温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

白馬塩の道温泉 倉下の湯

2009年12月05日 | 長野県


信州北部を南北に貫く千国街道、通称「塩の道」は、日本海側の塩をはじめあらゆる物資を内陸に運搬する、あるいは内陸の産物を日本海側へ送るという役割を担い、海のない信州にとっては欠かすことのできない生命線でありました。往時の面影は殆ど消えてしまいましたが、小谷村と白馬村の境界付近には牛方宿が残されており、牛をつれて旅をする歩荷の人々の姿が偲ばれます。

さて、この塩の道を名乗った温泉「白馬塩の道温泉 倉下の湯」は、千国街道の塩島新田宿と千国宿の中間付近に位置する森の中にある、アクセスしやすい温泉入浴施設です。建物の外観はいかにも白馬らしくロッジ風で、駐車場はとても広く、温泉の湧出量が豊富なのか、建物の隣には源泉をタンクローリーへ充填する施設まであります。

玄関を入ると、まず受付で料金を支払い(支払う機械が置かれているのですが、訪問時は故障していたため直接受付で支払いました)、それとひきかえにメダルを貰い、それをゲートに投入することによって回転式ゲートを押し開けて入場するという、少々面倒な手順を踏んで中に入ります。
中は中央の休憩スペースを挟んで左が男性、右が女性に分かれており、また入浴スペースは洗い場エリアと浴槽エリアがきっちり二分されています。脱衣所を出たところにある洗い場エリアは左右両側にカランが計10ヶ所並び、中央に上がり湯(掛け湯)用の湯船が据えられています。この湯船には真湯が張られていますが、入ることはできません。洗い場エリアの奥が浴槽エリアで、浴槽は木製長方形のものが一つのみ、約15人サイズでしょうか、手前半分は屋根に覆われていますが、残り半分は露天になっており、手前側も実質的には半露天です。なお浴槽の一番奥は浅めになっているので、のぼせてしまって足元だけ温めて上半身を冷ましたいときなどには、ちょうどよい塩梅になっていました。お風呂の前には視界を遮るものが無く、八方尾根や白馬連山の美しい姿がダイナミックに広がり、そんな景色を眺めながらの湯浴みはとても壮快です。

湯口からドバドバとふんだんに掛け流されるお湯は薄い黄色を帯びて濁り、靄がかかったような感じになっています。土類系の匂い、そして湯口からは焦げたような匂いと油のような匂いが漂い、口に含むと塩味に出汁味、重曹味、炭酸味、そして弱めですが金気味が感じられました。このような知覚、そして蒸発残留13970mg/kgという数値が示す通り、このお湯はかなり濃厚で、湯口はもちろんのこと、浴槽の縁も、析出物でコーティングされ、とりわけ湯口にはあらゆる色を帯びた温泉成分が析出していました。濃いだけでなく、お湯に浸かると肌に細かい気泡も付着するので、これがお湯に中でスベスベ感をもたらしてくれます。このお湯は2500万年前の古代海水が地殻変動によってフォッサマグナの地下1000mに閉じ込められたものらしく、その長い歴史の中で成分が濃縮されていったのでしょう。そんな太古のお湯に会えるなんて、とってもロマンチックです(見方を変えれば、このままお湯を汲み上げ続けているといずれは枯渇してしまう、ということにも繋がるわけですが…)。

壮大な景色のもと、熱くも無くぬるくもない絶妙な湯加減だったので、私も他のお客さんもじっくり長湯。派手さはなく、アメニティーが揃っているわけでもないのですが、お湯の質や景色、そして得られる開放感が素晴らしいので、万人におすすめできる質実剛健的なお風呂だと思います。ただし、お湯が濃厚なので、長湯して湯あたりを起こさないようご注意を。


周辺施設へ配湯するタンクローリー用補給施設が隣接しています


洗い場と上がり湯(掛け湯)専用湯船


浴槽の様子(混んでいたので、遠くから控えめに撮影しました)


ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
48.1℃ pH7.14 蒸発残留13970mg/kg

長野県北安曇郡白馬村大字北城9549-8 地図
0261-72-7989

10:00~22:00
500円
シャンプー・ドライヤー・ロッカーあり

私の好み:★★★
コメント
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