温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

川内高城温泉 竹屋旅館

2016年02月07日 | 鹿児島県
 
西郷さんゆかりの薩摩川内市・川内高城(せんだいたき)温泉は、湯治宿が主体となって構成されている今時どき珍しい温泉地であり、山間の細い道に沿って鄙びた宿が軒を連ねる光景を目にすると、まるで昭和30年代へタイムスリップしたかのような錯覚に陥ります。当地を訪れた私は、湯治宿のひとつである「竹屋旅館」で一泊お世話になることにしました。昔のままの姿を残す宿が多い当地にあって、この「竹屋旅館」は2014年に外装や1階館内などを中心にリニューアル工事を実施しており、表通りから見る建物の姿は、湯治宿という言葉を聞いて思い浮かべる鄙びた風情とは一線を画す、現代和風の落ち着いた佇まいです。


 
この温泉街はとにかくニャンコが多く。私が宿の玄関を訪おうとした際も、玄関前のステップで昼寝をしていた人懐っこい三毛猫が、こちらへ近づき体をすり寄せてきました。温泉街にはニャンコが似合いますね。


 
 
リニューアルされた1階内部は、湯治宿とは思えない現代的な内装でまとめられており、館内を案内してくださったご主人に思わず「意外にも綺麗でビックリしちゃいました」と思わず口にしてしまいました。床は板敷きではなくフローリング。キッチンにはカウンターもあり、焼酎などの瓶も並べられています。また元々客室だった部分の一部は食堂に改造され、お昼には食堂としての営業もはじめたそうです。


 
今回通された客室は2階の4畳半。全面リニューアルされた1階とは異なり、客室が並ぶ2階は最低限の改修にとどめたようですが、それでも室内にはエアコンやテレビ、そして流し台が設けられており、予め電話でお願いしておけば炊飯器もお部屋に用意してくださいます(上画像で流し台の左側に写っていますね)。私が訪れた日はまだ肌寒かったのですが、コタツがセッティングされていましたので、エアコンを運転させることなく一晩を過ごすことができました。素泊まりのみの湯治宿ですからお食事は自分で手配することになりますが、1泊3500円でこの設備の客室に泊まれ、しかも掛け流しの温泉に入れるのですから、下手にビジネスホテルに泊まるよりもはるかにリーズナブルですね。こちらのお宿では、実際にビジネス利用も多いんだとか。


 
客室の扉や共用の洗面台と並んで洗濯機が姿を覗かせている2階の廊下は、昔ながらの湯治宿そのもの。この廊下には自炊用の台所も並んでおり、冷蔵庫や新しい電子レンジも使えます。



僭越ながら自作の夕食をご紹介。できるだけ地元産の食材にこだわってみました。お刺身は阿久根のアジと長島の養殖ブリ、スーパーの惣菜コーナーで買ってきた鹿児島産キビナゴとアオサの天婦羅、そして筑前煮です。お米だけは地元産ではなく自宅から持参した宮城県産「ひとめぼれ」なのですが、これを3合炊いて、この晩のみならず翌日の朝食、そしておにぎりにしてお昼にもいただきました。
なお温泉地内には食材を調達できるような店が無いため、事前に川内市内のスーパーマーケット等で買い込んでおく必要があります。また当地には食事をできるようなお店もありませんので、もし自炊ではなく外食したい場合(あるいはコンビニ弁当で済ませたい場合)は、車で川内市内まで出かける必要があります(車で片道約20分)。


●浴室
 
川内高城温泉の各湯治宿には内風呂が設けられています。今回の宿泊では夕食後と朝の起床直後の計2回、宿の内風呂で湯浴みさせていただきました。なお、こちらのお宿の場合は夜通し利用できるわけではなく、入浴時間は6:00~20:30となっており、20:30からは清掃のためお湯が抜かれてしまいます。1階の廊下を折れて、ステップを下って男女別の内湯へ。


 
脱衣室は塗装されたモルタルの壁に棚が括り付けられているだけという、至ってシンプルな造りです。


 
浴室内は随所に建物の古さが滲み出ていますが、清掃が行き届いていており、1泊で諭吉先生が飛んでゆくレベルの立派な旅館並みに清潔感が漲っていました。とても湯治宿だとは思えません。ご主人に伺ったところ、業者に委託して毎晩掃除してもらっているんだそうです。浴槽をはじめとして足元やお湯がかかりやすい低い部位はタイル張りですが、壁上部などはモルタル塗りです。古いお風呂だからかシャワーなどの設備は無く、水道の蛇口が1つあるばかりですから、掛け湯などは桶で湯船のお湯を直接汲むことになります。


 
綺麗なコバルトブルーの豆タイルで覆われた浴槽は、槽内の仕切りで2分割されており、湯口がある奥側は2人サイズ、そこからお湯を受けている脱衣室側は3人となっていました。仕切りの上部に小さな切り欠けがあるほか、下部には2つのスリーブもあり、これらによって湯口側の小さな槽から脱衣室側の大きな槽へお湯が流れる仕組みになっています。湯口がある小さな方は若干熱いのですが、その熱さのおかげで心身がシャキッとしますし、一方の大きな方は適度な湯加減ですから、どなたでもじっくりと寛ぐことができるかと思います。


 
お湯は無色透明で清らかに澄んでおり、見つめているだけで心まで浄化されそうです。夕食後に入浴した際には、湯面に気泡の塊が浮いており、湯尻へとゆっくり流れてゆきました。お湯は文句なしの完全かけ流し。浴槽縁の赤い御影石の上から常時オーバーフローしていますが、私が湯船に入ると、浴室全体がまるで洪水を起こしたかのように、豪快にザバーッと溢れ出てゆきました。お湯が勢いよく大量に溢れ出る瞬間って、えも言われぬ贅沢感を楽しめますよね。


 
湯口の根元にはバルブがついており、これで投入量を適宜調整することが可能です。湯口にステンレスの柄杓が置かれていましたので、これでテイスティングしてみますと、ちょっぴりビターなタマゴ味が感じられ、湯面からはタマゴ臭がふんわりと香ってきました。そしてアルカリ性泉ならではのツルツルスベスベとした滑らかな浴感も存分に楽しむことができました。

かつて川内高城温泉では各宿で源泉を所有していましたが、新たな源泉を見つけようとボーリングをしたところ、各宿が所有している源泉の吐出圧力等が低下してしまったため、現在では温泉地内に2箇所ある源泉からお湯を集め、神社の上にある貯湯槽にストックしてから、各宿へ配湯しているんだそうです。このため、一部の例外を除き、どの宿(施設)でお風呂に入っても同じお湯になります。しかしながら、投入量や湯使いなどによって、若干質感が異なるのが温泉の面白いところであり、次回記事以降で当温泉地の他施設に関しても触れさせていただきますが、あくまで私個人の感想として、他施設よりも若干ながら、こちらのお風呂の方がタマゴ感が明瞭だったように思います。
毎日浴槽を清掃しているためお風呂は綺麗ですし、その清潔な浴槽へ惜しげも無くお湯がかけ流されているため、お湯の鮮度感も抜群。ちょっと熱めですが、澄み切った極上のお湯に浸かることで、この上なく爽快な湯浴みを堪能させていただきました。

ちなみにご主人は元鹿児島県職員だったそうで、地元の観光振興に大変ご熱心。一泊というわずかな時間でしたが、地元の観光などに関するいろんなお話を伺え、かつアットホームで心温まるご配慮もくださり、実に有意義で楽しい時間を過ごすことができました。湯治宿というと、鄙びすぎて不便でちょっと縁遠いかな、と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、そんな方にもおすすめできるお宿かと思います。


川内3・19号
単純硫黄温泉 52.1℃ pH9.2 溶存物質264.8mg/kg 成分総計264.9mg/kg
Na+:71.7mg(95.71mval%),
HS-:6.1mg, S2O3--:1.0mg, HCO3-:101.3mg(47.98mval%), CO3--:40.2mg(38.73mval%),
H2SiO3:31.5mg, CO2:0.1mg,
(平成17年6月30日)

JR川内駅もしくは西方駅より薩摩川内市の北部循環バス(南国交通が運行)「湯田西方循環線」で「竹屋前」下車すぐ
鹿児島県薩摩川内市湯田町6483  地図
0996‐28‐0015

日帰り入浴6:00~21:00
300円
備品類なし

私の好み:★★★
コメント (7)
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