鹿児島県との県境に近い県道102号沿いに立地している温泉施設で、宿泊・自炊もできる湯治宿としての側面も有しています。車で県道を走っていたら大きな縦型の看板が目に入ってきたので、立ち寄り入浴してみることにしました。なおここは京町温泉からやや離れた場所にあるため、温泉郷に含めてよいか微妙な場所なのですが、当ブログではとりあえず温泉郷のひとつとしてグルーピングさせていただきます。
余談ですが宮崎県えびの市と鹿児島県湧水町を結ぶ県道102号は、川内川に沿ってその右岸に伸びていますが、全体的に走りやすい道なのに、なぜか県境だけ故意に整備を放置したような狭隘区間となるのが奇怪です。縦割り行政が生んだ弊害なのかもしれません。
閑話休題、県道からちょっと登るアプローチを入ると、広い駐車場の向かいに帳場などがある本棟、その右の離れに湯屋棟が建ち並んでいます。朱色の瓦がとっても印象的。
九州の温泉らしく家族風呂が用意されており、10室利用できるんだそうです。しかもそれらの部屋はパンダやコアラ・ブドウ・イチゴなど、幼稚園のクラスのようなネーミングなんだとか。
私は一人利用なので、今回は家族風呂ではなく、大衆風呂を選びました。大衆風呂は本棟に隣接する別棟となっています。女湯側の入口扉の前に目隠しが建てられているさりげない配慮が素敵です。
宿のお風呂とはいえ、公衆浴場としての色彩が強く、脱衣室にもその雰囲気がたっぷり漂っていました。古風な造りですが、とてもよく手入れされており、気持ち良く使うことができました。
浴室は全面タイル貼り。特に目立った設備やオブジェなどは無く、至って実用的でシンプルですが、洗い場の床は濃い色(紺系)、側壁や天井は淡い色、という配色により、横方向の広がりを感じさせるとともに、安定感のある落ち着いた空間を生み出していますね。もっともこの配色はカラーコーディネートの基本だったりしますが、タイル貼りの公衆浴場は没個性で単調なカラーリングであることが多いので、こうした設計には素直にうれしくなります。
洗い場の水栓はシャワー付き混合栓が2基と、スパウトのみの混合栓が基。シャワーのうち1基だけ浴槽脇に離れて設置されていました。お湯の栓を捻ると源泉が出てきます。
浴槽は1:2に分割されており、湯口から出てくるお湯は、約半分がすぐ前の小さな槽へ、残りは竹の筧で広い方の浴槽へと運ばれており、これによって湯口一つで両方へお湯が供給されるようになっていました(この他、浴槽内の仕切りにも貫通穴が開いています)。広い槽には水の蛇口があり、また湯面の表面積も広いことから、湯口直下の小浴槽は熱くて、広い方が温度が低いのではないかと想定しましたが、実際には湯口から筧へ流れるお湯の量が多いためか、広い槽の方が熱い湯加減でした。
お湯はほぼ無色透明(タイルのために薄い茶色に見える)で、湯中では褐色の小さな湯の華がチラホラ舞っています。ほろ苦さと油っぽい味を有し、弱モール臭とミシン油のような匂いが感じられました。見た目・味・匂いなど知覚面はいずれも薄めですが、ツルツルスベスベの浴感はしっかりと肌に伝わり、心地よい湯あみが楽しめました。なお気泡の付着などは確認できませんでした。
南九州で吹上温泉といえば南薩の吹上町に湧く「吹上温泉」が思い浮かびますが、オーナーさんの故郷がその吹上町ご出身のため、故郷にちなんで吹上温泉と命名したんだそうです。
単純温泉 57.8℃ pH7.5 117L/min(掘削・動力揚湯) 溶存物質0.854g/kg 成分総計0.876g/kg
Na:154.0mg(67.92mval%), Ca:30.9mg(15.65mval%),
Cl:42.0mg(13.30mval%), HCO3:421.4mg(77.49mval%),
H2SiO3:132.7mg, 遊離CO2:22.0mg
JR吉都線・京町温泉駅より徒歩30分(2.2km)
宮崎県えびの市大字岡松字枯木迫427-2 地図
0984-37-0791
8:30~20:30
250円
備品類なし
私の好み:★★