温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

あきしげゆ

2012年01月23日 | 宮崎県

宮崎県えびの市の霧島北麓には広大な畑や畜産地帯が分布しており、雄大な景色の中で大自然を満喫できる清々しいところですが、私が訪れた2011年12月の時点でも牛舎の前などには石灰の白い粉が撒かれるなど、BSE禍の跡がまだ随所に残っており、私を含む世間があの騒ぎを忘却してしまった今でも、関係者各位の苦労が続いていることを思い知らされます。


 
さて、そんなだだっ広い耕地のど真ん中にポツンと佇む温泉入浴施設「あきしげゆ」に立ち寄ってきました。温泉ファンの間における評判が高いので一度行ってみたかったのです。建物の外観はやや草臥れており、駐車場にも車は1台停まっているのみ。なんだか寂しい…。



入口の扉には毛筆の貼り紙がたくさん掲示されています。どこから読んでよいのやら…。客に対するメッセージがてんこもりな施設は、不思議なオーナーさんが独特の雰囲気を醸し出していて、客側は一定の覚悟(というか警戒)を要する場合が多いのですが、こちらは果たしてどうなのでしょう?



中に入ると、館内には広いお座敷が開けていましたが、人の気配がありません。「ごめんください」と何度か声を張ってみると、奥から半纏を纏ったおばさんが現れ、三つ指ついて御挨拶、新設に入浴対応してくれました。小難しい人だったらどうしようと警戒していましたが、おばさんは礼儀正しく物腰の柔らかい優しい方でして、心配が全くの杞憂に終わりました。いや、そんな方に無駄な警戒してしまった自分が恥ずかしい…。

 
こちらは浴室入口付近の様子。


 
脱衣室。建物はログハウス調のつくり。浴室側や女湯側と天井部分が貫通しているため、壁で仕切られている向こう側各室の音がよく響いて聞こえてきます。


 
ここにも毛筆の説明書きがたくさん掲示。「すべりますのでご注意ください」という言葉とともに描かれているヒョロっとしたイラストがユニークです。また「モール泉炭酸泉でCO3が多くつるつるするのだそうです」「すばらしい温泉とお褒めの言葉をいただきました」と、温泉事情通が口にしたとされる伝聞をそのまま書いちゃっているところに、裏表なく実直なオーナーさんの人柄が顕れており、微笑ましいですね。ところでその温泉に詳しい方ってどなたなんでしょう?



お風呂は男女別の内湯と露天が用意されています。まずは内湯から。2方向ガラス張りの明るい室内には、縁が白木でそれ以外は白いタイル貼りの浴槽が据えられています。浴槽は2分割されており、手前側が浅く、奥は普通の深さ。両者の仕切りには穴があけられているので、双方の浴槽のお湯は同質です。画像には映っていませんが、見上げると目に入る梁がとても立派でして、100年ものの杉を使っているんだそうです。



カランはシャワー付き混合栓が6基。お湯のコックを捻ると源泉が出てきました。



浴槽の湯口は奥側の浴槽に設けられており、完全掛け流しのお湯がふんだんに掛け流されています。そのお湯は白木の縁から溢れ出ており、温泉成分の付着によって浴室内のタイルは薄らと茶色に染まっていました。
お湯の特徴ですが、薄い黄色の透明で、アルカリ性泉的な微収斂味とほろ苦み、そしてモール臭と弱タマゴ臭にミシン油臭が混在して感じられます。簡単に言えば、脱衣室内の毛筆貼り紙で書かれていたようにモール泉的な特徴が前面に出ているお湯でした。ヌルヌル感を伴うツルツルスベスベの非常に滑らかな浴感が実に心地よく、お湯に中で何度も自分の肌をさすってしまいました。また泡付きも激しく、湯船に1分も入らないうちに全身気泡まみれになっていました。分析表によれば遊離二酸化炭素は不検出ですので、この気泡は炭酸ガスではなく別の気体なんでしょうが、この気泡のおかげでスベスベ感が余計に強調され、ややぬるめの湯加減も相俟って、非常に心地よい夢心地の入浴時間が過ごせました。



こちらのご自慢は、泉質のみならず、雄大な大自然に抱かれた露天風呂もそのひとつです。



長閑で開放的なロケーションもさることながら、160年前に造られた醤油樽を転用させた浴槽が実に面白く、単に珍しいのみならず、この樽が両手を広げて腕を掛けると丁度良いサイズなので、樽だからと言って窮屈感が無く、むしろ悠々とした姿勢でじっくり入浴できました。


なお樽の露天風呂にはサブ浴槽として小さい物もありましたが、こちらはかなりぬるく、お湯がなまっているように感じられたので、今回の入浴はパスしました。若干傾いで見えるのは、映り方の問題ではなく、実際に傾いているためです。

そよ風に吹かれ、小鳥の囀りを耳にしながら、牧歌的な景色の中でのんびりと湯あみができるのは、この上ない極楽気分。しかもそのお湯がモール的となると、なお一層爽快です。温泉ファンの評判が高いのも頷ける一湯でした。


アルカリ性単純温泉 湧出温度不明 pH8.6 溶存物質0.5983g/kg 成分総計0.5988g/kg
Na:130.5mg(92.66mval%),
HCO3:290.3mg(79.47mval%), CO3:30.1mg(16.69mval%),
H2SiO3:123.7mg, 遊離CO2:ND

宮崎県えびの市浦146  地図
0984-37-1171
ホームページ

10:00~16:00 毎月7・8・9日休業
500円
ロッカー・シャンプーあり(ボディーソープや石鹸は無し)、ドライヤーは貸出

私の好み:★★★
コメント
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