温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

川内高城温泉 共同湯(元湯)

2016年02月13日 | 鹿児島県

前回記事で取り上げた「双葉屋」に隣接しているのが、西郷さんも湯浴みしたと言われている「共同湯」(元湯)です。当地に来てここに入らないわけにはいきません。


  
昭和から時が止まったかのような鄙びた外観はとてもフォトジェニック。以前「共同湯」の通り側では食堂や商店を営んでいたようですが、私が訪れた日は終日カーテンが閉まっており、商いをしているような気配は見られませんでした。浴場の入り口はこの商店部分からちょっと奥へ入ったところにあり、初見の旅行者を迷わす隠し扉のような感じですが、それを見つけるのもまた観光の楽しみです。


 
実際に入浴したのは日没後。夜の「共同湯」も味わい深い風情です。カウンターがある小店舗の右側に浴場の入口があり、一応お店と隣り合わせですが、実質は無人浴場みたいな構造で、入ってすぐ目の前に括り付けられている料金箱へセルフで湯銭を納めます。無人に近い施設ゆえ、無銭入浴が相次いでいるのか、料金箱のそばには「金を払わない人間は来るな」と強い語調で注意書きが貼り出されていました。


  
入口から右手に伸びる細い廊下に沿って男女別の浴室が並んでおり、手前側が女湯で奥が男湯。この狭い廊下に休憩用のベンチが置かれています。浴場は全体が大広間のような造りで、各空間をパーテーションで区切られており、視線こそ遮られているものの音は丸聞こえです。また入浴ゾーンは廊下よりも低くなってるため、男湯のドアを開けたら浴槽の様子も丸見えでした。古い公衆浴場の典型的な構造です。この浴場では今でこそ共同管理の混合泉を引いていますが、浴槽が低い位置に設けられているということは、かつてはこの地で自噴する源泉が使われていたのでしょうね。


 
レトロな趣きたっぷりの浴室は、九州の古い共同浴場でよく見られる、脱衣室と浴室が一体になっている造りです。更衣ゾーンは廊下とほぼ同じ高さで、入浴ゾーンより高くなっているのですが、この段差の境目には、最近増設されたと思しきアルミのパーテーションが立てられていました。これによって転倒防止が図られているのですが、反面で更衣できるスペースは大人一人がやっと身動きとれるほど窮屈。昔の建物を現代的なニーズに合わせようとすると、いろいろと難しい点が表面化してしまうのでしょう。


 
入浴ゾーンの真ん中にタイル張りの浴槽が据えられており、女湯との仕切り塀に温泉が吐出されるシャワー付きカランが1基取り付けられています。もちろん以前はシャワーなんてものは無かったはず。室内には数個の桶が用意されていますので、掛け湯をするならシャワーではなく、これらの桶で直接湯船からお湯を汲んじゃう昔ながらのスタイルの方がてっとり早いですね。ただ洗い場ゾーンも狭いため、掛け湯した後のお湯や石鹸の泡などが湯船に混入しやすく、洗い場を利用の際にはその点に気をつけた方が良さそうです。実際に私もできるだけ隅っこで掛け湯をして、混入しないよう気をつけました。


 
 
浴槽は角が取れた「日」の字型をしており、中央の仕切りを挟んでそれぞれ2~3人サイズに分割されています。豆タイル貼りの浴槽縁は蒲鉾の表面みたいに滑らかな曲線を描いており、その造形の美しさに昭和の職人さんの心意気が垣間見えました。私が湯船に入ると浴槽のお湯がオーバーフローしますが、それ以外の時に溢れ出しは見られず、槽内に穴があいていましたので、おそらく常時その穴から排湯されているものと思われます。

一方、お湯の供給は隅っこにある湯溜まりから配管を経由して行われており、この配管にはバルブが付いているため、お湯の投入量を適宜調整することも可能です。私の訪問時には熱々のお湯が注がれており、2つに分かれている槽のうち、湯口側はとても熱くて入浴できるような温度ではなかったのですが、もう一方の更衣ゾーン側は気合を入れたら肩まで疲れる程度の温度にまで落ち着いていましたので、今回は更衣ゾーン側の槽だけで湯浴みしました。浴室内には水道の蛇口もあるのですが、加水できるようなホースはなく、そもそも壁に「水を入れるな」との貼り紙も掲示されていましたから、バルブで湯量を調整するとともに、桶で懸命に湯揉みをして、湯加減をできるだけ自然に落ち着かせるほかありません。

こちらに惹かれているお湯は他の宿と同じく共同管理している混合泉であり、見た目は無色透明で、マイルドな苦味を伴うタマゴ味やタマゴ臭などの知覚的特徴、そしてツルツルスベスベの滑らかな浴感など、諸々の特徴は当地の他宿にあるお風呂と同様です。でもお湯の熱さはここが図抜けているかもしれません。湯使いは完全かけ流し。加水などなく、お湯は新鮮そのものですから、熱いお湯が却って体をシャキッと引き締めてくれ、ツルスベ浴感も相まって、心身をリフレッシュさせてくれました。西郷さんが愛したと言われているこの共同湯で、お湯の熱さに耐えつつ、肩まで浸かって瞑目して、昔日の様子に想いを馳せました。昭和どころか明治にまでタイムスリップできちゃう、歴史好きにはたまらない一湯でした。


川内3・19号
単純硫黄温泉 52.1℃ pH9.2 溶存物質264.8mg/kg 成分総計264.9mg/kg
Na+:71.7mg(95.71mval%),
HS-:6.1mg, S2O3--:1.0mg, HCO3-:101.3mg(47.98mval%), CO3--:40.2mg(38.73mval%),
H2SiO3:31.5mg, CO2:0.1mg,
(平成17年6月30日)

JR川内駅もしくは西方駅より薩摩川内市の北部循環バス(南国交通が運行)「湯田西方循環線」で「梅屋前」下車すぐ
鹿児島県薩摩川内市湯田町6763  地図
0996-28-0117

6:00~21:00
200円
備品類なし

私の好み:★★+0.5


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