温泉逍遥

思いつきで巡った各地の温泉(主に日帰り温泉)を写真と共に紹介します。取り上げるのは原則的に源泉掛け流しの温泉です。

トルコ高速鉄道(YHT)の旅 後編(YHTとバスを乗り継いでアンカラからブルサへ)

2015年01月22日 | トルコ
前編からの続きです。

 
アンカラ駅舎内はさすがに首都の鉄道駅だけあって威風堂々たる構え。中央ホールの天井にはトルコ高速鉄道(YHT)の大きな写真が社紋とともにプリントされていた。このホールの左右にチケットカウンターがあるほか、正面奥のカウンターにはインフォメーションやYHT接続バスを運行するキャミルコチ(大手バス会社)のカウンターも設けられていた。ということはここでYHT接続バスのチケットも購入できるはず。いや、私のようにYHTとバスを分割して購入するのではなく、本来は鉄道のカウンターで一括購入するものなのかもしれない。


 
アンカラ駅におけるYHTの発着ホームはセキュリティの関係で1番線に限定されている。ホーム入場の際には手荷物検査を受ける。チケットを提示して金属探知ゲートを潜り、手荷物をX線検査機に通す。とはいえ検査は飛行機ほど厳しくなく、多少は並ぶけれども流れは早い。あくまで凶器や火気の持ち込みを取り締まっているにすぎず、液体持ちこみなど不問のようであり、私は駅の売店でサンドイッチとジュースを買い込んでバッグに入れておいたが、まったく問題なかった。



これがYHTのチケットである。先日拙ブログで取り上げた夜行列車のチケットと一緒に、予めイスタンブール旧市街のシルケジ駅で購入しておいた。アンカラからエスキシェヒルまで、何と27.5リラ(1400円強)という破格の安さ! 同じ金額で東京圏のJRだったら、東海道線の普通列車で国府津までしか行けない。



私が乗ったのは16:45発のエスキシェヒル(Eskişehir)行。
車両はスペインCAF社製のHT65000系電車。



YHT乗車ホームの1番線はセキュリティのため、このようにガラスで仕切られている。


 
YHTにはエコノミークラス(2等車)とビジネスクラス(1等車)が設定されているはずだが、私が乗ったエスキシェヒル行きの列車はエコノミーのみのモノクラス編成であった。
車内には2+2のリクライニングシートが並んでいるが、ヨーロッパの列車に多く見られるような集団見合型で固定されており、座席の向きは変えられない。なお出入口ドアの両脇には荷物置き場があり、大きなスーツケースはそこへ置くことができる。


 
私が指定された6Cという座席は、集団見合型の中央部の通路側にあたり、テーブルを挟んで前の席と向かい合わせになっているのだが、幸いにも進行方向に対して順行であり、大きなテーブルが使えた上、足元にも余裕があったので、かなり楽な姿勢で乗車できた。他の座席でも、シートのサイズやシートピッチは日本の新幹線と大差ないようである。ただシートの材質がスポンジみたいで安っぽかった。


 
ほぼ定刻通り(16:45)にアンカラを発車。YHTは開業してまだ数年しか経っていないが、既に国民に受け入れらているのか、ざっと見たところ8割近い乗車率であった。動き始めてしばらくすると、蝶ネクタイを締めたお兄さんが車内販売のワゴンを押してきた。バスと違って有料であるから、今回私は車内販売に手を出していない。

天井には広告などが映されるモニターが設置されており、右上には現在のスピードも表示される。出発して約30分後に車内モニターのスピード計が251.3km/hを記録した。これがこの列車の最高速度であった。YHTは200km/hを超えるようなると、ヨーイングがはっきり現れてかなり揺れ、カーブでは遠心力で外側へ持って行かれそうになり、蓋をあけっぱなしのペットボトルが倒れかかって非常に慌てた。たまに下から突き上げるような衝動もあり、走りが硬くてゴツゴツガラガラうるさい。新幹線を利用するたびに爆睡する私も、このYHTでは不安を覚えてちっとも寝られなかった。このHT65000系電車のベースになったスペインAVEの120系に乗ったことがないので、車両側の問題に関して具体的な言及はできないが、高速鉄道は車両性能もさることながら路盤の整備が非常に重要であり、どれだけ車両が高性能であっても、路盤の良し悪しが高速走行の状態に大きな影響を与えるから、あくまで私の邪推であるが、おそらく車両より路盤に問題があるのではないかという気がする。


 
18:15に終点エスキシェヒルへ到着。定刻は18:06だから9分遅れ。YHTの他の列車はイスタンブールのペンディッキまで運行しているが、この列車はここが終点。数ヶ月前までは(コンヤ行以外の)全列車がこのエスキシェヒル行であった。



今回の乗車で高速走行時の揺れと同じくらいに気になったのが、アルストムのジャケットを着たスタッフである。上画像はエスキシェヒル駅のホームで後ろ姿を撮ったものだが、走行中の車内でもこのジャケットを着た複数のスタッフがしきりに歩いていた。アルストムといえば、フランスを代表する世界的重電メーカーであり、本国でTGVを開発して以来、世界中へ高速鉄道を売り込んでいることでも有名だ。
トルコ共和国首相府投資促進機関(ISPAT)の日本語サイトにはアルストムに関して言及しているページがあり、そこには特にYHTに関する記載はないものの、上述のようにYHTのHT65000系はスペインの120系をベースにしてスペインCAF社で製造されており、その120系をはじめとするAVE(スペイン新幹線)の多くはアルストムが製造を担っているから、このYHTにもいっちょ噛んでいることは想像に難くない。海外旅行で鉄道を利用するたび、このアルストムをはじめ、シーメンスやボンバルディアといった鉄道界三巨塔の存在感に圧倒される。鉄道王国日本で生まれ育った者としては、是非とも日本勢に頑張って欲しいが、なかなか上手くいかないものだ…。


 
放物線を描く天井が印象的なエスキシェヒル駅舎を抜けて構外に出ると…


 
駅前にはキャミル・コチのバスが2台縦列駐車していた。どちらもブルサ行きと表示されていたので、バスのスタッフにチケットを見せながらどちらへ乗るべきか尋ねたところ、前の方へ乗れと指示された。なるほど、前のバスのフロントガラスには小さいながら、トルコ国鉄・キャミルコチ両社のロゴとともに、"YÜKSEK HIZLI TREN BURSA BAĞLANTI OTOBÜSÜ"(高速鉄道 ブルサ 接続バス)と書かれた紙が貼られていた。

満席のバスは18:30にエスキシェヒル駅前を出発。出発してしばらく経つと、トルコのバスではお馴染みの車内サービスが開始されたが、他社と異なりキャミルコチは、バスにもかかわらずワゴンで車内サービスを行うことで知られており、この接続バスでもおデブちゃんのスタッフが、揺れるバスの中で踏ん張りつつ、後部出入口のステップ脇にある収納庫からワゴンを取り出し、座席上の荷棚から紅茶のティーバッグや砂糖などが収められたビニール袋を鷲掴みにしてワゴンにセッティングし、前方座席から順々にサービス提供を行っていった。


 
途中どこかの街でお客さんを数名降ろす。この接続バスの途中停車は一箇所のみ。
ブルサのオトガルには20:50に到着した。この街のオトガルも大規模だ。



ブルサのオトガルから街の中心部へ向かうには、10km以上南下しなければならない。両地点を結ぶ公共交通機関は路線バスのみ。しかもこの晩、私は中心部から更に南西へ入ったチェキルゲ地区のホテルを予約しているので、街の中心部までバスで行ったとしても、そこから更に乗り換えをしなければならない。でも既に時計は夜9時を指そうとしている。この日は朝から移動移動でとても疲れ、街中でレストランを探すのが面倒になってしまったので、オトガルのターミナルビル内にあるロカンタ(食堂)で夕食をとり、タクシーでホテルへ直行してしまった。

次回記事からはブルサ近郊にあるトルコきっての温泉地、チェキルゲ温泉について取り上げてまいります。
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