温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

湯田中温泉 鷲の湯

2015年12月16日 | 長野県
 
前回記事の「滝の湯」からかえで通りを更に100mほど渋温泉側へ進んだ通り沿いにある「鷲の湯」にも立ち寄ってみました。古風な木造の湯屋建築であり、趣きある温泉風情を醸し出しています。通りに面したわかりやすい場所に「外湯開放日」の幕が下げられていました。


 

女湯の出入口の左側には、温泉のお湯が張られた洗濯場があり、その表にはお湯汲み場も設けられていました。温泉と生活が密着している当地の文化がよくわかるワンシーンです。今のように洗濯機が無い時代、一般的に真冬は冷たい水に耐えながら洗濯をしたわけですが、当地では温かいお湯で洗濯ができたのですから、これぞまさに自然の恵み。かつてこの地を訪れた人々は、温泉に恵まれた当地の生活を羨ましく思ったに違いありません。


 
洗濯場にお湯を供給するバルブには白い析出がビッシリと付着していました。その傍に掲示されている注意書きによれば、脱衣所にお湯が溢れるので絶対に締めないで、とのこと。ということは、ここのお湯は出しっぱなしなんですね。


 
湯屋の前には小林一茶の歌碑「三絃のはちで掃きやる霰哉」が建立されています。小林一茶は当地を度々訪れたんだそうですが、湯女を擁する旅籠から響く三味線の音を耳にし、賑やかで華やかな当時の湯田中を心弾む桃源郷のような別世界と捉え、その時の様子を表したのがこの句のようです。いまでこそ鄙びて静かな温泉街ですが、江戸時代はさぞ賑やかな歓楽地だったのでしょうね。
湯屋は通りに面していますが、男女の入口は湯屋の西側と東側に離れており、西側(湯田中駅側)は女湯、東側(渋温泉側)が男湯となっていました。


 

脱衣室にはスノコが敷かれ、腰掛けも用意され、「滝の湯」と遜色のない広さが確保されています。浴室との間にはガラスサッシがはめ込まれており、これによって開放感を確保するとともに、浴室と脱衣室の相互で見通しを良くすることで、防犯等の役割も果たしているのでしょう。壁に掛かっているホワイトボードは、地元民同士の連絡のやり取りや広報関係の掲示に用いられるのでしょうね。
室内には「湯口バルブ」と書かれたバルブがあったのですが、これで湯船への投入量を調整するのかな?



外観は風情ある総木造でしたが、浴室にはタイルが多用されており、共同浴場らしい実用本位の造りです。でもお湯が直接かからない側壁上部や天井などは木材がむき出しになっており、外観と同じ木造であることが確認できます。
床は灰色掛かった淡いブルー、側壁(床から立ち上がり1メートルほどまで)はグリーンのタイルが貼られていました。


 
女湯との仕切りは磨りガラスで、もしかしたら向こう側の影が薄ボンヤリと見えるかも。天井は高く、屋根には立派な湯気抜きが突き出ており、おかげで室内に湯気籠りは無く、クリアで見通しのよい環境が保たれていましたが、時折その湯気抜きから冷んやりとした空気が降りてくる時があり、その瞬間だけはちょっとした半露天風呂気分を味わうことができました。


 

洗い場に取り付けられているカランは水とお湯のペアが1組だけ。このお風呂には備え付けの桶が無いため、利用の際には桶の持参をお忘れ無く。壁には陶器の石鹸置きが4つ埋め込まれており、昭和の浴場らしい面影を残していました。


 
この浴場は湯口の形状が特徴的。まるでメトロノームのような縦に長いスタイルをしており、そのてっぺんでお湯が吐出され、表面を滴り落ちながら湯船へと注がれており、ほぼ垂直に近い流路は黒く染まり、そのまわりには白い析出が付着していました。湯口のてっぺんで噴き上がったばかりのお湯の温度は54.0℃という高温なのですが、このままでは当然入浴には適さないので、この高低差を落とすことによる自然冷却を狙っているのでしょう。とはいえ、それだけでは冷却が足らないので、投入量を絞ることによっても湯加減の調整を図っていました。


 
浴槽の寸法は大体1.5m×2.5mの長方形で、3~4人サイズ。浴槽の底面は洗い場の床と同じタイルが貼られていますが、槽の縁には緑色凝灰岩が用いられており、湯船に入って背中からもたれかかると、優しい肌触りが伝わってきます。
上述のようにお湯の投入量は絞り気味ですが、それでも縁から洗い場へしっかりとお湯が溢れ出ており、文句なしの放流式であることがわかります。投入量がうまい具合に調整されているおかげで、激熱な他の共同浴場と異なり、こちらの湯船の温度は43.2℃という入りやすい温度にキープされており、加水など一切せずそのままの状態で入ることができました。こちらの浴場に引かれているお湯は、前回記事の「滝の湯」や前々回の「白樺の湯」、そして周辺の各旅館と同じく「共益会12号ボーリング源泉」。私の利用時には無色透明なお湯の中に茶色いおが屑のような浮遊物がチラホラと舞っており、湯口のお湯を口にしてみますとほんのりとした塩味とともに、砂消しゴムのような硫黄感が伝わってきました。こちらの浴場では加水が無い(もしくは少ない)分、他の浴場よりもお湯の個性が残っているように感じられ、湯船に入った際に肌へ伝わる浴感も、食塩泉的なツルスベ感がハッキリしており、なめらかで且つシットリとしたフィーリングにより、いかにも温泉らしい心地良さが楽しめました。



共益会12号ボーリング
ナトリウム-塩化物温泉 96.2℃ pH8.2 100L/min(掘削自噴) 溶存物質1.986g/lg 成分総計1.986g/kg
Na+:453.4mg(77.07mval%), Ca++:74.6mg(14.55mval%),
Cl-:741.8mg(79.63mval%), Br-:3.6mg, I-:1.0mg, HS-:1.1mg, S2O3--:0.7mg, SO4--:200.6mg(15.89mval%), HCO3-:40.5mg,
H2SiO3:263.3mg, HBO2:115.4mg,

長野電鉄・湯田中駅より徒歩4分(約300m)
長野県下高井郡山ノ内町平穏3193  地図

毎月26日の9:00~15:00のみ外来者利用可能(「外湯開放中」の幕が下がっている時間のみ)
外湯開放時は無料で利用可能
備品類なし

私の好み:★★+0.5

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする