温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

霧島湯之谷温泉 湯之谷山荘 

2012年01月18日 | 鹿児島県

温泉ファンの間で絶大な人気を誇る「湯之谷山荘」で一泊してきました。


 
国道から看板に従い車一台分の幅員しかない山道を数百メートル登ってゆくと、迷うことなく到着です。
最後は鋭角に曲がるので、大きな車で訪問する場合はそこだけちょっと要注意かも。
周囲は常緑広葉樹が茂る南国らしい植生の森林で、東日本ではあまりお目にかかれない自然の景色に異国情緒を感じながら、お宿の玄関を訪いました。


 
建物は山の傾斜に沿う形で3棟が段々になって並んでおり、一番下が本館(帳場・食堂・客室)、真ん中がお風呂、一番上が客室や炊事場です。今回通された部屋は一番上の棟の最奥で、6畳の和室。とてもよく清掃されており、冷蔵庫やテレビなど備品類も一式揃っています。なお料金プランは1泊2食10,500円です。


 
タオルや浴衣とともにシャンプー類も用意されていました。お風呂には備え置きが無いので、これを使うわけですね。館内電話は懐かしいダイヤル式です。



鹿児島県の温泉旅館らしく自炊も可能。館内には炊事場や洗濯機・乾燥機も完備。



ガスコンロはコインタイマー式。妙に煤けているのが、かえっていい味出してます。


 
瓦斯自動販売機っていう名前なんですね。初めて知りました。タイマーじゃなくて自販機という表現がちょっとユニーク。銘板の刻印によれば昭和62年に大阪東成区で製造されたもののようです。ガスのタイマーのようなニッチな需要に応える機械の多くは大阪の中小企業の手によって製造販売されていることが多いのですが、このような製品を目にするたび、縁の下の力持ちというべき関西の市井が持つ技術の底力を思い知らされます。



お風呂は露天風呂と内湯があるのですが、女将さん曰く「今だったら一番風呂を貸切で使えますよ」とのことだったので、まずは露天風呂から入浴させてもらうことにしました。露天の入口に「貸切中」の札を提げて利用します。



スリッパに履き替えて通路を歩くと…


 
森の中にちょこんと露天の浴槽が佇んでいました。いかにも貸切風呂らしくこじんまりとしており、浴槽も小さければ脱衣棚も必要最小限の用意しかありません。周囲は森ばかりですのでお風呂からの眺望は期待できませんが、屋根は棚の上しか覆っていませんので、浴槽の頭上は森の木々が枝を張るばかり、静かな環境の中で湯あみできました。
この岩風呂は2人サイズ、山側の岩の隙間から白濁したお湯が注がれています。日本人が大好きな美しい乳白色の濁り湯で、人が入ると底の沈澱が舞い上がって、浴槽中のステップすら見えなくなるほど強く濁ります。火山の噴気孔的な硫化水素臭が漂い、弱い酸味と砂消しゴム味、渋みとほろ苦み、そして弱炭酸味が感じられます。



自画撮りしてみました。いい湯だなぁ。



次にファン大絶賛の内湯へ。



余計なものは無いシンプルな脱衣所。



温泉風情たっぷりな総木造の浴室。無駄な装飾を一切排除した実に静かなで佇まいで、お湯に専念するための環境が整っていました。重厚感溢れる檜の浴槽には白い硫黄が付着し、室内には硫黄の香りが程よく満ちており、こんな雰囲気だけでも圧倒されてしまいます。浴槽は3つあり、手前が炭酸泉、奥が露天風呂と同じお湯である硫黄泉、そしてその間に挟まれた浴槽は両方からのお湯が流れ込む混合湯です。

硫化水素ガス対策なのか、側壁にはルーバー状の窓が嵌められており、常時換気されるようになっているのですが、風通しが良すぎてしまい、私が訪問した寒い日には室内が寒気で満たされて、深夜の入浴では身の縮まる思いをしてしまいました。また浴槽の隅っこに狭い洗い場があって、シャワー付き混合栓が2~3基ほど設けられているのですが、湯沸かし器の関係か、お湯が出るまで時間がかかり、それまでの間は寒さに震えながらひたすら待つほかなかったのがちょっとつらかったかな。



左の正方形の浴槽が炭酸泉。右の長方形が炭酸泉と硫黄泉の混合。後述しますがこの日の炭酸泉はほとんど水風呂に近い温度でして、夏でしたら気持ち良く入れるかと思いますが、小雪舞うようなこの日の天気では冷たくて堪らず、いきなり入れるような状態ではありませんでした。



右の大きな浴槽は硫黄泉、そして左が上でも写した混合泉の浴槽。硫黄泉がこの内湯の主浴槽であり、大きな檜の浴槽にはやや熱めの湯加減のお湯がドバドバ大量に注がれていました。露天風呂と同じ源泉を使用しているため知覚面は露天風呂の箇所にて述べたような内容とほぼ同一ですが、投入量が多くて浴槽内の流動が大きいためか沈澱は少なく、濁りはそれほど強くありませんでした。硫黄のために滑りやすいので、その点は要注意でした。


 
こちらは炭酸泉。一人しか入れない小さなものです。源泉温度は30℃程度らしいのですが、この時はそれよりはるかに低かったように思われます。湯口は湯中にもぐっているのですが、塩ビの配管なので簡単にクイッと向きを変えられます。洪水のようなオーバーフローが見られ、また浴槽の中ではお湯がグルグル渦をまいていたので、試しに湯口の向きを上にしてみたら、パイプからはご覧のようなすさまじい量の源泉が出ていました。圧巻です。

硫黄泉で十分体を温めてから、水風呂に入るような感覚で「エイ!」と掛け声をかけながら炭酸泉へと飛び込みました。お湯は綺麗に白濁しており、アイボリー色の湯の華が大量に舞っています。投入されるお湯の勢いが強いので、湯の華は単に浮遊するのではなく、底の方からグイっと対流するように渦を巻いているのです。湯船の中の我が身体は湯の華まみれになり、またそれとともに気泡も付着しはじめました。いかにも濃い硫黄のお湯らしく噴気孔的な硫化水素臭とともにタマゴ的な匂いと味も感じられ、また名前の通りに炭酸の味も強いのです。硫黄と炭酸が凌ぎあいながら共に強烈な個性を主張するこんなお湯は、他に類を見ないのではないでしょうか。水風呂が苦手な私ですら、いつまでも入っていたくなる程、不思議な心地よさに包まれました。温泉ファンの皆さんが絶賛する理由がよくわかります。


 
炭酸泉は湯口のバルブをひねると、湯口のお湯が上の配管へ切り替わり、打たせ湯へと変貌します。この時はそのお湯があまりに冷たく、滝行をして風邪をひきたくなかったので、残念ながら打たせ湯は遠慮しました。



硫黄泉と炭酸泉が混合する真ん中の湯船で、瞑目しながらお湯との対話に耽る私。ここは程よいぬるさで、両者の特徴を一緒に楽しめる欲張りな浴槽でした。まどろんでしまうこと必至。時間の経過を忘れてしまいました。こんな素晴らしいお湯を独り占め。幸せです。罰が当たって早死にするんじゃなかろうか…。



お食事は2食とも食堂でいただきます。
夕食は、黒豚・キノコ・野菜の鍋、肉と茄子の朴葉味噌焼き、茶碗蒸し、そば、小鉢などなど。


こちらは朝食。
野菜サラダや温泉タマゴがうれしいなぁ。山の宿らしい素朴な献立ゆえ、かえってご飯が進み、朝からお櫃を空にしてしまいました。


旅館としては地味な類に含まれるのかもしれませんが、なにしろお湯がこの上なく素晴らしい。お食事もおいしくお部屋もきれいでしたし、周囲には山林以外一切何もないので、静かな時間を過ごすにはもってこい。湯治宿と旅館を足して2で割ったような、両者のメリットをいいとこどりしたような施設でした。ここは泊まってじっくりお湯を堪能すべきお宿ですね。宿泊して正解でした。


硫黄泉
単純硫黄温泉(硫化水素型) 44.1℃ pH5.3 140L/min(自然湧出) 溶存物質0.534g/kg 成分総計0.985g/kg
Na:69.0mg(58.25mval%), Ca:24.9mg(24.08mval%),
SO4:134.0mg(51.01mval%), HCO3:143.6mg(42.96mval%),
遊離CO2:440.7mg, 遊離H2S:10.8mg,

炭酸泉のデータは確認できず

鹿児島県霧島市牧園町高千穂4970
0995-78-2852
ホームページ

日帰り入浴500円
10:00~14:00
ドライヤー・ロッカーあり

私の好み:★★★
コメント (8)
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