前回記事の「亀の甲温泉」を出た後は、界隈で最も大きな温泉地である植木温泉へ向かうことにしました。と言っても、当初はここへ立ち寄る予定がなかったので、残念ながらスケジュール的に立ち寄れるのは1軒だけ。多くの施設がある中で今回選んだのは、川沿いに位置する和風の宿「旅館平山」です。土手上の道には「立ち寄り湯やってます」の幟が立っており、日帰り入浴も積極的に受け入れています。
帳場で入浴をお願いしますと快く受け入れてくださいました。和の趣きたっぷりの館内を進んで浴室へ。
さすが旅館だけあって、お手入れが行き届いている脱衣室は清潔感がみなぎっており、ドライヤーや扇風機などの備え付けもあり、空間的にも余裕があるのでとても快適です。籐のカゴも使えますし、ロッカー(100円玉リターン式)も利用可能です。
天井が高くて大きな窓から外光がたっぷりと差し込む浴室は、明るく開放的な環境です。室内は深紅系や赤御影石など暖色系の石板タイルが多用されているのですが、浴槽だけはスカイブルーのタイル張りであるため、浴槽の存在感が際立っていました。浴槽上の壁面には、種田山頭火の句とその内容を描いた磁器の絵が埋め込まれていたのですが、当地と何か関係があるのでしょうか。
洗い場は2箇所に分かれて配置されており、計7基のシャワー付きカランが取り付けられていました。
大きな窓に面している内湯の浴槽は、目測で2m弱×5mの四角形、大体7~8人サイズでしょうか。隅っこの湯口からお湯がふんだんに投入されており、縁の全辺からなみなみと惜しげも無く溢れ出て、床にも絶え間無く波紋を描いていました。湯船は丁度良い湯加減で、しかも全身に伝わって来るお湯の鮮度感も抜群です。
露天風呂は日本庭園風の趣きです。周囲には目隠しの塀や庭木が植えられているため、外の景色こそ眺められませんが、幸いにしてこの日は天気に恵まれていたため、青い空と木々の若葉がとても美しく、その色彩美を眺めているだけでも十分に心が癒されました。露天のお風呂は岩風呂で、大体3人サイズの小ぢんまりとしたものです。
最奧の湯口から注がれたお湯は、岩風呂を満たした後、縁に並ぶ岩の隙間からしっかりと溢れ出ていました。
お湯はほぼ無色透明であり、露天風呂では紛うことなき完全な無色透明なのですが、内湯ではタイルの色の影響なのか、薄っすらと黄色みを帯びてるように見えました。内湯の湯口に置かれているコップで飲泉してみますと、ゆで卵の卵黄のような味と匂いがはっきりと感じられ、それに重曹味が加わり、若干遅れて喉の奧の粘膜に苦味が残りました。
ここのお湯で特筆すべきは、ウナギ湯と称したくなるほどのヌルヌルを伴う、滑らかでトロミのある浴感です。湯船の中ではまるでローションに浸かっているかのようなツルツルスベスベ感が強く得られ、その滑らかな感覚が非常に心地よく、湯中では何度も自分の肌をさすってしまいました。また、あまりの気持ち良さのために、いつまでも浸かっていたくなり、湯船から出ることに後ろ髪を引かれてしまいました。pH8.67というアルカリ性に傾いていること、単純温泉でありながら重曹が主成分であること、そして炭酸イオンが多いことなどが、こうした浴感をもたらしているものと思われます。まさに美肌の湯であり、湯上がりの爽快感も抜群です。
和風旅館としての全体的な佇まいが落ち着いた居心地を与えてくれるばかりでなく、お湯の投入量が多いため鮮度感は良好ですし、男でも自分の肌にウットリしてしまうほどの滑らかな浴感にも感激。また再訪したくなる、実に素晴らしいお風呂でした。
植木温泉(北区植木町米塚字向田185-4)
単純硫黄温泉 46.6℃ 111L/min pH8.67 溶存物質889.7mg/kg 成分総計889.7mg/kg
Na+:251.6mg(97.97mval%), NH4+:0.5mg, Ca++:1.5mg,
F-:21.3mg, Cl-:91.9mg(22.04mval%), Br-:0.3mg, HS-:2.1mg, HCO3-:400.6mg(55.79mval%), CO3--:37.8mg(10.70mval%),
H2SiO3:52.1mg, HBO2:19.1mg,
熊本県熊本市北区植木町米塚178 地図
096-274-7111
ホームページ
日帰り入浴時間不明
500円
ロッカー(100円リターン式)・シャンプー類・ドライヤーあり
私の好み:★★★