心地は良いのですが、ロビーのホールといいこの内湯といい、いかにも流行に従順な空間デザイナーによる仕事という感が強く、初訪問なのに、どうしてもデジャヴ感をぬぐうことができません。
洗い場は出入口を挟んで2箇所に分かれており、計10基のシャワー付きカランが並んでいます。なおカランから出てくるお湯は源泉のお湯です。洗い場の向かい側にはサウナや水風呂があり、サウナではひっきりなしにお客さんが出入りしていました。どの温浴施設でもサウナは人気がありますね。
内湯の浴槽はとても大きく、目測で7m×3m弱といったところ。20人は余裕で同時に入れそうなキャパはあります。全体的に石板張りですが、縁には木材が用いられており、柔らかなイメージ作りに貢献していました。


 
主浴槽の左右に湯口が1つずつあり、直に触れるのがやっとというほど熱いお湯が注がれていました。ただ、浴槽のキャパシティに対してお湯の投入量は少ない気がします。熱いお湯だから、投入量を絞ることによって湯加減を調整しているのかな。お湯は木の縁から溢れ出ているほか、隣接する水風呂側に排水口があり、そこからも排湯されていました。また主浴槽の露天風呂側では泡風呂装置が稼働していました。


 
露天風呂は庭園の灌木に囲まれた緑豊かな環境。湯船は大小1つずつあり、両方とも岩風呂で底面は洗い出し仕上げですが、手前側の大きな槽には東屋が建てられており、奥の小さな槽は屋根なしです。大きな槽は浅い造りで、寝転ばないと肩まで浸かれず、しかもかなりぬるい湯加減となっていました。おそらく意図的にそのような構造と湯加減にしているのでしょう。横になって長湯してもらおうというコンセプトなのかな。一方、奥の小さな槽は深さも温度も一般的で、万人受けするお風呂です。



露天にも洗い場があるので、週末などの混雑時に内湯の洗い場が全て埋まっていたら、露天の洗い場を使えば良いのでしょう。


 
大小両浴槽とも竹の樋から熱いお湯が注がれているのですが、露天は外気の影響を受けやすく、槽内の上下で温度ムラが発生しやすいためか、槽内をよく見ると底面近くに細い塩ビ管がこっそりと突き出ており、そこからもお湯が供給されていました。特に大きな槽に関しては、槽の大きさに対して明らかに投入量が少なく、それゆえ上述のようにぬるい湯加減となっているのでしょう。


 
露天風呂に入った状態の視線はこんな感じ。庭の緑が美しく、お湯もぬるくて体への負担が少ないので、時を忘れていつまでも浸かっていたくなります。

さてお湯に関するインプレッションですが、見た目は無色透明で湯の花などは見られないものの、内湯に限れば湯疲れのためか、あるいはアルカリ性泉ならではの特性によるのか、潮汁のような青白い濁りが僅かに発生していました。その一方で露天風呂のお湯は靄や霞は一切なく、大変クリアな状態でした。
湯口ではタマゴ感(味と匂い)、そして若干遅れて苦味が感じられるのですが、このタマゴ臭は浴室に充満するようなことはなく、味や匂いに関してはおとなしい印象を受けました。でも湯船に浸かったときに肌から伝わってくるトロットロな感触は魅力的で、まるでローションの中へ飛び込んだかのように、全身がツルツルスベスベになりました。pH9.73という高アルカリの数値は九州屈指ではないでしょうか。この高いアルカリ性がトロットロな浴感をもたらしている一因でしょう。
館内において湯使いに関する具体的な案内は、「源泉100% 二十四時間掛け流しです」という文言以外は見当たらなかったのですが、湯口の温度から推測するに、おそらく加温した上で供給しているものと思われます。ただ、循環などが行われているような形跡は見られず、内湯・露天ともに放流式でしょう。

雰囲気もコンセプトもメンテナンスも良く、現代的なニーズに見事に合致しており、人気が高いのは十分に納得できます。その一方、肝心のお湯に関しては、掛け流しですしトロトロなフィーリングも非常に心地よいのですが、浴槽のキャパに対して投入量が足らず、背伸びしているような感を受けました。同じような大きさのお風呂がもうひとつ(女湯のこと)あり、しかも大浴場とは別に貸切の個室風呂もあるそうですから、毎分250L近い湧出量があっても、結局お湯が足りなくなっちゃうのかな。総じて申し上げれば、雰囲気重視の方にはもってこいの施設と言えそうです。ここは立ち寄り利用も良いのですが、宿泊してこそ宿の本当の心や真髄を味わうことができるのかもしれません。


アルカリ性単純硫黄温泉 42.1℃ pH9.73 242L/min(掘削揚湯・400m) 溶存物質295.5mg/kg 成分総計295.5mg/kg 
Na+:95.7mg(99.05mval%),
OH-:0.9mg, F-:13.4mg(15.88mval%), Cl-:43.6mg(27.52mval%), HS-:4.7mg, CO3--:51.0mg(38.03mval%),
H2SiO3:50.9mg,

熊本県山鹿市平山5255-2  地図
0968-43-4070
ホームページ

10:00~22:00 第2火曜定休
380円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★+0.5
コメント
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