温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

和倉温泉 総湯

2016年09月14日 | 石川県・福井県

前回記事では和倉温泉の「奥田屋」での宿泊を取り上げましたが、せっかく和倉温泉を訪れたのですから、当地のランドマークである公衆浴場「総湯」にも立ち寄ってみることにしました。以前の総湯は洋風でどことなくメルヘンチックな雰囲気すら漂う建物でしたが、2011年にリニューアルオープンし、和の趣きたっぷりで重厚感のある建物に生まれ変わりました。北陸、殊に旧加賀藩領では温泉地における庶民向けの代表的公衆浴場を「総湯」と称しますが、このドッシリとした構えは「総湯」の名前に相応しい圧倒的な存在感を放っており、見るだけでも訪れる価値がありそうです。


 
湯屋の前は広場になっており、その一角には足湯や飲泉場が設けられていました。いずれも無料で利用できます。試しに飲泉場のお湯を口にしてみたのですが、まず非常に熱いことに驚き、そしてとっても塩辛く、且つ苦汁の味も強いことに仰天しそうになりました。伝説によれば、和倉温泉は今から1200年前に白鷺がお湯で傷を癒しているところを漁師夫婦が見つけたことが開湯の端緒となっているそうですが、こんな熱くてしょっぱいお湯を傷口に触れさせたら、沁みて痛くて飛び上がっちゃうんじゃないでしょうか。


 
足湯や飲泉場の他、アツアツのお湯を活かして温泉たまごをつくる槽もありました。備え付けのカゴにタマゴを入れ、15分でできあがるんだとか。


 
前回記事でも触れましたが、この時の私は夜に当地へ到着し、日の出頃に出発してしまったので、残念ながら明るい時間帯の当地を見ておりません。上2枚の画像は「総湯」正面を、夜間および日の出頃に撮ったものです。時間帯は違えども、それぞれ違った趣きがあって良いものですね。特に屋内の照明の灯りが漏れる夜間の格子戸はとっても綺麗です。


 
立派な暖簾と大きな提灯が掲げられた、威風堂々とした構えの玄関。
ここを通る時には、ちょっとした殿様気分が味わえました。


 
玄関ホールは観光情報を発信したり、当温泉の歴史を説明するコーナーがあるほか、温泉街の施設のジオラマが展示されていました。いかにも現代和風といった開放感と和の落ち着きを両立させたつくりです。


 
受付前の券売機で料金を支払い、受付カウンターに券を差し出します。通路の先で男女が分かれており、男湯は右側でした。


 
今回記事では公式サイトより画像を拝借させていただきました。いずれも女湯の画像ですが、男湯もほぼ同様の構造で、女湯とシンメトリになっているようです。
浴室内は、とても440円で利用できる公衆浴場とは思えないほど広くて開放感があり、そして多彩な浴槽が設けられています。天井が高くて換気状態も良いために湯気篭りがなく、綺麗で快適な入浴環境が維持されています。室内側壁の下半分は石材のようなタイルが貼られ、上半分は白木の羽目板を採用。そして柱はコンクリ打ちっ放し。総じて素材感を活かしており、伝統的な和の趣きと現代的なデザインおよび機能性を両立させたつくりです。洗い場にはシャワー付きカランが計20基設置されており、公衆浴場にもかかわらずボディーソープやリンスインシャンプーが備え付けられています。

浴槽類は、主浴槽・副浴槽・泡風呂・サウナ・水風呂・そして上がり湯というラインナップで、主浴槽・副浴槽・泡風呂の3つに関しては温泉が使われています。主浴槽は(目測で)6m×4.5mという大変大きなもので、万人受けする41〜2℃にセッティングされています。それに隣接している副浴槽は3m×4.5mで、やや熱い43℃という湯加減となっていました。両浴槽とも浴槽内はタイル張りで枠組み(縁)は御影石。両者を隔てる仕切りに湯口が設けられていて、双方へ温泉を落としているのですが、そればかりでなく、この湯口は飲泉場を兼ねていて、湯口のお湯を飲むことができました。主副両浴槽とも循環装置が使用されているようですが、循環だけでなく、新鮮源泉も投入しているのですね。
もうひとつの温泉槽である泡風呂槽は洗い場に近い位置に設けられており、扇のような形状で、やや深い作りになっていおり、41℃前後の湯加減に調整されていました。41℃前後と聞くと、ぬるめで長湯できそうに思えますが、ところがどっこい、こちらで長湯するのは容易いことではありません。その理由は後ほど。


 
露天風呂の画像も公式サイトより転載させていただきます。夜間の画像は女湯、画像内の文字が青文字の画像は男湯です。画像で比較する限り、浴槽のつくり自体には大差ないようですが、女湯には屋根がかかっている一方、男湯は屋根がなく、開放感では男湯の方が勝っているかもしれませんね。庭園風の設えになっている露天風呂の足元は洗い出し仕上げになっているのですが、入浴客の動線になる部分だけ石材が敷かれています。浴槽は3m四方の正方形で、縁には御影石が用いられ、浴槽内は緑色凝灰岩が敷かれています。とても500円未満で利用できる公衆浴場とは思えない、一流旅館並みにお金がかかっている立派なお風呂です。石組みの湯口からお湯が投入されていますが、しっかりと循環されており、人が湯船に入った時だけ幾許かのお湯が浴槽外へ溢れ出ていました。

さて温泉に関してですが、各浴槽に引かれているお湯は集中管理されている混合泉で、内湯に設けられている飲泉場のお湯を実際に飲んでみますと、苦汁味を伴う塩辛さが大変印象的。特に飲泉場では臭素臭やアブラ臭がふんわりと嗅ぎ取れました。また温泉を用いている浴槽で入浴すると普通のお風呂では体感できないような強い浮力が得られ、塩分の濃さを実感することができました。濃度の濃い食塩のお湯ですから、湯中でこそツルスベ浴感が得られるものの、湯上がりには引っかかりやベタツキが残り、強力に火照ります。上述のように長湯できそうな浴槽もあるのですが、凶暴に火照るお湯ですからボディーブローのように体力を消耗するので長湯は禁物。体力を奪われてヘロヘロになってしまいます。実際に、各浴槽では縁に腰掛けてぐったりと休んでいる方がかなりいらっしゃいました。ですから、お風呂から上がる時には真湯で体についた温泉を洗い流した方が良いかもしれませんね。湯上がり後はしばらくホコホコと温まりが持続し、冬ですら汗が引きませんでした。前回記事で取り上げた「奥田屋」のような掛け流しのお湯と比べると幾分パワーダウンしている点は否めませんが、でも循環のお湯だからといって侮るなかれ、なかなか本格的なパワーが得られるお湯です。お風呂としても規模が大きく、立派なデザインであるにもかかわらず、低めの料金設定となっており、それでいて使い勝手も良好。能登の観光拠点として燦然たる存在感を有する素晴らしいお風呂です。


混合泉(第5号・第8号・第10号・第13号の混合。弁天崎源泉貯湯槽流出口にて採水)
ナトリウム・カルシウム-塩化物温泉 82.4℃ pH7.8 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質19.32g/kg 成分総計19.34g/kg
Na+:4116mg(52.28mval%), NH4+:0.5mg, Mg++:7.8mg, Ca++:3138mg(45.74mval%), Sr++:46.4mg,
Cl-:11480mg(98.56mval%), Br-:40.8mg, I-:0.2mg, SO4--:182.1mg,
H2SiO3:92.0mg, HBO2:42.1mg, CO2:21.3mg, 
(2014年9月10日)
循環ろ過装置を使用・消毒あり(衛生管理のため)

七尾駅や和倉温泉駅より路線バスで和倉温泉バスターミナルへ。バスターミナルより徒歩1分
石川県七尾市和倉町ワ5-1  地図
0767-62-2221
ホームページ

7:00~22:00 毎月25日定休
440円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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