温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

長崎温泉 やすらぎ伊王島

2009年12月22日 | 長崎県


かつては黒いダイヤと呼ばれた石炭もエネルギー革命以後、少なくとも日本ではすっかり陰の存在となってしまい、国内に数多く存在した炭鉱も釧路コールマインを除けば全て閉山されてしまいました。かつて炭鉱町として栄えたところは悉く閉山後の斜陽にあえぎ苦しみ、近年では夕張市の財政破綻が話題を呼びました。暗中模索の地域振興策の中でもポピュラーな例が観光開発であり、坑内に湧出して迷惑がられていた温泉を活用してレジャー施設を開発した常磐炭田跡の常磐ハワイアンセンター(現在はスパリゾートハワイアンズ)はその典型でしょう。

1941(昭和18)年に開鉱された長崎県の伊王島鉱山も日本の高度経済成長を支えた炭鉱の一つでしたが、1972(昭和47)年に閉山されると島の人口は激減し、一気に過疎地になってしまいます。危機感を募らせていた旧伊王島町は1989(平成元)年にリゾート開発という大博打に打って出ました。長崎港から20分という僅かな時間で離島気分と静かな時間を味わえる利点を活かしたわけです。その後温泉掘削にも成功し、今では低価格で楽しめるリゾート施設「やすらぎ伊王島」として集客に努めています。

このリゾート施設は日帰り入浴を積極的に受け入れています。まず長崎港大波止のターミナル内にある専用カウンターで受付を済ませ、料金(往復の乗船券と入浴料がセット)の支払いと引き換えに往路の乗船券と入浴チケットが手渡されます。これを手にしてコバルトクイーン号に乗船、女神大橋を潜り、左右に三菱の造船所をかすめ、約20分で伊王島に到着です。船着場にはリゾート地を意識した洒落た案内所とカフェがあります。港の北側にはオリーブが植えられた緑地帯が広がり、その中を3分程歩くと「やすらぎ伊王島」のエントランスです(船の到着に合わせて運転される無料送迎バスに乗ることもできます)。

 
左:長崎港大波止ターミナル内の専用カウンター
右:往路乗船券と入浴チケット

 
左:伊王島に着岸しようとするコバルトクイーン号
右:伊王島の船着場にあるカフェと案内所


玄関を入るとロビーがありますが、日帰り入浴客はここを素通りして、直接温泉棟へ向かいます。温泉棟の受付で入浴券を渡すと、それと引き換えにレンタルタオルと復路の乗船券が手渡されます。脱衣所はチーク調の落ち着いた内装でまとめられており、手入れが行き届いて清潔感に溢れています。洗面台にアメニティー類が揃っているのもありがたいところです(宿泊者も利用するので当然かもしれませんが)。
男湯の場合、内湯は真ん中に42~3℃の樽湯、窓際に石造り(縁は桧)と桧造りの方形浴槽がひとつずつ、左手にサウナ、そして一番奥に打たせ湯が設けられています。外に出ると、正面に大きな釜に湯を張った釜湯がふたつ、窓際に足湯、そして露天の主浴槽が据えられています。露天の各浴槽からは角力灘の海原、そして対岸に横たわる長崎半島の稜線や稲佐山の姿などが眺められ、非常に気持ちのよいロケーションです。

 
左:内湯の桧浴槽と樽湯
右:カランまわり

 
左:釜湯と露天風呂 海岸縁なので眺めがよく爽快
右:泡が立っている露天風呂の湯口付近


お湯はほぼ無色透明ながわ僅かに貝汁濁りが見られ、海水性の温泉らしくとてもしょっぱく、また口に強い苦味(ニガリの味)が残ります。お湯を掬って嗅いでみると硫化水素の匂いが感じられました。お湯の中では橙色の湯華が浮遊しており、また特に露天の湯口付近では泡つきもみられました。ナトリウム分ですべすべするかと思いきや、その倍の量が含まれているカルシウム分がつるすべ感を相殺して、結構ギシギシとした浴感。塩分が濃いだけあって湯上りは火照り、長湯すると湯疲れするかもしれません。入浴前後の水分補給を欠かさないようにしてください。私は体験しませんでしたが、リゾート施設らしくここでは各種エステのサービスも受けられ、酵素風呂・よもぎ蒸しパックなどもあるようです。

長崎と伊王島の正規往復運賃は1300円ですが、往復の船賃と入浴料そしてレンタルタオルがついて980円なのですから、相当安い価格設定ではないでしょうか。それでいてホスピタリティもなかなか充実しており、お風呂からの眺めはとても気持ちよく、お湯も塩素消毒されているものの源泉掛け流しを実施しているので、私はかなり高い満足度を得られました。長崎へ訪れの際はちょっと時間を割いて伊王島へショートトリップをしてみてはいかがでしょうか。


沖ノ島天主堂(聖ミカエル天主堂)。国登録有形文化財。1931(昭和6)年に建てられた伊王島を代表する建造物です。島の6割がカトリック教徒で、長崎市に吸収される前の旧伊王島町は日本で最もカトリック教徒の多い町でした。



カルシウム・ナトリウム-塩化物泉
44.7℃ pH7.4 720L/min(動力揚湯・深度1180m) 
塩素消毒 露天風呂は冬季のみ熱交換器で加温

長崎県長崎市伊王島町1丁目3277-7
095-898-2202
ホームページ

980円(往復乗船券・入浴料金・レンタルタオルがセット)
ドライヤー・ロッカー・シャンプー類あり

私の好み:★★★
コメント
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