前回記事に引き続き、熊本県の合志川流域に湧く温泉をハシゴします。合志市・菊池市・熊本市北区の3自治体が境界を接する付近には温泉施設がたくさん点在していますが、今回訪れるのは合志市に位置する「湯の屋台村」です。十字路の角にある「味の屋台村」という食堂の付帯施設であり、「馬丼」と書かれた背の高い看板が目印です。
温泉施設には一般的な公衆浴場の他、家族風呂もあるみたいですが、今回は利用しておりません。
ものすごく手作り感溢れる佇まい、言い換えればB級感が強い外観に少々おののきながらも、仏閣の層楼みたいなファサードの入口から中に入ると、雑然とした雰囲気の中に温泉受付と思しきカウンターが設けられていました。しかし誰もいない。ここは無人施設なのかと早合点しそうになった頃、隣の食堂側からおばちゃんがやってきて対応してくださいました。
脱衣室の内装は継ぎ接ぎだらけで、外観以上のB級感、いやC級感とでも表現したくなるような独特且つ雑然とした雰囲気です。しかもスピーカーからは演歌が流れており、室内の至るところに手書きのメッセージが貼り出されていて、怪しさを余計に増長していました。恋愛と同じようなもので、自分の意見を伝えようとすればするほど、相手はその勢いに気圧(けお)されてどんどん引いてゆくものですが、この室内に横溢するメッセージ量やその情熱に、私は腰が引けそうになって「おいおい、ここ大丈夫か」と不安に陥ってしまいました。ここを初めて訪れる客は私と同じような経験をなさったことでしょうね。このように、客に対するメッセージを多くしてしまう現象は、全国のB級施設で共通してみられる特徴です。
浴室入口のドアにはくまモンが貼られていました。ちゃんとくまモンの切り抜きが貼られ、各文言の語尾は「~もん」で締めているのに、実際に書かれている手書きの字のおかげで、かわいらしいくまモン感がまるで無いのが面白いところ。手書きの字のパワーは恐ろしいものですね。
お風呂は内湯のみです。浴室内は床も浴槽も鉄平石貼り。空間の真ん中にブーツのような形状をした大きな浴槽がひとつ据えられ、手前側に洗い場が、そして右の奥に大きな岩がいくつか置かれた中庭のようなスペースが設けられています。その庭のような空間には、特に副浴槽などがあるわけでもなく、腰掛けられるような岩があるわけでもなく、単に大きな岩が置かれているだけのデッドスペースであり、石庭をイメージしているのかもしれませんが、迂闊に岩に触ると土埃みたいなものが手について汚らしく、一体何のために設けているのか、よくわかりません(空即是色みたいな哲学やメッセージが込められているのかな)。この石庭ゾーンの窓から外を眺めると、のどかな田園風景が広がっていました。
洗い場にはシャワー付きカランがL字型に6基並んでいます。シャワーから出てくるお湯は源泉ですが、その吐出圧力はちょっと弱め。ボディーソープ類の備え付けはありませんが、その代わり固形石鹸が置かれていました。手洗い場ならともかく、全身を洗うこうした場所で、赤の他人が使った固形石鹸を使うことに、私は少々抵抗感を覚えるのですが、これって私だけでしょうか(ボディーソープ類は持参していますので、自分のものを使いました)。
石灯篭が傍に置かれた湯口の上には、スチレンカッターで切り抜かれた発泡スチロールの上にピンクの蛍光塗料が塗られた温泉マークと「美肌の湯」の4文字が躍っていました。これもお手製なのでしょうけど、ほとんど中学高校の学園祭レベルの出来です。浴槽の大きさに対して吐出量はまずまず。湯口に置かれているコップでお湯を飲んでみますと、甘塩味と重曹系のほろ苦み、重炭酸土類泉系の味、そして鉄錆系の金気味が感じられ、ほんのりと金気臭が香ってきました。
浴槽に張られたお湯はごく薄い赤褐色を帯びた笹濁りで、湯中では細かな気泡が無数に漂っており、入浴するとその気泡が全身に薄っすらと付着します。館内には多くのメッセージで溢れているにもかかわらず、湯使いに関する説明は見当たらなかったのですが、浴槽の切り欠けから絶え間なくお湯が溢れ出ており、槽内に吸引や供給を行うような穴は見当たらなかったので、おそらく放流式かと思われます。浴室内に掲示されている分析書には源泉の湧出温度が記載されていないので、加温や加水の有無に関しては何とも言えません。重曹メインのお湯ゆえか、ツルツルスベスベの浴感がはっきりしており、滑らかなフィーリングはとっても気持ちよく、湯上がりもサッパリ爽快。施設としては怪しさ満載ですが、お湯はなかなか良質でした。わずか200円で掛け流し(と思しき)の重曹泉に入れ、しかもその怪しさゆえか、近隣の他温泉より空いているため、穴場的な浴場と言えるかもしれません。
訪れたのはお昼頃。風呂上がりに腹が減ったので、お隣の食堂に移ってランチをとることに。
メニューにはいろんな品名が並んでいましたが・・・
お店の看板メニューである馬丼(500円)を注文しました。なお、お冷は温泉水を冷やしたものなんだとか。
馬肉の甘露煮みたいなものと野菜の天ぷら、ネギの炒め物など汁に浸してから丼の上に載っけたようなもの。500円という安さに不安を抱いていましたが、ボリュームも味もまずまず。しっかり食べられてワンコインですから、ありがたいものです。でも結構濃い味付けだったために喉が渇き、お冷が進みました。
ナトリウム-炭酸水素塩温泉 湧出温度およびpH不明(未記載) 溶存物質2483mg/kg 成分総計2483mg/kg
Na+:663.0mg(96.94mval%),
Cl-:203.8mg(9.13mval%), HCO3-:1464mg(79.87mval%),
H2SiO3:44.9mg, HBO2:83.5mg,
熊本県合志市野々島502 地図
096-242-6833
11:00~20:00
200円
ロッカー(100円リターン式)・石鹸・ドライヤーあり
私の好み:★★