温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

穂波温泉 つるや旅館

2015年12月27日 | 長野県
 
湯田中・渋温泉郷は複数の温泉地によって形成されていますが、角間川の左岸にある穂波温泉もこの温泉郷を構成する温泉地のひとつ。当地の共同浴場は地元民(組合員)でないと利用できないため、共同浴場「穂波元湯」の斜前、角間川の土手下に位置している「つるや旅館」で日帰り入浴することにしました。川に面して大きく屋号の看板が掲出されているため、対岸の湯田中温泉側からもその存在を見ることができるかと思います。いかにも昭和の旅館らしい草臥れかけた渋い外観を仰ぎ見て、幾許かの不安を抱きながら玄関の戸を開けて中にお邪魔し、ダメ元で日帰り入浴をお願いしたところ、お宿のご夫婦が快く受け入れてくださいました。


 
ロビーやホールなども昭和50年代から時が止まったかのような味わい深い佇まい。このホールに面して男女別浴室の入り口がありますので、暖簾をくぐって浴室へと進みます。


 
奥に向かって細くなっている造りの脱衣室には、余計な装飾などの無く、実用的で年季を重ねている室内には、そこはかとない昭和の時代感が漂っているのですが、洗面台は3台あり、ドライヤーも備え付けられていますので、使い勝手に問題はありません。なお脱衣室内にロッカーは無いため、貴重品を所持している場合は、帳場で預かってもらいましょう。


 
正直な心境を告白しますと、渋い外観を目にした時「きっと浴室も老朽化が進んでボロいんだろうな」と勝手にネガティヴな予想を立ててしまったのですが、実際に浴室へ入ってみますと、室内は広くて明るく、古いながらもきちんと手入れが行き届いて綺麗に維持されており、良い意味で私の予想を180度覆してくれる快適な入浴空間となっていました。人は見た目で判断してはいけないと言いますが、温泉にも同様のことが言えそうです。安直に外観で判断してごめんなさい。
浴室は八角堂のような造りで、その中央に大きな浴槽が据えられ、八角形の周縁に洗い場が配置されています。タイル張りの壁には、鶴と思しきシンメトリの紋様が描かれていました。お宿の屋号から推測するに、家紋か何かでしょうか。


 
八角形の8辺のうち3辺は洗い場となっており、1辺につき2基のカランが取り付けられ、計6基のカランが並んでいました(うち5基はシャワー付きです)。なおカランから出てくるお湯は源泉です。湯量が豊富なんですね。洗い場の片隅には桶や腰掛けが整然と積み上げられており、温泉を大切にするお宿としての矜持がそこに表れているようでした。


 
浴室が八角形ならば、浴槽も八角形。縁はベージュ、槽内は水色の総タイル張りです。浴槽の中央にタワーが立ち上がっており、そのてっぺんからお湯がふんだんに注がれています。源泉温度が高いために加水されていますが、加温循環消毒は行われておらず、湯船には無色透明で大変クリアなお湯が湛えられていました。


 
お湯は純然たる放流式。常時浴槽の縁から溢れ出ている他、底面に開けられた小さな穴に接続されたオーバーフロー管からも排湯されており、オーバーフロー管へ流れたお湯は、洗い場の脇から排水溝へと落とされていました。そればかりか、私が湯船に浸かると、室内に音を響かせながらお湯が豪快に溢れ出てゆきました。加水されているもののお湯の投入量は豊富であり、湯船に入った瞬間に肌へ伝わるフレッシュ感は、言葉に表現できないほど極上でした。


 
 
内湯からドアを開けて屋外に出ると、日本庭園風の中庭に石造りの露天風呂がありました。湯船の上には東屋が掛けられているので、雨や雪の日でも湯浴みを楽しめるかと思います。この露天にも簡易な脱衣スペースと洗い場が設けられており、その奥には出入口もあるので、内湯を経由せずに露天へ直行できる構造になっているのかもしれませんね。
露天風呂の浴槽はおおよそ3人サイズで、お湯は筧から注がれており、普段はオーバーフロー管から排湯され、人が入ると縁の上を乗り越えて溢れ出てゆくお湯の流れもあります。

内湯・露天風呂ともに(私の体感で)43℃前後に調整されており、大変クリアなお湯は鮮度感が良好で、特に内湯でその傾向が顕著です。湯中には湯の花など一切なく、綺麗に澄みきっています。お湯を口に含んでみますと、薄い塩味が感じられた他、ごく僅かに砂消しゴムのような硫黄感も得られました。お湯に浸かるとツルスベ浴感がしっかりと伝わり、湯船から上がった後もスベスベ感とともに、しっとりとした潤いを伴うモチモチ感も持続し、まるで化粧水を塗ったかのような質感を味わうことができます。それでいて食塩泉らしい温もりも同時並行で持続しますから、このお湯のクオリティにはお世辞抜きで感激しちゃいました。
とにかく湯船に入った瞬間に全身を走る鮮度感の良さは秀逸。しかも浴感の良さが後を引くので、湯船から出ようと思ってもなかなか出られず、良い意味で困ってしまいました。お風呂も綺麗でお湯も極上。とても気に入りました。なお男湯と女湯は時間によって入れ替わるんだそうですから、宿泊すれば両方の浴室を楽しめますね。しかも貸切の浴室と露天もあるんだそうですから、次回は是非宿泊してお宿の魅力を堪能したいものです。


第2・第4混合(穂波温泉旅館事業協同組合)
ナトリウム-塩化物温泉 85.2℃ pH8.0 溶存物質1.50g/lg 成分総計1.51g/kg
Na+:371.2mg(80.23mval%), Ca++:55.3mg(13.71mval%),
Cl-:576.1mg(79.66mval%), SO4--:154.9mg(15.83mval%), HCO3-:48.8mg(3.92mval%),
H2SiO3:174.8mg, HBO2:73.7mg,
(2013年5月27日)
加水あり(源泉温度が高いため)

長野電鉄・湯田中駅より徒歩10分(約800m)
長野県下高井郡山ノ内町大字佐野2594  地図
0269-33-4561
ホームページ

日帰り入浴時間不明
500円
シャンプー類・ドライヤーあり、貴重品は帳場預かり

私の好み:★★★

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする