温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

辰頭温泉

2015年12月04日 | 熊本県
●有明フェリーで雲仙から熊本県へ
 
雲仙温泉を堪能した翌朝は、国道389号線を北上して山を下り、島原半島の北で有明海に突き出ている多比良港へと向かいました。ここから「有明フェリー」に乗って有明海を横断し、熊本県の長州港へと渡るのです。
乗船手続きはとっても簡単。乗り場兼駐車場の入り口に立つ、ドライブスルーのような窓口に直接乗り付け、車に乗ったまま料金を支払えばOKです。しかもその料金も安く、私が乗っていたレンタカー(トヨタのパッソ)の場合は、車と旅客1名で2,020円でした。平日の午前中だからかお客さんも少なく、予約なしでも余裕で乗船券を購入できました。


 
乗船時刻までまだ余裕があったので、車から降りて多比良港のターミナルビルを簡単に散策です。島原半島にもかかわらず、対岸の福岡県にあるイオン大牟田の広告が立っているところに、この施設ならではの特徴が表れていますね。「有明フェリー」の航路は国道389号線の一部区間(海上区間)をなしており、車専用切符売り場の前には国道の標識が立っていました。


 
ターミナル内には小さな食堂やお土産を扱う売店、そしてこれまで就航してきた船舶の模型や写真を展示する解説コーナーなどが設けられており、建物としてはさほど大きくないものの、多少の時間を潰すには丁度良い具合の規模がありました。なお土産コーナーで大量に積み上げられている黄色い箱は、長崎名物のカステラです。


 
ターミナル内をひと回りしているうちに乗船時刻となりましたので、車を動かして船内へと移動します。今回乗り込んだ船は、この航路では2番目に新しい船である「有明みらい」号。就航したのは2012年ですから、働き始めてからまだ3年しか経っていないんですね。なお最も新しいのは2014年就航の「有明きぼう号」です。


 
旅客定員は450名。まだ3年目の若造だけあり、船内には新しさがまだしっかりと残っています。多くの人員を受け入れるため、船内は合成皮革のシートがズラリと並んでおり、座席数も膨大なのですが、この便はガラガラで、輸送能力を思いっきり持て余していました。


 
朝には霧がかかっていた雲仙も、日が高く上がるにつれて視界が晴れ、やがて山裾が姿を見せるようになりました。
雲仙よ、さらば。「有明みらい」号は定刻通りに出航し、雲仙の山々を背中にしながら、泥海を東へ進んでゆきます。



この航路は14kmという短距離であり、乗船時間はたった45分。雲仙の山並みがまだ甲板からはっきりと眺められる時点で、もう熊本県側の岸が目に入ってきました。あっという間に長州港へ到着です。


 
上画像の船が、私を運んでくれた「有明みらい」号です。


●辰頭温泉
 
さて本題へ。
長州港に上陸した私は、そのまま車を走らせ、この日の第一目的地である菊池市の辰頭温泉へと向かいました。
こちらの浴場は、泉質の良さが多くのお客さんを寄せ付けている地元でも評判の温泉であり、いつ訪れても混雑しているため、比較的空いている昼前の時間帯を狙うべく、長州港に上陸した後にこちらへ直接向かったのでした。
私が訪れたのは今年(2015年)の4月下旬なのですが、正面玄関の前には青い看板が立てられており、今年の3月1日を以って、浴場の経営が従来の経営者からガソリンスタンドを経営する法人へ変わったという旨が告知されていました。


 
玄関と駐車場の間には藤棚が設けられ、7~8分咲きの花が辺りに芳香を放っていました。この藤棚の傍には真新しい大きな黒い円筒形の設備が立っているのですが、これは源泉の可燃性ガスを抜くための設備かと思われます。ちょうど藤棚の下で常連さんが寛いでいらっしゃったので、この人たちにお話しを伺ったところ、以前から県が温泉に対してガス抜き設備を設けるように指導していたが、以前のオーナーさんは資金的に厳しかった。しかしこの度のオーナー変更に伴い、県が営業許可を下ろす条件として、新オーナーにこの設備の設置を求めたんだとか。あくまで常連さんの噂レベルの話ですから、信憑性は疑わしいのですが、でも真実に近いものがあると思われます。


 
玄関を入った先にある券売機で料金を支払い、入浴券を番台に差し出して浴室へと向かいます。玄関の左手では地場の農産物が販売されており、その反対の右側にはフローリング床に畳表の腰掛が置かれた休憩ゾーンが設けられています。


 
休憩ゾーンを横に見ながら館内の奥へ進み、暖簾をくぐって脱衣室へ。脱衣室は典型的な公衆浴場そのもの。室内では扇風機がグルグル回っていました。男湯の場合は左側に棚が並んでおり、積み上げられている籠を各々で取って、好みの棚に収めて使います。


 
脱衣室にも経営母体が変わった旨を知らせる張り紙が掲示されており、またこれに伴う回数券取り扱いの変更に関しても告知がなされていました。どうやらこの度のオーナー変更は急なことだったようですね。


 
白い壁のタイルと、赤茶けた床のコントラストが印象的な浴室。壁に沿ってL字形に洗い場が配置され、シャワー付きカランが8基並んでおり、他に立って使うシャワーも1基取り付けられています。カランから出てくるお湯は源泉です。なおボディーソープ等の備え付けはありませんが、番台では各種入浴グッズが販売されていますので、もし手ぶらで訪問したならば、番台で買って一式揃えましょう。

内湯の浴槽は目測で5m×4mの四角形ですが、真ん中の仕切りで2等分されており、湯口のある右側槽から湯尻にあたる左側槽へとお湯が流れ、左側槽から洗い場の床へ大量に溢れ出していました。このような造りの浴槽ですと、湯口がある右側槽の方が左側槽に比べて熱くなるのが常ですが、大量投入により素早くお湯が流れ去ってゆくためか、左右で湯加減に大きな差はなく、右側槽の方が若干高いかなという程度で、両方共42~3℃の湯加減となっていました。
温泉成分の付着により全体的に赤茶けた浴槽とともに、この内湯で思わず目を奪われてしまうのが、大量の泡で薄っすらと白濁を呈している右側槽です。湯口周りはもちろん、そこから離れた場所でも気泡が白い渦を巻いていました。


 
獅子の湯口からはドバドバと怒濤の如く大量のお湯が吐き出されており、その勢いが湯中の泡立ちをより増しているようでした。このアワアワな湯船の中に浸かってみますと、案の定、全身は泡だらけ。その様子を撮ったものが右(下)画像です。私のようなアワアワ湯が好きな人間にとっては、興奮が止まらない超エキサイティングなお湯ですが、気泡が好きなのはマニアだけでなく地元の常連さんも同じであり、湯あみ客はこの湯口まわりに集まる傾向があるように見受けられました。


 
この浴場は泡付きの激しさもさることながら、わずか300円の湯銭で露天風呂にも入れちゃうというコストパフォーマンスの良さも嬉しいところ。周囲は目隠しの塀で囲まれているため、景色を眺めることはできませんが、そこそこのスペースが確保されていますので、それなりの開放感が得られます。
塀には「温泉入浴の注意事項」が掲示されており、そこで箇条書きされている内容のほとんどは他所でも見られるような一般的なものなのですが、一番上の項目にはちょっとビックリ。というのも、「風呂に入る前に、お尻・チン●ンは必ず洗ってから入ってください」(一部伏字)と思いっきりストレートな表現で記されているのです。これって田舎らしいおおらかさの表れなのかな。


 
露天風呂では石組みの上から樋を通じてお湯が投入されており、湯量が豊富である上、高低差があるため、ここを打たせ湯代わりにしているお客さんも見られました。内湯はタイル張りでしたが、露天風呂は岩風呂で、こちらも全体的に赤茶けています。かなり大きいので、脚を思いっきり伸ばしても他のお客さんに迷惑が及ぶようなことはありません。


 
投入量が多いので、露天風呂の槽内ではちょっとした流れができており、ステップの踏込から豪快に溢れ出ていました。文句無しの完全掛け流しです。



露天風呂では内湯ほどのはっきりとした白濁は見られませんでしたが、それでも湯口まわりでは気泡によってボンヤリと白く霞んでおり、湯面ではパチパチと気泡が弾けていました。上画像は露天における泡付きの様子を撮ったものです。湯船に浸かるや否や全身が泡だらけになるんですから、その夥しい気泡の付着に興奮が鎮まることがなく、気泡に負けないくらい、私の体内では大量のアドレナリンが分泌され続けました。

お湯は淡い黄褐色を帯びる貝汁濁り。鉄錆系の金気臭がプンプン漂っている他、お煎餅のような香ばしい匂いもあり、弱いタマゴ臭や有機肥料のような匂いも感じられました。お湯を口に含むと甘い塩味、鉄錆系の金気味、清涼感のある重曹味、そして土気を思わせる味が混在して舌に伝わってきました。金気を含むお湯なのでキシキシと引っかかる浴感が強いのかと思いきや、湯中に漂う無数のアワアワおよび重曹の効果が強く、ツルンツルン&スベスベの非常に滑らかなフィーリングが心地よく、重曹によるクレンジング効果によって、お湯から上がってもスベスベ感が持続するばかりか、爽快なサッパリ感も得られました。しかも塩気のお陰で程よく温まるのに、粗熱の抜けが良く、変な汗をかくことはありませんでした。一度入ったことのある人なら誰しもが虜になってしまう、極上のお湯であります。


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物温泉 43.8℃ pH7.81 溶存物質2725.6mg/kg 成分総計2745.6mg/kg
Na+:725.9mg(94.30mval%), NH4+:4.4mg, Mg++:7.1mg, Fe++:1.0mg,
Cl-:333.2mg(27.25mval%), I-:0.2mg, Br-:1.2mg, HS-:0.8mg, HCO3-:1513.3mg(71.90mval%),
H2SiO3:62.4mg, HBO2:38.2mg, CO2:19.8mg, H2S:0.2mg,
(昭和60年2月4日)

熊本県菊池市泗水町田島620-1  地図
0968-38-3190

6:00~22:00
300円
ロッカーあり、石鹸類など販売あり

私の好み:★★★


コメント (6)
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