温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

桃園市 嘎拉賀(新興)温泉で湯の滝を楽しもう! 前編

2016年03月25日 | 台湾
今回記事から台湾ネタが続きます。
2016年1月に行われた台湾総統選の前日。台湾中の耳目が民進党・蔡英文と国民党・朱立倫の対決に集まっているなか、私は朝からレンタカーを借りて、桃園市の山深い奥地にある、原住民タイヤル族が暮らす小さな集落を目指しました。その集落の付近には、天然の温泉が滝をなしてドバドバと落ちている場所があるらしいのです。


 
台湾の脊梁を東西に横断する台7線「北横公路」を東進し、市街を離れて険しい山へとどんどん入って行きます。途中で襞みたいに細かく縦に刻まれている峻厳な断崖と遭遇し、その荒々しい光景を目にしてすっかり圧倒されちゃいました。
所々で離合不能の狭隘区間を通り過ぎながら更に奥へ進んでゆくと、以前拙ブログでも取り上げたことのある「巴陵大橋」が目の前に現れました(その時の記事はこちら)。


 
「巴陵大橋」を超えて巴陵集落に入ったところで、右手へ分かれる小道を進み、更に小さな谷を越えて山の奥へと入り込んでゆきます。巴陵集落の対岸にあたる爺亨地区は棚田の美しい景観で有名なところであり、かつては爺亨温泉という温泉もありましたが、残念ながら現在温泉は閉鎖されてしまいました。道沿いには梅が植えられており、折しも紅梅が綺麗に咲いていました。


 
桃園市街の中心部を出発してから2時間半で、ようやくドライブの終着である嘎拉賀集落にたどり着きました。この集落は一時期、中華風で抽象的な「新興」という名前だったようですが、固有名詞は原住民の言葉を尊重するべきという判断が下されたのか、現在ではタイヤル族の言葉(の音)に即した嘎拉賀(ガラホ)という集落名となっています。険しい山の斜面にへばり付いている集落の中を、車一台分の細い道が奥へと続いているのですが、その路傍に「往温泉」と記された道標が掲示されていましたので、それに導かれながら先へ先へと進んで行くと・・・


 
上画像のような駐車場に到着しました。ドライブとしてはここが終点ですが、本当の目的地はこの先の谷底にありますから、ここからは歩いて噂の温泉へと向かうことになります。南国台湾といえども、さすがに高所となれば気温も下がり、私の体感でこの山中の集落は10℃あるかないかという冷たい空気に包まれていました。しかも朝からシトシトと雨が降り続いていたので、余計に寒く感じられます。駐車場の谷側にはテントが建てられ、中で集落の男たちが焚き火で暖をとりつつ談笑していました。この先の温泉へ行く際には集落の人に100元支払うのが暗黙のルールとなっているらしく(ネット上にもその情報が紹介されていました)、この時も車をとめた私に向かって男たちの一人が声をかけてお金を請求してきました。私はあらかじめそのことを知っていたので、「そういうものか」と理解して素直に支払いましたが、駐車場にはお金に関する案内や説明が見当たりませんので、何も知らないでここに来ると、お金でちょっと揉めそうな気がします。

さて車を降りた私は、この場で雨に濡れながら軽登山の準備にとりかかります。具体的には、雨具を装着し、トレッキングシューズに履き替えた上で、小さなデイバックに水分やランチ、そして水着を詰め込みました。なお駐車場の片隅にはトイレがあるのですが(右or下画像)、見るからに衛生的ではなかったため、使う気になれませんでした。


 
せっかく車でこんな高いところまで登ってきたのですが、温泉は谷底で湧いているため、ここからは自分の足で一気に谷底まで下りて行きます。温泉が湧く谷の低い位置に雲が垂れ込めており、いまから私はこの雲に向かって下ってゆくわけです。上から雲へ突入するだなんて、まるで着陸する飛行機みたいですね。左下を向いている道標によれば、ここから温泉まで1.55kmとのこと。大した距離ではないのですが、相当の高低差があることは一目瞭然です。


 
 
温泉への道入口には温泉に関する説明プレートが立てかけられていました。集落名と同じく、いまから目指す温泉も、一時期は新興温泉と称されていたようですが、現在では集落名に合わせて嘎拉賀温泉という名前になっています。この説明板によれば、温泉はpH8の弱アルカリ性で湧出温度は44~55℃なんだとか。


 
軽登山の準備ができたらいざ出発です。急斜面を下る道は一応コンクリ舗装されていますが、地元民以外の車の乗り入れはできませんし、万一車で通行したとしても、勾配が非常に急なので普通のFF車では登れないかもしれません。いや、車どころか人間にとっても雨に濡れたコンクリ路面は非常に滑りやすく、私のトレッキングシューズの靴底はグリップが効いてくれず、何度も転倒しそうになりました。でも路傍に植えられた梅の花がちょうど見頃を迎えており、雨に滴る可憐な花が、足運びに苦戦する私の心を癒してくれました。


 
この道は「温泉古道」と称されているらしく、途中100m毎にスタート地点からの距離を記した看板が立てられていました。


 
この道は原住民に対して交付される助成金で整備しているらしく、路肩に立派な手すりがあったり、ベンチや東屋が設けられていたりと、山奥の林道らしくない立派な設備がところどころで見られました。上画像に写っているベンチの上には、電話番号が書かれた看板が木にくくりつけられていますが、もし帰路に急な坂道を登りきれなくなってギブアップしたい場合、そこへ連絡すれば上から車で迎えにくれるみたいですよ(もちろん有料でしょうけど)。


 
道の舗装は突然終わり、その先は階段が続いていました。まだまだ全行程の半分にも至っていません。この階段の途中にも東屋が建てられており、その傍らには先ほどと同じ電話番号が記されていました。


 
樹林の中を、急な階段が延々と続きます。下っても下っても、なかなかゴールが見えません。帰路にこの階段を登らなきゃいけないかと思うとウンザリします。


 
スタートから1.3km地点となり、階段の傾斜がますます急になってきました。幅の狭いステップは雨に濡れて滑りやすいので、転ばないよう慎重に歩みを進めます。


 
途中で突如ステンレスの立派な手すりが現れたかと思えば、その先の藪ではロープが渡されているだけだったりと、道の状況は区間によって全然異なっており、下に行けば行くほど、その険しさが増していました。でも斜面の下の方から川が流れる音が響いてくるので、着実に谷底へ近づいていることを実感できます。


 
歩き始めて25分。森の中に小さく開かれた広場に「温泉古道 終点」の看板といくつかのベンチが設置されていました。看板には終点と記されていますが、しかしながらまだここは終点でなく、温泉があるのは更に先です。



細い杣道を進んで行くと・・・


 
スタートからちょうど30分で谷底の渓流にたどり着きました。山を下ってきた道は、(左or上画像に写っている)清流が瑠璃色に淀む場所に突き当たります。ここから先、川の左岸に沿う形で道は左右に分岐しているのですが、試しに右へ進んでみると、数十メートル小さな滝を見下ろす出っ張りに行き着き、そこで袋小路となりました(右or下画像)。従いまして温泉へ向かうには分岐を左へ進むことになります。


 
足を滑らせたら川へ転落しちゃうような切り立った崖の上を慎重に歩いて、下流に向かって左岸を進んで行くと、左手から巨大な岩がオーバーハングしている箇所を通過しました。この巨岩の下をくぐると、目の前にボロボロのテント小屋が現れたのですが、これって更衣室かな?



テント小屋の前を通り過ぎると、いきなり右手の視野が開けて一本の太い滝が目に入ってきました。よく見ると、滝壺から湯気が上がっています。ということは、あれが目的地の湯の滝なんですね。


 
湯の滝が見えたからといって、そう簡単に楽しませてくれないのが、大自然の厳しい定め。
ボロ小屋の先には上画像のような鉄のハシゴが設置されていますので、これで河原へ下ります。ハシゴの一部は曲がっていますし、上述のようにこの時は雨が降っていましたので、滑って踏み外さないよう、両手でしっかり握りながら慎重に下りていきました。


 
ハシゴで下り切ったら、今度は川を渡ります。橋は架かっていませんので、川の中へジャブジャブ入って渡渉することになります。この先、荷物を置いたり着替えたりするような場所はあまりないので、水着に着替えたり、入浴に必要の無い荷物を置く場合は、川を渡る前に川岸のスペースを利用しましょう。
渓流は大変綺麗に澄んでおり、見ている分には心が洗われますが、南国台湾とはいえ山奥の渓流はとっても冷たく、渡渉する際にモタモタしていると足元からジンジン冷えてきます。自分の目で渡りやすそうな場所を見つけて、サッサと迅速に渡ってしまいましょう。対岸には楽しい温泉が待っています!

後編へ続く。








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