温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

姫川温泉 瘡の湯

2016年09月15日 | 長野県
 
前回記事に引き続き、9ヶ月前の今年(2016年)1月に旅した温泉めぐりのネタを取り上げさせていただきます。能登から北陸地方を東に進み、途中の糸魚川でJR大糸線に乗り換えて、平岩駅で下車しました。平岩駅といえば、以前拙ブログでも紹介したことのある姫川温泉の最寄駅です。


 
駅前に立つ看板に従い、姫川を渡って姫川温泉へと向かいます。このあたりは姫川を県境として新潟長野の両県が接しており、平岩駅は新潟県糸魚川市ですが、これから向かう姫川温泉は長野県小谷村に属しています。


 
姫川温泉に関して、拙ブログではこれまで「朝日荘」「白馬荘」を取り上げたことがありますが、今回訪れたのは「朝日荘」の左側に隣接している日帰り温泉入浴施設「瘡の湯」です。疱瘡の「瘡」とかいて「くさ」と読むんですね。コンクリ打ちっ放しの建物の外壁には「源泉かけ流し温泉」と書かれており、お湯の質には自信があるようです。この施設については2013年9月25日に拙ブログでも「(小ネタ)長野県姫川温泉で新たな温泉浴場が建設中?」というタイトルで開業前の様子を取り上げたことがありますが、その後2014年に開業し、温泉ファンのレポートも続々とネット上に上がっていたので、その尻馬に乗る形で私も遅ればせながら初訪問させていただくことにしました。


 
窮屈で足の置き場に困る下足場を抜けると、いきなり広間が川に面して広がっており、そこにいたおばちゃんに直接湯銭を支払いました。広場ではお風呂から上がったばかりの近所のお婆ちゃんがお茶を飲んで、店番のおばちゃんと談話中。早くも地元の方にとっての憩いの場として機能しているようでした。
そんな広間の奥から廊下へ抜けると、右手に紺と紅の暖簾がかかっていました。


 
脱衣室には無料で施錠できるスチールロッカーが設置されていました。タイプの異なるものが並んでいるところから推測するに、おそらくセカンドハンズの物を置いたのではないでしょうか(在庫の関係で異タイプのものにせざるを得なかったのかも)。洗面台にはドライヤーも用意されていました。


 
お風呂は内湯のみで露天風呂はありません。浴室は川に面してガラス張りになっており、川の対岸には大糸線の線路が左右に走っていて、目の前に架かるガーダ橋で川を渡っています。見た感じでは特に窓ガラスに遮光フィルムなど貼っていないようですから、川の対岸を走る大糸線の乗客からこちらの姿は丸見えではないかと思われるのですが、そもそも列車の本数がわずかなので、もしそのような場面に遭遇したとしても、寧ろ大当たりでラッキーなことだと考えたほうが良いかもしれませんね。
窓ガラス以外の室内に関しては、足元がガリガリ君ソーダ味のような色合いをしたタイル張りで、側壁はコンクリ打ちっ放しです。外観内装ともに、コンクリ打ちっ放しがこの建物のコンセプトなのでしょう。


 
男湯の場合は脱衣室から窓ガラスへ向かって左側に洗い場が配置されており、カランが4基並んでいて、うち2基がシャワー付きです。カランのコックを開けると、温泉のお湯が吐出されました。


 
出入口のそばには上がり湯用の小さな槽があり、体に掛けやすいよう、水と源泉のお湯を混ぜてぬるめの湯加減にしていました。後述するようにこちらの温泉はカルシウムのこびりつきが多く、この上がり湯枡においても、温泉の吐出口やお湯が溢れる槽の側面に、温泉由来のカルシウムが付着していました。


 

浴槽は(目測で)1.8m×3.5mの四角形。浴槽には無色透明のお湯が張られており、槽内のタイルも綺麗な状態が保たれていますが、お湯と空気が触れやすい浴槽縁などは、まるでサンゴ礁を思わせるようなトゲトゲとしたカルシウムのスケールによってベージュ色(ところによっては橙色)に覆われており、元の色がすっかりわからなくなっていました。この浴場の開業は2014年ですから、わずか2年でここまでスケールがこびりついてしまうのですね。浴場の管理には相当ご苦労なさっているものとお察しします。湯船を満たしたお湯は縁の上からふんだんにオーバーフローしているのですが、溢れ出しのお湯が徒に洗い場の方へ流れないよう、つまり床タイルにスケールが付着しないよう、浴槽の下に角材を設置し、これでお湯の流れ出しを食い止めていました。


 
浴槽へお湯を供給する湯口にはバルブが取り付けられており、これによって湯量を自由に調整することが可能です。なお加水も自由な加減が可能ですが、もし出したら後でちゃんと止めておきましょう。私が訪問した時には、温泉がドバドバと大量に注がれており、水は完全に止められている無加水状態でしたが、それでも42℃前後の入りやすい湯加減となっていましたので、源泉100%のお湯を思う存分楽しませていただきました。お湯の見た目は無色透明で濁りや湯の花は見られません。お湯を口に含むと、薄い塩味と土類系(カルシウム系)の味、そして弱いながらもはっきりとした炭酸味が感じられました。また湯口においては土類系の匂いや弱い金気臭も嗅ぎとれました。浴感に関しては、はじめのうちはツルスベなのですが、やがてギシギシと引っかかる感触が勝ってくる面白いフィーリングが得られました。

姫川温泉といえば、「朝日荘」も「白馬荘」も目の前で湯の滝をなしている源泉からお湯を受けており、白い湯の花が漂うような硫黄感たっぷりのお湯が特徴的ですが、こちらのお風呂ではそうした姫川温泉の源泉ではなく、遠く離れた蒲原温泉跡や湯原温泉といった温泉が点在するエリアに湧く源泉からお湯を引いており、それゆえ、姫川温泉と名乗っているものの、その実態はどちらかといえば湯原温泉「猫鼻の湯」などに近いタイプのお湯となっています。姫と名乗っているのに暴れ川である姫川では、長年にわたって砂防工事が行われていますが、この源泉はその工事の過程で掘られたものと思われ、土砂災害の心配がない場所までお湯を引いた上で、このような浴場を建設したのでしょうね。姫というじゃじゃ馬を馴らすプロセスで生まれた副産物と言えるのかもしれません。

私がお風呂から上がると、上述の広間で店番のおばちゃんがお茶とゆで卵をサービスしてくださいました。実に家庭的でのんびりとした時間が流れる浴場でした。内湯しかなく、しかも開業からまだ2年しか経っていないのに早くも雑然としているので、わざわざここを目的地にするほどではないかもしれませんが、お湯はふんだんにかけ流されていますし、田舎のおばあちゃんの家にお邪魔したような長閑な雰囲気が好印象ですので、付近を通りかかった際にひとっ風呂浴びるには丁度良いかもしれません。


松本砂防 瘡の湯代替(湧出地:新潟県糸魚川市大所字牧山989-575)
ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉 54.8℃ pH6.5 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質1788mg/kg 成分総計1998mg/kg
Na+:349.5mg(62.25mval%), Mg++:35.7mg(12.03mval%), Ca++:103.9mg(21.23mval%),
Cl-:376.1mg(45.29mval%), Br-:2.7mg, I-:0.5mg, SO4--:101.5mg(9.02mval%), HCO3-:647.2mg(45.28mval%),
H2SiO3:106.4mg, HBO2:29.3mg, CO2:209.4mg,
(平成21年10月22日)

JR大糸線・平岩駅より徒歩5分
長野県北安曇郡小谷村北小谷9922-3  地図
025-557-2120

10:00〜18:30
600円
ロッカー・シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
コメント
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