鹿児島県・霧島の新川渓谷温泉郷を形成する温泉地のひとつ日之出温泉には、日帰り入浴と食堂を兼ね備えた「きのこの里」が1軒あるのみなんだそうですが、そんな基本的知識も知らず、ただ単に「温泉入りてぇなぁ」「昼めし食いてぇなぁ」とつぶやきながら車で国道を走っていたら、たまたまこの「きのこの里」が目に入ってきたので、何の予習もせず立ち寄ってみることにしました。ちなみにここから数百メートル下ればちょっとした野湯がありますよ。
建物は古民家調の落ち着いたファサードで、食堂や温泉浴場の他、離れにはカフェも併設されているようです。玄関を入った目の前は食事処で、そばの手打ち製麺所では元気で明朗なご主人がお蕎麦を打っていますが、その直前には料金箱が置かれており、お釣りが無ければそこに小銭を入れて、すぐ左にある階段で下りていきます。小銭が無いときは食事処の従業員さんに声をかければ大丈夫。スタッフのみなさんはとっても愛想良く接してくれました。
階段を下りたフロアにはこのような休憩室(有料)が。これらの前を通り過ぎて、一旦本棟から出ます。
浴室は別棟です。一応外へ出る構造になっていますが、距離は短いですし、屋根もかかっていますので、雨でも心配ご無用。
お風呂は男女別の内湯が一室ずつ。脱衣所は意外とシンプル。ロッカーが設置されている程度で、余計なものはほとんどありません。まるで共同浴場みたいです。
浴槽は2つに分かれており、ヘンテコな喩えで恐縮ですが、双翅目の昆虫の羽のような形状をしています。この時の男風呂は、右側がややぬるめ、左側が丁度良い湯加減でした。両浴槽とも浴槽の縁から上部排湯により放流式の湯使いとなっています。
二つの浴槽の真ん中に湯口があり、源泉が両方の湯船へと注がれています。浴槽の容量に対して十分な投入量が確保されているので、お湯の鮮度感は抜群です。知覚面ではこの界隈ではよくみられる典型的な重炭酸土類泉の特徴を有しており、視覚的にはオロナミンCのような黄土色に濁り、湯中では赤茶色の浮遊物もチラホラ舞っています。薄い塩味+金気味+石灰味+炭酸味+燻したようなお焦げ味、そして土気臭+金気臭に微かな焦げ臭が感じられました。キシキシ引っかかる浴感ですが弱めながらもスベスベ感が混在していました。なお泡付きは確認できませんでした。
床タイルはオーバーフローの温泉による成分析出により、鱗状の石灰華が形成されていました。まだこのお風呂はそれほど古いわけではないかと思いますが、それでもこのような立派な析出ができるのですから、このままいけば今後はもっとゴテゴテの石灰華が期待できるかもしれませんね。
ちなみに日之出温泉は約200年前から利用されてきた歴史ある温泉なんだそうでして、現在でも源泉は敷地内で自噴しているそうです。
渓谷を見下ろすテラスには、露天風呂こそ無いものの、清冽な水が張られた水風呂が設置されていました。
天降川が刻んだ渓谷はとても美しいですね。露天風呂が無いのが残念ですが、このテラスに出て、お湯で火照った体を冷ましながら、渓谷の美しさをのんびり眺望するのも、なかなか乙なもんです。
湯上りに打ち立てのおそばをいただきました。注文したのは「冷やしきのこそば」(920円)。
さすがにたった今手打ちしたばかりのお蕎麦だけあって、歯ごたえが良く、香りも佳し。この冷やしそばはおつゆを上から掛けるタイプのもので、そのおつゆで使われていた醤油が九州らしい甘味とトロミの強いものでしたが、私はこの九州のお醤油が大好きなので、おつゆを含め、とっても満足していただくことができました。
ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩温泉 51.2℃ pH7.0 溶存物質1870mg/kg 成分総計2013mg/kg
Cl:144.6mg(17.62mval%), HCO3:1050mg(74.31mval%),
Na:203.9mg(37.68mval%), Mg:84.3mg(29.48mval%), Ca:148.6mg(31.52mval%),
遊離CO2:143.0mg
国分・鹿児島空港などからいわさきバス「日之出温泉」バス停下車すぐ
鹿児島県霧島市牧園町宿窪田3697-3 地図
0975-77-2255
10:00~20:00 火曜定休
200円
ロッカー有料(10円)、他の備品類なし
私の好み:★★