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温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

越後下関駅の丁寧な職員さんと料金補充券

2012年01月22日 | 旅行記
 
前回記事まで3回連続(上関湯沢高瀬)で新潟県関川村の温泉について取り上げてきましたが、今回の当地訪問に当たってはJR米坂線を利用し、各温泉の最寄りとなる越後下関駅を温泉巡りの起終点に設定しました。この駅は関川村の玄関口に当たる駅であり、村役場にも近く、そうした事情のためか村内に存在する駅の中では唯一窓口が設けられている有人駅でもあります。


 
上述のように駅付近には役場がある他、駅前を線路と平行して伸びる旧米沢街道(小国街道)沿いには、米沢藩に融資をして武士身分を保証されていた豪商渡邊家の邸宅(渡邊邸)など、かつてここが宿場(下関宿)であった名残を留める光景が残っており、かつての宿場風情を味わいながら歴史散策することができます。とはいえ、重要伝統的建造物群に指定されているような他地域の有名な宿場と違って小規模であるため、わざわざ宿場散策のためだけに訪れると物足りなさを覚えるかもしれませんが、一部では電線地中化も行われたこともあって、現代的なものに邪魔されることなく風景を捉える事が出来ますから、近くを訪問したついでに立ち寄ってみると良いかと思います。



さて本題。越後下関駅は一応有人駅ですが、いわゆる簡易委託駅でして、窓口で対応しているのはJRの職員ではなく、関川村の職員さんが交代制で勤めていらっしゃいます。掲題で「駅員さん」とせず「職員さん」と表記したのはこのためです。

今月(2012年1月)の連休の某日、14:14着の列車からこの駅に降り立ったのは私一人だけでしたが、この日担当していた職員さんは、本屋側ホームで列車の発車を見送り、その後は私が跨線橋を渡って駅舎まで来るのをホーム上で待って、わざわざ駅待合室への扉を開けて下さいました。扉を開けてくださるという行為自体は小さな気遣いにすぎないように思われますが、他の駅ではなかなか経験できることではなく、そんなささやかな親切にとても感動してしまいました。

この駅の窓口にはマルス端末は無いもののPOSが設置されていることは事前に知っていたため、もしかしたらと淡い期待を抱きつつ、ホームから窓口内へ戻った先程の職員さんに「すいません、新幹線の指定席券は購入できますか?」と訊いてみると「時間がかかりますがよろしいでしょうか」との返答。私としてはこれから温泉を巡り、その後にこの駅へ戻って次の列車(次といっても何と3時間37分後!)に乗るつもりでしたので、戻ってからチケットを入手できれば何ら問題はありません。このことを告げると、職員さんもホッとした様子で対応をすすめてくれ、私から希望列車(MAXとき350号)と座席位置(2FのE席)を申し伝え、温泉巡りへと出かけました。



さて温泉を3軒梯子して駅へ戻ってくると、私の顔をしっかり憶えていてくれた職員さんはすぐさま発券済みの券を窓口へ用意してくれました。↑画像がその時に購入した新潟→高崎の新幹線特急券です。マルスが無いため、料金補充券での発券となります(というか、それを予め期待してたんですけどね)。手書きのきっぷは何度手にしても味があっていいもんです。
職員さん曰く私が希望していた2階E席は埋まっていたため1階のE席にしました、とのことだったのですが、その説明の際、2階の窓側を確保できなかったことに対し、職員さんはとても丁寧にお詫びしてくださったのです。席が埋まっていることは職員さんに責任があるわけじゃないのに、丁寧なお詫びの上、物腰柔らかな口調で「E席は2人掛のシートとなっております」「こちらの券では自動改札は利用できません」など懇切に説明してくださるものですから、下車時の待合室の扉のことと相俟って、この職員さんにめちゃくちゃ感激してしまいました。接客なんだからその程度は当たり前じゃん、と仰る方もいらっしゃるかと思いますが、駅によっては「発券なんて面倒臭い」という態度を露骨に表わす人に遭遇することも屡なので、つい感激の度合いが大きくなってしまったわけです。



ちなみにこちらは同時に発券してもらった乗車券です。感熱POSですね。1日6往復しか発着しない駅ゆえ、あんまり発券機会が無いのか、券の上端が若干黄ばんでいました。特急券・乗車券とも、高崎にて高崎観音が描かれた乗車記念印を捺してもらいましたが、乗車券に関してはパンチによる穴開け処理も行われました。最近ではJR東日本でも使用済み券の穴開け処理をするようになったんですね。

旅の玄関口でこの越後下関駅の職員さんのような方に出会えると、その村に対する好感がググっとアップしますね。ちょっと嬉しくなって今回の記事にしてしまいました。
というわけで越後下関駅でも料金補充券は入手できますが、どうかその手のマニアの方々には現地にて無茶な要求はしないでいただきたく切に願います。
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高瀬温泉 あらかわ荘

2012年01月21日 | 新潟県
新潟県関川村のえちごせきかわ温泉郷の中では最も大きな規模を有する高瀬温泉。10数軒の旅館が軒を並べている温泉街にも関わらず、どういうわけか温泉ファンによる紹介が少ないようでして、かく言う私も今まで訪問したことがありませんでした。前回取り上げた「湯沢温泉・角屋旅館」のお風呂を堪能させていただいた後、次に乗る予定の列車までまだ時間に余裕があったので、湯沢温泉から歩いて15分ほどの高瀬温泉へ立ち寄ってみることにしました。


県道307号線が荒川を跨ぐ橋の上から高瀬温泉を望む。背後に聳える飯豊連峰が秀麗です。



湯沢温泉から高瀬温泉へ歩く途中、荒川の土手の向こうでは太陽が沈もうとしていました。

 
県道をまっすぐ歩くと、まもなく高瀬温泉のウェルカムゲートが雪に半身をうずめながら「温泉街はこっちだよ」と言わんばかりにアームを右に向けていたので、その方向へと進みます。


一本道に沿って旅館や飲食店が軒を連ねていますが、廃業した店舗も多く、人影がほとんど見当たりません。静かで寂しいわ…。

 
温泉街の真ん中あたりには足湯が設けられた公園を見つけましたが、雪のため冬期は閉鎖。


今回お邪魔したのは温泉街の一番奥に位置する「あらかわ荘」です。外観にこれといった特徴は見当たりませんが…

 
玄関を入ってびっくり。綺麗で整然とした館内には、あちらこちらにウサギさんの立派な雛人形が飾ってあり、とってもメルヘンティックではありませんか。
呼び鈴を鳴らして日帰り入浴を乞うと、作務衣姿の従業員の方が快く対応してくれました。後で知ったのですが、こちらでは入浴用の回数券を発売しており、入浴のみの利用も積極的に受け入れているようです。


 
 
ウサギやネズミなど小動物系のかわいらしい人形が館内に随所にたくさん飾られています。おとぎの国に紛れこんじゃったのかしら、そんな面白い錯覚を味わいながら廊下を歩きました。床は畳敷きなので素足でも気持ち良く館内移動できますね。きめ細かい女性的な感覚に満ち溢れています。

 
かぎ状にクネクネ折れ曲がった廊下を進んだ突き当りがお風呂。浴室の入口傍にはフローリングの休憩スペース。

 
脱衣所もよく手入れが行き届いており、気持ち良く使うことができました。アメニティーも一通りそろっています。



訪問時は湯気が立ち込めており、思いっきり曇った画像しか撮影できませんでした。見づらくてごめんなさい。お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。露天風呂は無いようです。川側に大きなガラスが嵌められており、外の光がたっぷり入り込む明るい室内ですが、すぐ目の前で流れているはずの川は塀や堤塘によって視界を遮られているため、残念ながらその姿を眺めることはできません。
浴槽はお宿ご自慢の古代檜と称される檜材で造られたものでして、同時に10人以上は余裕で入れるような大きさを持ち、風格と共に重厚感を漂わせています。



洗い場にはシャワー付き混合栓が5基とスパウトのみの混合栓が1基(だったはずですが、記憶が定かではありません…)



曇って何を撮っているのかわかりにくくて恐縮ですが、これは湯口を撮影したものです。この湯口からお湯がドバドバ大量に投入され、浴槽の縁からしずしずとオーバーフローしています。しかし投入量の割には溢出量が少なく、あやしいなぁ…と訝しげに浴槽内を調べてみたら、案の定、底面に強力な吸引口を発見。どうやら新鮮な源泉を投入しながら循環も同時に行う、半循環のスタイルをとっているみたいです(ただし、この檜風呂に関しては湯使いに関する表示が無いため、断言は避けておきます)。
肝心のお湯ですが、無色透明ほぼ無臭で、微かな塩味が感じられます。温泉分析表には「硫化水素臭」と記されていますが、それは感じられず、やはり循環のためか或いは加水のためか、微塩味以外の個性はいまいち感じ取れませんでした。しかしながら、お肌のスベスベ感がはっきりとしており、しかも消毒っぽさも感じられないため、決して悪いお湯ではなく、むしろ実に絶妙な湯加減に調整されているため、お湯の個性にこだわらず、檜のお風呂でゆっくり寛ぎたい方には宜しいかと思います。



なお、檜風呂の大浴場とは別に、館内には貸切風呂もあります。このお風呂の名札にはわざわざ「掛け流し」と記されていたので、その書き方から推測すればやはり檜風呂は純然たる掛け流しじゃないんでしょうね。

檜風呂のお湯は掛け流しを求める温泉ファンのニーズを満たすには至らないような気がしますが、スタッフの方の愛想がよく、館内も随所に洒落れて繊細な和風のセンスが溢れているので、短時間の日帰り入浴ながら心身ともにホッコリできました。


高瀬混合(高瀬1号・2号の混合)
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 69.1℃ pH7.9 362L/min(動力揚湯、1号と2号の合計) 溶存物質2722mg/kg 成分総計2733mg/kg
Na:811.8mg(84.35mval%),
Cl:1053mg(70.86mval%), SO4:431.3mg(21.43mval%),
おそらく循環あり

JR米坂線・越後下関駅より徒歩30分(2.5km)
新潟県岩船郡関川村大字湯沢308  地図
0254-64-2118
ホームページ

10:00~20:00
500円
シャンプー類・ドライヤーあり

私の好み:★★
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湯沢温泉 角屋旅館

2012年01月20日 | 新潟県
今回取り上げるのは新潟県の湯沢温泉。といっても越後湯沢ではなく下越の関川村にある湯沢温泉です。あれ?この文言は以前もこのブログの記事で使ったことあるなぁ…。今回の記事では、前回取り上げた上関共同浴場のある上関集落から歩いて湯沢温泉へ向かう様子を順に追って行きながら、ささやかな旅行記風な体で記事を綴ってまいります。


越後下関駅から上関共同浴場の脇を通り、荒川に架かる橋で対岸へ渡ります。駅からここまで徒歩で15分くらい。欄干に雪がかぶさっているため川面が見えず、対岸の雪景色と同化しちゃっているため、この画像が橋の上で撮ったものであることはわかりにくいですね。


橋の下流側から右岸を眺めると、これから向かう湯沢の集落が一望できます。


橋を渡りきって左折すると湯沢温泉、右折すると高瀬温泉です。
実は私が冬にこの橋を歩いて渡るのは、これで2度目なんですよ。

 
付近のバス停は、待合室としてホームセンターで扱っているようなスチール物置が置かれていました。ちょっとユニークですが、合理的と言えば合理的ですね。なお土曜と休日は全便運休ですので、観光には使いづらいなぁ。


以前取り上げた湯沢温泉共同浴場を通過。


看板に従ってすぐ右のわき道へそれます。

 
共同浴場前の分岐をそれてから1分程度で温泉街に到着。駅からは徒歩30分程度でしょうか。この道沿いに旅館などが5軒ほどが肩を寄せるように固まって並んでいます。歓楽要素はおろか、商店すら1~2軒程度しかなく、温泉街と言うより単なる小さな集落と表現したくなる佇まい。


バス停には立派な屋根が設置されていますが、本数は少ない上、土曜休日は全面運休。


バス停に隣接している松岳寺の境内には昨年(2011年)に建立されたばかりの「関鉄之介就縛の碑」が雪に埋もれて、上半分だけをのぞかせていました。関鉄之介といえば、桜田門外の変で井伊直弼を襲撃した首謀者ですが、その後逃亡した彼が追手に捕まったのがこの湯沢温泉なんですね。幕末の歴史の一ページがこんなところにあっただなんて!



温泉街内の老人福祉施設「荒川いこいの家」にも温泉浴室があり、ここでも立ち寄り入浴可能。私はまだこちらを利用したことはありませんが、この日はパスし…



今回立ち寄り入浴でお邪魔したのは、温泉街の一番手前にある「角屋旅館」さんです。


看板が出ていなければ民家と見まがうような佇まい。格子の窓が立派な純和風の建物ですが、窓にはレースのカーテンがかかっており、もしかしたらお休みなのかもしれないと、玉砕覚悟で訪って日帰り入浴を乞うてみると、中から現れた女将さんが笑顔で快く受け入れてくださいました。



とっても整然とした館内の廊下。外観でも申し上げましたが、見方によっては民家のようでもあります。



途中にある洗面台にはフェイスタオルが積んであるのですが、女将さん曰く「タオルは自由に使ってくださいね」とのこと。300円しか支払っていないのにとっても恐縮しちゃいますが、「ご自分の濡れたタオルを持ち歩いて旅するのは不便でしょう」と有難い心遣いをしてくださったので、ご厚意に甘えて1枚使わせていただきました。



洗面所の隣、玄関からまっすぐ伸びる廊下の奥が浴室です。一室のみのため、貸切での利用です。内側から鍵がかけられますから、ロッカーは不要ですね。



やや古めながらも清潔でよくお手入れされた脱衣所。中小規模旅館の一般的な浴室とほぼ同じような広さが確保されていますが、貸切で使えたので、ちょっとした贅沢感が味わえました。



館内に掲示された案内には「加水加温循環消毒一切無し」という旨が記されていました。入浴前から期待に胸が膨らみます。



浴室は内湯の湯船がひとつ。床は石板貼りで、側面は煉瓦色のタイル貼り。入室すると湯気とともに金気の匂いがふんわり香ってきます。


 
洗い場にはシャワー付き混合栓が一つと、スパウトのみの水栓が2基。水栓金具は硫化して黒く変色しています。


 
浴槽は3人サイズで、φ75の塩ビの湯口からふんだんにお湯が注ぎこまれており、そのお湯は浴槽の端から常時オーバーフローながら床を赤茶色に染めていました。浴槽の容量に対して源泉投入量が多く、私が湯船に入ると豪快にザバーっと溢れだし、排水が追い付かずに洪水状態になってしまったほどです。
お湯は無色透明、洗い場に着色した色から想像できるように金気の匂いや味がはっきり感じ取れますが、この他にも硫黄らしいタマゴ的な匂いや味もしっかり伝わってきました。知覚面における金気とタマゴ感の混在は共同浴場とほぼ同じです。ま、同じ源泉だから当然といえば当然なのかも。


 
しかしながら、同じ源泉でありながら全く特徴が現れるとは限らないのが温泉の面白いところで、共同浴場で見られる湯の華は白いものだったのに対し、こちらのお風呂で浮遊していた湯の華は真逆の黒い羽根状のものでした。洗面器で掬うだけでこれだけ採れちゃうほど、湯船の中ではけっこうな数の湯の華がユラユラしていました。

弱いツルスベの浴感で、火照りもしなければぬるくもない、実に絶妙な湯加減です。はっきりとした個性の主張がみられるにもかかわらず、決してその個性が入浴中の体を刺激せず、むしろ優しくフンワリと包みつつ、穏やかに全身を温めてくれました。単純温泉だからといって侮ってはいけません。貸切であるのをいいことに、じっくりゆっくりこのお湯を独占して堪能させていただきましたが、関鉄之介の史跡といい良質なお湯といい、湯沢温泉という場所は無名ながらも山椒の小粒ような存在感を放っているようです。旅館の女将さんのお心遣いにも感謝です。おかげさまで素晴らしいお湯を楽しませていただきました。


1号井・2号井・3号井源泉の混合泉
単純温泉 47.5℃  pH7.5 湧出量測定不能(動力揚湯) 溶存物質969.2mg/kg 成分総計984.7mg/kg
Na:262.3mg(82.50mval%),  
Cl:204.2mg(42.60mval%), SO4:286.2mg(44.08mval%),

JR米坂線・越後下関駅より徒歩30分(2.3km)
新潟県岩船郡関川村大字湯沢708  地図
0254-64-2440

日帰り入浴時間不明
300円
シャンプー類あり

私の好み:★★★
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雲母温泉 上関共同浴場

2012年01月19日 | 新潟県

新潟県下越地方の関川村にある「上関共同浴場」でひとっ風呂浴びてきました。国道沿いにあるわかりやすい立地で、いままで何度か目の前を通り過ぎているのですが、その都度「どうせまた来れるだろう」と先送りしてしまい、なかなか訪れることがありませんでした。しかし1月の連休に「青春18きっぷ」で米坂線に乗っているとき、折角だから途中下車してこの施設へ足を運んでみようと思い立つに至り、越後下関駅から10分ほど歩いて現地へと向かいました。


 
国道沿いとはいっても、下越と置賜を直結する唯一の幹線道路ゆえに大型車がビュンビュン飛ばしているような道ですから路肩に駐車できるスペースは無く、かといって共同浴場を利用する集落の道路もご覧のように駐車できるような余裕がありません。浴場自体にも駐車場は付帯していませんから、自動車で訪問の際は、ここから数分歩いたところにある村民会館の駐車場を利用してください、とのこと。


 
この共同浴場は無人の施設です。昭和40年代から時計の針が止まっているかのような佇まいですね。玄関の引き戸を開けると、三和土の前に設けられたカウンターの上には料金機が置かれているのですが、そこに所定の料金である100円を入れると、けたたましいブザー音が館内に鳴り響きました。その音が「今入ってきた客はちゃんと料金支払ってますよ」という合図であることは容易に察しがつくのですが、予期せぬその大音響にたじろぐとともに、そのブザーが数秒間作動しつづける上にクイズで誤答したようなブーーという音なので、防犯装置が働いたんじゃないか、何か悪いことをしたんじゃないかという不安感を抱いてしまいました。



いかにも地域の共同浴場らしく脱衣所は至ってシンプル。掲示板には村のお知らせがたくさん貼ってありました。当然ながら利用者は地域のご老人ばかりで、訪問時も先客2人、後客が1人いらっしゃいましたが、みなさん明らかにOVER70と思しき方ばかり。このためか脱衣室内は膏薬の匂いが充満していました。


 
思いっきり曇った画像で見難く恐縮です。実際に浴室内は湯気がたっぷり立ち込めており、視界はわずか10mあるかないかという状態でした。冬という季節的な問題の他、天井が低く、換気もあまりよろしくないというこの浴室ならではの特徴も原因のひとつなのでしょう。お風呂は男女別の内湯がひとつずつ、男女の仕切りは曇りガラスです。内装は黒色基調で、昭和30年代チックな大小様々の丸いタイル貼り。浴槽は4人サイズ、底は一部のタイルが剥げており、その部分はモルタルで補修したまんまになっていました。
なお洗い場には水の蛇口が一つしかなく、上がり湯用のカランはありません。


 
男女仕切りの中央に小さな枡が取り付けられており、そこへ伸ばされたパイプから源泉が落とされています。投入量は多く、浴槽の脱衣所側の縁からしっかりオーバーフローしており、人が湯船に入るとお湯は勢いよく床全体へ溢れ出てゆきます。脱衣所の掲示によれば加水されているそうですが(加温循環消毒なし)、それでも湯口のお湯は熱く、熱いお湯が平気な私はそのままで湯船に浸かれましたが、地元の爺様方は口々に「あちぃな」とこぼしながら、蛇口を目一杯開けて水道水で薄めていました。
無色透明ほぼ無臭で、微塩味を有していますが、これとともに明礬のような薄い酸味が微かに感じられたのですが、これは一体何なのかしら…。湯中では茶色い小さな浮遊物が散見されます。使用している源泉は雲母温泉の1号と2号の混合泉でして、ということは以前に拙ブログで取り上げました「雲母共同浴場」と同じお湯が導引されているわけですが、引湯距離の長さのためか、あるいは加水のためか、この上関のお風呂は「雲母共同浴場」とは似て非なる質感を有しているようであり、私の実感としては正直なところ、雲母の方がお湯が持つ知覚や鮮度感がやや優れているように思いました。
とはいえ、このような外来者に媚びることにない鄙びた浴場が現役であるのは、温泉ファンとして非常に喜ばしいことですから、今後ともこの浴場が地元の方から末永く愛されることを祈りつつ、熱いお湯でのぼせた体を引きずるようにして、ここを後にしました。


雲母1号・2号混合泉
ナトリウム-塩化物・硫酸塩温泉 69.0℃ pH7.9 103L/min(動力揚湯) 溶存物質2079mg/kg 成分総計2097mg/kg
Na:589.2mg(78.02mval%),
Cl:790.0mg(68.62mval%), SO4:371.0mg(23.78mval%),

JR米坂線・越後下関駅より徒歩10分
新潟県岩船郡関川村上関  地図

6:00~21:00
100円
備品類なし

私の好み:★★
コメント (2)
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霧島湯之谷温泉 湯之谷山荘 

2012年01月18日 | 鹿児島県

温泉ファンの間で絶大な人気を誇る「湯之谷山荘」で一泊してきました。


 
国道から看板に従い車一台分の幅員しかない山道を数百メートル登ってゆくと、迷うことなく到着です。
最後は鋭角に曲がるので、大きな車で訪問する場合はそこだけちょっと要注意かも。
周囲は常緑広葉樹が茂る南国らしい植生の森林で、東日本ではあまりお目にかかれない自然の景色に異国情緒を感じながら、お宿の玄関を訪いました。


 
建物は山の傾斜に沿う形で3棟が段々になって並んでおり、一番下が本館(帳場・食堂・客室)、真ん中がお風呂、一番上が客室や炊事場です。今回通された部屋は一番上の棟の最奥で、6畳の和室。とてもよく清掃されており、冷蔵庫やテレビなど備品類も一式揃っています。なお料金プランは1泊2食10,500円です。


 
タオルや浴衣とともにシャンプー類も用意されていました。お風呂には備え置きが無いので、これを使うわけですね。館内電話は懐かしいダイヤル式です。



鹿児島県の温泉旅館らしく自炊も可能。館内には炊事場や洗濯機・乾燥機も完備。



ガスコンロはコインタイマー式。妙に煤けているのが、かえっていい味出してます。


 
瓦斯自動販売機っていう名前なんですね。初めて知りました。タイマーじゃなくて自販機という表現がちょっとユニーク。銘板の刻印によれば昭和62年に大阪東成区で製造されたもののようです。ガスのタイマーのようなニッチな需要に応える機械の多くは大阪の中小企業の手によって製造販売されていることが多いのですが、このような製品を目にするたび、縁の下の力持ちというべき関西の市井が持つ技術の底力を思い知らされます。



お風呂は露天風呂と内湯があるのですが、女将さん曰く「今だったら一番風呂を貸切で使えますよ」とのことだったので、まずは露天風呂から入浴させてもらうことにしました。露天の入口に「貸切中」の札を提げて利用します。



スリッパに履き替えて通路を歩くと…


 
森の中にちょこんと露天の浴槽が佇んでいました。いかにも貸切風呂らしくこじんまりとしており、浴槽も小さければ脱衣棚も必要最小限の用意しかありません。周囲は森ばかりですのでお風呂からの眺望は期待できませんが、屋根は棚の上しか覆っていませんので、浴槽の頭上は森の木々が枝を張るばかり、静かな環境の中で湯あみできました。
この岩風呂は2人サイズ、山側の岩の隙間から白濁したお湯が注がれています。日本人が大好きな美しい乳白色の濁り湯で、人が入ると底の沈澱が舞い上がって、浴槽中のステップすら見えなくなるほど強く濁ります。火山の噴気孔的な硫化水素臭が漂い、弱い酸味と砂消しゴム味、渋みとほろ苦み、そして弱炭酸味が感じられます。



自画撮りしてみました。いい湯だなぁ。



次にファン大絶賛の内湯へ。



余計なものは無いシンプルな脱衣所。



温泉風情たっぷりな総木造の浴室。無駄な装飾を一切排除した実に静かなで佇まいで、お湯に専念するための環境が整っていました。重厚感溢れる檜の浴槽には白い硫黄が付着し、室内には硫黄の香りが程よく満ちており、こんな雰囲気だけでも圧倒されてしまいます。浴槽は3つあり、手前が炭酸泉、奥が露天風呂と同じお湯である硫黄泉、そしてその間に挟まれた浴槽は両方からのお湯が流れ込む混合湯です。

硫化水素ガス対策なのか、側壁にはルーバー状の窓が嵌められており、常時換気されるようになっているのですが、風通しが良すぎてしまい、私が訪問した寒い日には室内が寒気で満たされて、深夜の入浴では身の縮まる思いをしてしまいました。また浴槽の隅っこに狭い洗い場があって、シャワー付き混合栓が2~3基ほど設けられているのですが、湯沸かし器の関係か、お湯が出るまで時間がかかり、それまでの間は寒さに震えながらひたすら待つほかなかったのがちょっとつらかったかな。



左の正方形の浴槽が炭酸泉。右の長方形が炭酸泉と硫黄泉の混合。後述しますがこの日の炭酸泉はほとんど水風呂に近い温度でして、夏でしたら気持ち良く入れるかと思いますが、小雪舞うようなこの日の天気では冷たくて堪らず、いきなり入れるような状態ではありませんでした。



右の大きな浴槽は硫黄泉、そして左が上でも写した混合泉の浴槽。硫黄泉がこの内湯の主浴槽であり、大きな檜の浴槽にはやや熱めの湯加減のお湯がドバドバ大量に注がれていました。露天風呂と同じ源泉を使用しているため知覚面は露天風呂の箇所にて述べたような内容とほぼ同一ですが、投入量が多くて浴槽内の流動が大きいためか沈澱は少なく、濁りはそれほど強くありませんでした。硫黄のために滑りやすいので、その点は要注意でした。


 
こちらは炭酸泉。一人しか入れない小さなものです。源泉温度は30℃程度らしいのですが、この時はそれよりはるかに低かったように思われます。湯口は湯中にもぐっているのですが、塩ビの配管なので簡単にクイッと向きを変えられます。洪水のようなオーバーフローが見られ、また浴槽の中ではお湯がグルグル渦をまいていたので、試しに湯口の向きを上にしてみたら、パイプからはご覧のようなすさまじい量の源泉が出ていました。圧巻です。

硫黄泉で十分体を温めてから、水風呂に入るような感覚で「エイ!」と掛け声をかけながら炭酸泉へと飛び込みました。お湯は綺麗に白濁しており、アイボリー色の湯の華が大量に舞っています。投入されるお湯の勢いが強いので、湯の華は単に浮遊するのではなく、底の方からグイっと対流するように渦を巻いているのです。湯船の中の我が身体は湯の華まみれになり、またそれとともに気泡も付着しはじめました。いかにも濃い硫黄のお湯らしく噴気孔的な硫化水素臭とともにタマゴ的な匂いと味も感じられ、また名前の通りに炭酸の味も強いのです。硫黄と炭酸が凌ぎあいながら共に強烈な個性を主張するこんなお湯は、他に類を見ないのではないでしょうか。水風呂が苦手な私ですら、いつまでも入っていたくなる程、不思議な心地よさに包まれました。温泉ファンの皆さんが絶賛する理由がよくわかります。


 
炭酸泉は湯口のバルブをひねると、湯口のお湯が上の配管へ切り替わり、打たせ湯へと変貌します。この時はそのお湯があまりに冷たく、滝行をして風邪をひきたくなかったので、残念ながら打たせ湯は遠慮しました。



硫黄泉と炭酸泉が混合する真ん中の湯船で、瞑目しながらお湯との対話に耽る私。ここは程よいぬるさで、両者の特徴を一緒に楽しめる欲張りな浴槽でした。まどろんでしまうこと必至。時間の経過を忘れてしまいました。こんな素晴らしいお湯を独り占め。幸せです。罰が当たって早死にするんじゃなかろうか…。



お食事は2食とも食堂でいただきます。
夕食は、黒豚・キノコ・野菜の鍋、肉と茄子の朴葉味噌焼き、茶碗蒸し、そば、小鉢などなど。


こちらは朝食。
野菜サラダや温泉タマゴがうれしいなぁ。山の宿らしい素朴な献立ゆえ、かえってご飯が進み、朝からお櫃を空にしてしまいました。


旅館としては地味な類に含まれるのかもしれませんが、なにしろお湯がこの上なく素晴らしい。お食事もおいしくお部屋もきれいでしたし、周囲には山林以外一切何もないので、静かな時間を過ごすにはもってこい。湯治宿と旅館を足して2で割ったような、両者のメリットをいいとこどりしたような施設でした。ここは泊まってじっくりお湯を堪能すべきお宿ですね。宿泊して正解でした。


硫黄泉
単純硫黄温泉(硫化水素型) 44.1℃ pH5.3 140L/min(自然湧出) 溶存物質0.534g/kg 成分総計0.985g/kg
Na:69.0mg(58.25mval%), Ca:24.9mg(24.08mval%),
SO4:134.0mg(51.01mval%), HCO3:143.6mg(42.96mval%),
遊離CO2:440.7mg, 遊離H2S:10.8mg,

炭酸泉のデータは確認できず

鹿児島県霧島市牧園町高千穂4970
0995-78-2852
ホームページ

日帰り入浴500円
10:00~14:00
ドライヤー・ロッカーあり

私の好み:★★★
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