温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

熊本不二コンクリート工業 不二の湯

2009年12月20日 | 熊本県


欲を張ると得るもの少なく、逆に無欲でいると多くの恩恵を受けられるのが世の中の条理というものです。温泉にもこれに該当する例がままあり、例えば青森県黒石市の100円温泉は元々従業員のために非営利目的で温泉が掘削されたのですが、そのお湯の良さが世間に伝わり、今では地元の人をはじめ全国各地から温泉ファンが集まる隠れた名湯になっています。青森県から遠く離れた熊本県菊池市にもこれと同じような経歴を持つ温泉があります。

成型されたばかりの擁壁資材やマンホール側塊・ケーソン類などコンクリート製品が並ぶ工場の敷地の端っこにその浴場はあります。今から15年ほど前に不二コンクリート工業の社長が温泉を掘削して見事掘り当て、従業員の福利厚生を目的として温泉浴場を建設したのですが、そのお湯の良さがご近所で評判となり、従業員のみならず一般にも開放されることになりました。以前はプレハブの湯屋でしたが2007年には立派な建物に建て替えられたので、今ではきれいで清潔で使い勝手がよく、しかも料金は100円という低価格設定のまま。なんとも有り難い温泉なのです。

 
左:敷地にはコンクリート成型物が並んでいます
右:源泉施設と思われるもの


施設は常時無人で、料金つまり100円玉をゲートに投入し回転式のバーを回して中に入る仕組みになっています。内部はごく普通の公衆浴場といった感じの造りで、新しく建て替えられただけあり内部は明るく清潔さが感じられています。浴槽は左右二つに分かれており、男湯の場合は左側に湯口があって、お湯は左槽から右槽へと流れ、右槽でオーバーフローしています。カランは5ヶ所あり、カランから出てくるお湯も源泉です。

浴槽に注がれるお湯は無色透明で、弱い塩味と微かな金気が感じられ、匂いはあまりありません。赤い湯の華が沢山浮遊しています。お湯に浸かっていると泡付きが見られ、特に湯口側の浴槽ではびっしりと付着し、このお湯がいかに新鮮かを実証してくれます。また主成分が重曹であるためにつるすべ感があり、湯上りは爽快感が得られ、且つ食塩の保温効果により湯冷めもしにくいという、贅沢な浴感のお湯です。源泉温度40.8℃のお湯をそのまま掛け流しているので、湯温はややぬるく、特に左槽の下流に当たる右槽はかなりぬるめです。冬に訪れたことは無いので何とも言えませんが、夏の暑い時期ですとみなさん右槽に入りじっくりと長湯していらっしゃいました。お湯は確かにぬるいのですが、長湯と食塩、そして炭酸成分によって温浴効果が得られるはずです。お湯から上がって自分の肌をさすると、すべすべして実に気持ちがよいので、女性にもおすすめ。こんなお風呂が100円で入れるなんて信じられません。社長さんに感謝です。


画像中央の狭い通路が入場ゲート。その奥で男女に分かれています。ゲート左右の扉は開けられません

 
左:浴槽の様子
右:湯口付近


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
40.8℃ 200L/min

熊本県菊池市泗水町田島2444 地図
0968-38-3131(熊本不二コンクリート工業)
ホームページ

5:00~7:50、10:00~22:30(7:50~10:00は清掃のため入場不可)
100円

私の好み:★★★
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吉田うどん専門店 うどん屋 源さん

2009年12月19日 | 山梨県


中毒性のあるうどんというのを私は初めて知りました。甲府市内には何軒もの吉田うどんの店があり、ここもそのひとつ。私は駐車場が広いというただその一点でこの店を選んだのですが、まさかその選択が当たり籤を引き当てることになるとは。

訪問したのは平日の12時半頃。お昼の時間だけあり、席はほぼ埋まっていました。グループ客の他、私のような一人客も何人か見られ、人数の多寡に関わらず入店できるのが嬉しいところ。吉田のうどんの店では一般的ですが、この店もオーダーから後片付けまでセルフサービスとなっています。まず席に着いたら、テーブルの中央に置かれたブロックの付箋に希望のオーダーを書いて、それをカウンターへもっていきます。すると厨房の中の店員さんがこれを受け取ってオーダー完了。当然お冷も自分で。席で待っているとやがて注文の品が運ばれてきます。配膳のみは店員さんがやってくれます。食べ終わったら、配膳時に値段を追記されて戻された付箋とともに、丼をカウンターへ戻してお会計。

さて今回私が注文したのは「特濃煮干・肉天つけうどん」。最初はかけうどん系(麺がお汁にひたっているタイプ)を頼もうと思っていたのですが、目の前の席の人がつけうどん(麺をお汁につけてたべるタイプ)を食べていたので、私もそれに惹かれてつけうどんに変更しました。うどんの麺はこれでもかというほど太く、そして固茹で。消化にはかなりの咀嚼を要するので、量を食べなくても満腹感が得られます。麺に添えられた茹でキャベツも吉田うどんならでは。そしてつけ汁がとても個性的。特濃というだけあり煮干の味がぎゅっと凝縮されており、うどんのお汁というよりはラーメンあるいはつけめんのスープを思わせます。汁の味が濃いので、麺が太く固茹でであっても汁がしっかり麺にからみ、麺に食べ飽きることがなく、あっという間に完食。美味しさのあまり、何度も舌なめずりをしてしまいました。

煮干の風味の強さ、そして満腹感は私の体の中で夕方まで残り、日が暮れる頃に訪れるはずの夕食の食欲は追い出されてしまいました。いつまでも煮干の余韻に浸っていたくなる味です。




吉田うどん専門店 うどん屋 源さん (うどん / 甲斐住吉)
★★★★ 4.0


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山口温泉

2009年12月18日 | 山梨県


甲府盆地の温泉を語る上でここを外すわけにはいきません。温泉ファンの間では山梨県内屈指の名湯であると誉れが高く、私もお湯の良さに惚れこんで何度も通っている、甲府盆地を代表する温泉です。

山口とはこの温泉のオーナーの名前で、その名の通り山口さんがご自宅の庭先をボーリングして温泉を掘り当て、そこから湧く自噴のお湯を共同浴場として一般に供じているのです。この温泉が掘削された当時、周囲はブドウ畑が広がっていたようですが、現在では宅地化が進み辺りは住宅ばかりです。畑がスプロール的に開発されてしまったところなので、界隈の道路はあぜ道を舗装しただけのようなクネクネの狭隘な箇所が多く、当地までの運転には注意を要します。

道路から敷地に入ると、左手に山口さん宅、右手に温泉の建物があります。共同浴場にしては大きく、民宿のような外観です。玄関前には飲泉所を兼ねた大きな岩のモニュメントが据えられています。お風呂は内湯と露天があるのですが、双方は直接繋がっておらず、内湯と露天を行き来するには一旦脱衣所を通らなくてはいけません(内湯から外へ出られるサッシがあるのですが、浴槽の縁を跨ぐような形になるので、あんまりお行儀のよい方法ではないかと思います)。


玄関前にある飲泉所を兼ねたモニュメント


内湯にはカランが5ヶ所で、うちシャワー付きは2ヶ所。石造りの湯船には竜頭の湯口からまるで滝のように大量のお湯が轟音を立てながら落ちています。注がれるお湯に追い出されるように湯船のお湯はその場に滞留することなく、まるで川のような流れを作り、湯口と対称の位置にある排水口へと溢れ、その流路は成分の析出で深い焦げ茶色に変色しています。露天にも2本の湯口から源泉が投入され、こちらもふんだんに掛け流されています。

この温泉の凄いところは夥しい泡の多さにあります。お湯に入ると忽ち全身泡だらけ。その泡付きたるや全国屈指ではないでしょうか。あたかもケーキに載せられたムースの中に身を沈めたかのような状態です。体に付着するだけではありません。泡ははっきりとお湯の中で白濁しているのです。内湯の画像を見ていただければわかりますが、湯口から浴槽の手前側を伝って排水口へと繋がるお湯の流れは、気泡により白く濁っています。泡の流れを感じながら湯浴みできる温泉なんて、そう滅多にお目にかかれるものではありません。お湯から立ち上がったときに感じるシュワシュワ感もこの温泉ならではです。

41.6℃の源泉を掛け流しているので、浴槽では40℃を下回るぬるさ(38℃前後)になっています。特に外気に冷やされる露天風呂はもっとぬるく、冬の露天はちょっと肌寒いかと思います。でもぬるいお蔭でたっぷり長湯ができ、ここへ訪れるお客さんの多くはじっくりと長湯していきます。薄い黄色の透明で、飲んでみると炭酸の味に重曹の味、そして鉄の味、モールの匂いと赤錆の匂いが感じられます。ぬるいお湯ですが、炭酸ガスの影響によりお湯から上がると体の芯からポカポカと温まってきます。また重曹のパワーによりツルツルスベスベ感も良好で、クレンジング効果で湯上りも爽快です。

 
露天風呂の様子(左)と、その湯口(右)

 
左:浴槽の手前が気泡で床が見えないほど白濁している内湯
右:まるで滝のように大量のお湯が注がれる龍の湯口


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
41.6℃ pH7.65 686L/min(自噴) 成分総計1389mg/kg

山梨県甲斐市篠原477 地図
055-279-2611

9:00~21:45(受付は20:15まで・日曜は21:15まで) 月曜定休
500円
ロッカー・ドライヤー・シャンプー類あり

私の好み:★★★
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玉川温泉

2009年12月17日 | 山梨県


今回取り上げる玉川温泉は、北投石でおなじみの秋田県の方ではなく、山梨県にある小さな共同浴場です。甲府盆地に広がる田んぼの隅っこ、住宅地との境にこじんまりとした佇まいを見せており、現地へ行くまでには住宅地の狭隘な道路や田んぼの畦道を走らねばならず、ちょっとわかりにくいかと思います。駐車場は建物前に7台程、道の向こう側の空き地にも数台とめられます。

玄関を上がって受付のおばちゃんに料金を支払い脱衣所へ。小さめの建物なので、脱衣所もちょっと狭め、決して大挙して押し寄せるような場所ではありません。壁には何やら当地に関する説明の貼紙が掲示されており、そこには某温泉ファンのサイトに書かれたこの温泉を賞賛する紹介文とともに、この地が「武田二十四屋敷のひとつ金丸家の敷地内の庭先から湧出したものです」というちょっとした地誌案内も書かれていました。あれ?武田二十四将に金丸って含まれていましたっけ? 金丸家から分出した土屋昌恒なら確かに武田二十四将のひとりですが、土屋家を含め二十四将の屋敷はほとんどが甲府駅と武田神社の間(甲府城の北側)に位置しており、甲斐武田氏流である金丸家の屋敷跡はここではなくて南アルプス市(旧八田村)の長盛寺にあり、ついでに言えば、その金丸の血を受け継ぎかつては政界のドンでもあった金丸信も南アルプス市(旧白根町)出身です。いや、単に私の知識が足りないだけで、ここにも金丸の所領があったのかもしれません。事実、ここのオーナーは金丸さんのようですし、旧白根町や旧八田村とは釜無川を挟んで数キロの距離しか離れていないわけですし。

余計な歴史談義はさておき、この温泉浴場には小さいながらも温泉ファンの心をガッチリとつかむものがあるのです。それは浴槽から溢れ出すお湯の多さ。その量は半端じゃありません。脱衣所から浴室への引き戸をあけると、足元の床は洪水状態、いや洪水状態ではなく洪水そのものです。水深1センチはあるでしょう。まるで川の中に足を突っ込んでいるかのよう。浴槽は6~7人サイズの主浴槽と、ジェットバス付きで3~4人サイズの副浴槽のふたつで、それぞれに源泉が注がれています。特に主浴槽の湯口からは大量のお湯が投入され、これが洪水の源になっているわけです。浴槽や浴室がもう少し大きければこのような洪水現象はもう少し鎮まった形になっていたでしょうから、このこじんまりさが却ってオーバーフローの迫力を生み出しているわけです。

お湯は無色透明で、微かな塩味に僅かなほろ苦さ、そして甘みが感じられ、甲府盆地らしく弱めながらモールの匂いが漂っていました。また気泡も多く、体にはしっかりと泡つきも見られ、湯口付近のお湯は泡の多さで薄っすら白濁して見えるほどです。つるすべ感も良好、湯温がぬるめなので、入浴客はみなさんじっくりと長湯をしていました。湯上りはさっぱりし、かつなかなか湯冷めしにくいのも良いところです。なおカランは4つあり、カランから出てくるお湯も源泉です。

内湯のみで開放感はなく、外の景色はほとんど楽しめず、浴場としては面白みに欠けるかもしれませんが、甲府盆地の温泉の特徴であるモール感・つるすべ・泡付きを全て満たし、かつ洪水のようなものすごいオーバーフローを体感できるのですから、温泉ファンなら一度は足を運んでみても決して損はないかと思います。湯温や重曹の効果により、夏に入ると湯上りの清涼感がより楽しめると思います。


洪水のようにお湯があふれ出している浴室


大量のお湯を吐き出す湯口。付近のお湯は白濁してみえる。コップが置かれており飲泉可


脱衣所に貼ってあるこの温泉の説明


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
41.5℃ pH7.7 244L/min(動力揚湯) 成分総計1230mg/kg

山梨県甲斐市玉川1038-1 地図
055-276-5151

9:00~21:00 月曜定休
500円
ロッカーあり

私の好み:★★
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甲府昭和温泉ビジネスホテル

2009年12月16日 | 山梨県


中央道の下りを走っていると、甲府昭和インター手前の左手に「自噴天然 甲府昭和温泉」と書かれた建物が目に入ります。高速の側道に面して建っており、周囲には住宅以外何も無く、こんなところにビジネスホテルがあるのは場違いなような気がしますが、近くには国母工業団地があるので、それなりの需要はあるのでしょう。

ちょっと古めかしく、地味さとエキセントリックさが入り混じったB級感漂う外観で、玄関の自動ドアを入ると、センサーが感知して「いらっしゃいませ」という安っぽい人工音声がロビーに響いてしまう点も哀愁たっぷり。こんな機械は今時の施設では導入しません。玄関ロビー右手には、金色のロープに守られ、御影石の枠と白い玉砂利でできた台座に載せられ、あたかも鎮守様か美術品のように仰々しく展示されている温泉分析表が誇らしげに「披露」されています。


たいそう仰々しく展示されている温泉分析表


浴場入口はフロントすぐ脇にあり、脱衣所にコインランドリーが設置されているあたりがいかにもビジネスホテルです。浴室に入るとものすごい湯気で前方視界不良、でもプーンとモール泉の香りが鼻を突き、表に出ている「自噴」という言葉が持つ魅力も相俟って、おのずとお湯への期待が高まります。カランは7つでシャワー付き、シャンプー類も完備で、使い勝手は良好。カランと反対側にはサウナもありました。

浴槽は大きなL字形の主浴槽と3人サイズの小さな浴槽の二つに分かれ、小さな浴槽のお湯はかなりぬるめですが、主浴槽はちょうど良い湯加減です。この主浴槽の湯口がなかなかの見もので、富士山のような錐形のものが浴槽の真ん中に突き出ていて、その頂点からお湯が出ているのですが、自噴の言葉には偽りがないようで、間歇泉とまではいきませんが、それを彷彿とさせるかのようにゴボゴボと音を立てながら勢いよくお湯が跳ね上がっているのです。その量もなかなか豊富で、浴槽に供給されたお湯は贅沢にもそのまま掛け流しでオーバーフローさせています。

そのお湯は甲府盆地らしく薄い烏龍茶色をした透明で、弱い金気味と重曹の味に微かな硫黄の風味、そしてモール泉の匂いが感じられます。見た目から受ける印象を裏切らないツルスベの浴感が気持ちよく、残念ながら分析表に見られる遊離炭酸ガスの泡つきは感じられないものの(加水の影響か?)、湯口から噴き上がるお湯を見ながらこのお湯に浸かり、そして湯上りに泉質由来の温まりとさっぱり感を体感すれば、温泉ファンなら好評価を下すことは間違いないでしょう。建物はそこはかとなくB級感が漂い、露天は無く内湯のみですが、お湯は甲府盆地の温泉らしさがきちんと出ており、湯量も豊富なので、立ち寄る価値は十分にあるかと思います。

 
左:曇って見難いのですが、浴室の様子です
右:勢いよくお湯を吹き上げる湯口


ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
46.7℃ pH7.9 360L/min 成分総計1640mg/kg 

JR身延線・国母駅 徒歩15分(1.4km)
山梨県中巨摩郡昭和町押越2223 地図
055-275-7755
ホームページ

10:00~23:00 無休
500円
貴重品ロッカー・ドライヤー・シャンプー類あり

私の好み:★★
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