温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

草津温泉 草津館

2016年09月23日 | 群馬県
 
引き続き上州草津温泉を巡ります。今度は湯畑の方へ下っていき、2013年に開業した草津の新たなシンボル「御座の湯」と、以前からある共同浴場「白旗の湯」に挟まれるような場所にある旅館「草津館」で日帰り入浴をお願いすることにしました。湯畑のまわりは土産物店や飲食店など派手やかな建物が軒を連ねているため、「御座の湯」の前で且つ観光案内所の隣という好立地にもかかわらず、周囲に埋もれてその存在に気付きにくいかもしれませんが、宿としてゆっくり過ごすには寧ろその方が良いかもしれませんね。


 
玄関で入浴をお願いしますと快く対応してくださり、廊下を歩いた先にある帳場で丁寧に案内してくださいました。帳場の前にあるラウンジでは、私のような日帰り入浴客でも湯上がりに休憩することができます。この部屋はひだまりになっており、明るくホッとできる空間です。


 
玄関と帳場やラウンジを結ぶ廊下の途中右には、お宿の自家源泉である若の湯源泉が湧出しており、温泉が自噴する様子を目にすることができます。これから入るお湯は、まさにここから直接引いたお湯であります。



玄関のすぐ目の前に暖簾が掛かっています。源泉でお湯が湧き出でる姿を見学した後は、その湯に浸かるべく浴室へと向かいました。総木造の脱衣室はやや年季を感じるものの、隅々まで手入れが行き届いており、気持ち良く使うことができました。


 
男女別の浴室は内湯のみで露天風呂はありませんが、男女とも一つの浴室内に2つの異なる源泉が引かれており、一回で二度美味しい湯浴みを楽しむことができます。脱衣室と同じく浴室内も木造で木のぬくもりが伝わってくるとともに、足元に敷かれた切り出し石材の感触が、伝統的な温泉旅館らしい重厚感をもたらしています。
私が訪れたのは真冬だったため、室内には湯気がこもっており、しかも逆光で大変見にくいのですが、室内には草津名物の湯もみ板が立てかけられていました。


 
男湯の場合は、浴室入って右手に洗い場が配置されており、シャワー付きカランが2基とスパウトのみの混合水栓が1基取り付けられていました。洗い場に備え付けられているアメニティー(ボディーソープやシャンプーなど)は、資生堂が開発した草津温泉オリジナルの「泉と恵」で、この製品は草津温泉の他旅館でも目にすることができますが、残念ながら非売品ですので、どんな使い心地なのかを知りたければ、草津のお宿でお風呂に入らなければなりません。でも、そのレア感こそ製品の希少価値を高めているのでしょうね。


  

上述したように浴室内には2つの源泉が引かれており、それぞれに浴槽が設けられています。手前側にある1人サイズの小さな浴槽は、お隣「白旗の湯」で用いられている白旗源泉です。木の栓が突っ込まれたバルブ付きの湯口からお湯が注がれており、湯船のお湯は灰色を帯びた弱い白濁を呈しています。湯中では大小様々な大きさの湯の花が舞い、お湯をテイスティングしてみますと、強烈な収斂酸味が口の中に広がると同時に、アルミ箔を齧った時のような不快感や金属感が口腔の粘膜を刺激しました。湯加減はやや熱めですが、切り出し石材で囲われた浴槽は入り応えがあり、両腕を縁の上に載せてじっくりと浸かっていたくなりました。


 

一方、奥の大きな浴槽には自家源泉の若の湯が張られています。槽としての大きさはおおよそ2m×2.5mで5〜6人サイズ。湯船のお湯はやや青みを帯びた半透明で、見た目だけでも2つの源泉の違いは明らかです。濁りの少なさはお湯が新鮮である証左。すぐそばの源泉から引いているのですから当然ですよね。湯中では白く細かな湯の花が無数に舞っており、これがお湯を半透明のような淡い濁りに見せているのでしょう。
お湯は木箱の湯口から注がれていて、その木箱の周りには結晶化した温泉成分がビッシリとこびりついていました。やや熱めの小さな浴槽に対し、こちらは絶妙な湯加減がキープされており、一度入ると後ろ髪を引かれて出られなくなってしまうほど気持ち良いお湯です。湯口のお湯を口に含んでみますと、白旗源泉よりも酸味がいくらかマイルドで、頬の収斂もワンテンポ遅れて感じられます。また白旗源泉の酸味は梅干の汁みたいな味でしたが、若の湯はどちらかといえばフルーティであり、ほろ苦味も混ざっていて、一言では表現できないような奥深い味わいでした。匂いに関しても、白旗源泉は鼻腔をツーンと刺激するようなストレートに酸っぱい匂いですが、若の湯は同じくミョウバン臭でありながら、火山の噴気孔のようなガス臭も伴っており、やはり若の湯の方が重層的であるように感じられました。
両源泉とも、分析書上の数値にはあまり差がないのですが、源泉の違いによるわずかな差や引湯の距離など、ちょっとした違いによって知覚的特徴にこのような差異が生まれるのでしょう。いずれのお湯も強酸泉ならではのヌメリを伴うツルスベ浴感がはっきりと肌に伝わり、草津の湯らしい温まりが得られるのですが、殊に若の湯は湯加減も良く、またフィーリングもマイルドであるため、時間を忘れていつまでも入り続けていたくなります。まさに名湯です。

草津では外湯巡りも楽しいのですが、こうしてそのお宿でしか入れない源泉を味わうのもまた一つの楽しみですね。いずれ泊まってみたいお宿です。


若の湯
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 50.0℃ pH2.1 湧出量測定せず(自然湧出) 溶存物質1.69g/kg 成分総計1.78g/kg
H+:8.92mg(36.10mval%), Na+:56.4mg, Mg++:35.2mg, Ca++:79.6mg(16.21mval%), Fe++:16.8mg, Al+++:44.7mg(20.30mval%),
F-:10.0mg, Cl-:340mg(37.88mval%), SO4--:634mg(52.20mval%), HSO4-:190mg, Br-:1.7mg,
H2SiO3:227mg, H2SO4:4.3mg, CO2:82.5mg, H2S:6.9mg,
(平成21年11月6日)

白旗源泉
酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉(硫化水素型) 50.8℃ pH2.1 湧出量測定せず(自然湧出) 溶存物質1.66g/kg 成分総計1.76g/kg
H+:8.91mg(36.30mval%), Na+:54.4mg, Mg++:37.4mg(12.63mval%), Ca++:76.5mg(15.67mval%), Fe++:17.6mg, Al+++:43.9mg(20.04mval%),
F-:9.5mg, Cl-:310mg(35.19mval%), SO4--:651mg(54.61mval%), HSO4-:195mg, Br-:1.5mg,
H2SiO3:216mg, H2SO4:4.4mg, CO2:88.0mg, H2S:7.7mg,
(平成25年5月15日)
※館内掲示の白旗源泉のデータは平成6年のものでしたが、他施設で新しいデータがありましたので、ここでは新しいデータを抄出転記します。

草津温泉バスターミナルから徒歩4〜5分(約350m)
群馬県吾妻郡草津町草津甲419  地図
0279-88-2027
ホームページ

日帰り入浴時間要問い合わせ
800円
シャンプー類・ドライヤーあり、ロッカー見当たらず

私の好み:★★★

コメント
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