温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

上諏訪温泉 衣温泉 2015年夏再訪

2016年03月04日 | 長野県
※残念ながら衣温泉は2015年12月に閉鎖されました。

 
前回記事で取り上げた「大和温泉」と並んで、温泉ファンから熱い支持を受けていた上諏訪温泉の共同浴場「衣温泉」。2010年に拙ブログで取り上げたことがございますが(前回記事はこちら)、昨年夏に再訪しましたので、今更ながら改めてレポートさせていただきます。道路と川が交差する橋のたもとに立地しており、ベージュ色の大きな貯湯タンクが目印となっているので、どなたでも見つけやすい浴場でした。


 
入ってまず左側の番台(窓口)に湯銭を納め、その後、右側の浴室へとお邪魔します。番台では、小窓を開けたところにあるお皿にセルフでお金を置いておけば良いのですが、もし釣り銭が必要な場合は、ブザーを押しておばあちゃんを呼び出します。


 
古くて鄙びた脱衣室は、平成の世になっても室内に灰皿が置かれており、薄暗く燻んだ室内は昭和から時計の針が止まったかのようです。天井から延長コードがぶらさがっていたのですが、これはお客さんが持参したドライヤー用なんだとか。ちなみに備え付けのドライヤーはありません。



壁と配管の隙間に差し込まれている木板の分析表は、大正7年に分析されたデータを記したもの。


 
総木造の浴室は前回記事で紹介した様子と全く変わっておらず、昭和の風情たっぷりの姿を再び目にすることができてホッと安堵しました。男女両浴室を仕切る磨りガラスの下に浴槽が設けられ、その手前に洗い場が配置されています。カランから出てくるお湯は温泉です。


 
窓ガラスはいまどき珍しいガタピシの木枠固定。天井を見上げると、湯気抜きが美しい幾何学模様を描いています。


 
浴槽は2つに等分されており、いずれも2人サイズ。双方を分ける仕切りが低く、どちらか一方に入浴すると、お湯が仕切りを乗り越えて両方とも同じお湯になってしまうので、何のために仕切られているのかよくわかりません。浴槽の縁は小豆色、槽内は若草色の豆タイル張りで、角のRが優しい印象を与えています。なお排湯は縁の上をオーバーフローすることなく、底まで伸びた配管を通じて穴から槽外へ排出する仕組みになっていました。

私の入室時はお湯の投入が止められており、湯船のお湯がやや鈍り気味でしたので、水栓を開けてお湯をドバドバ継ぎ足させていただきました。なお湯使いは放流式です。湯船のお湯はほぼ無色透明なのですが、タイルの色が影響するのか、淡いエメラルドグリーンを帯びているようにも見えます。室内には弱いタマゴ臭が漂っていますが、味覚面はかなり弱く、微かにタマゴ味があったかな、といった程度です。でもアルカリ性のお湯らしいツルスベ浴感がとても気持ち良く、入浴中は何度も自分の肌をさすって、その滑らかさを楽しませてもらいました。

「衣温泉」はその鄙びた風情と滑らかなお湯が温泉ファンの人気を集めていましたが、私が再訪したこの時には、槽内のタイルに不衛生なヌメリがあったり、お湯に明らかに湯の花ではない不純物と思しきものが浮遊していたりと、お手入れ不足が否めないような状況であり、「もしかしたら…」という胸騒ぎを覚えずにはいられませんでした。そして案の定、訪問から数ヶ月経った同年秋のこと、2015年12月下旬に閉鎖されるという情報がネット上を駆け巡り、実際に12月27日、昭和初期から続いてきた長い歴史に幕を下ろしたのでした。建物の老朽化が閉鎖の理由とのこと。上諏訪には多くの共同浴場があるものの、外来者が利用できる施設は限られていますから、そんな浴場の一つが失われてしまうことは、温泉巡りを趣味とする私のような者にとって残念でなりません。でも時代の流れに抗うことはできないので、こればかりは致し方ありませんね。


南部配湯センター(南部源湯・中門川源湯混合泉)
アルカリ性単純温泉 57.0℃ (その他の数値は確認できず)

長野県諏訪市小和田南3-18

2015年12月に閉鎖されました。

私の好み:★★
コメント (4)
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