スルタニエ温泉からダルヤンの街へ戻る途中に、当地のもう一つの温泉である「ダルヤン泥温泉」にも立ち寄ってみることにしました。ダルヤンから舟で10分ほど川を遡ったところにあり、街から大して離れていないのですが、街は左岸にあるのに対し、温泉は右岸、つまり対岸に位置しており、橋も架けられていないので、ここへ行くなら舟を使う他ありません(思いっきり遠回りすれば陸路も可能ですが)。
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スルタニエ温泉からダルヤンの街へ戻るルートの途中にあるので、せっかく舟を貸し切ったんですから、温泉をハシゴしない手はありません。私は水着のまま舟に乗り込み、スルタニエから約30分ほどでダルヤン泥温泉に到着です。船頭さんが船着場へ舟を舫ります。
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エントランスに立てられている看板にご注目。シャンプーや石鹸は使用禁止です。シャワーの水を含め、お湯は全て川へ排湯されるので、環境保護のために泡立つものは使えないわけです。緑に囲まれた窓口のお兄さんに5リラを支払い入場します。
エントランスから食堂を抜けて入浴ゾーンへ。水路でアクセスする施設だからか、装飾としての船具が随所に見られました。
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ダルヤンはビーチリゾート地ですから、夏が観光の最盛期であり、私が訪れた秋は一気に客足が減って静かになるのですが、付近にギリシャ・ロードス島への足がかりとなる観光地マルマリスがあるためか、シーズンオフでも欧州各地から訪れる観光客が一定程度おり、この日も温泉を巡るツアー客が陽気に湯浴みを楽しんでおりました。前回のスルタニエおよびこの泥温泉では、いわゆる東洋人顔は全く見かけませんでしたし、ほとんどがツアー客のようでしたから、一人で舟を借りきって温泉めぐりをする極東人の私は、意外と奇特な存在だったかも。
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(右(下)画像はクリックで拡大)
左(上)の左側に写っているおじさんは、露天風呂の監視員です。まるでカミさんから追い出されて覇気を失った亭主のように、所在なさげに座っているのですが、そんな外見とは裏腹に、お客さんの動向には眼光炯々、特にスリッパで入浴ゾーンへ入ろうとしたり、後述する泥湯の泥を付けたまま露天風呂へ入ろうとする客がいれば、その都度しっかり声をかけて注意していました。
おじさんが腰掛けている背後には、大きいながらも大した内容が書かれていない簡単な分析表が掲示されています。これによれば、温度は39℃、ナトリウムイオン11.44g, カルシウムイオン1.108g、塩化物イオン20.140g、硫酸塩イオン2.735gとのこと。スルタニエ温泉のように濃い目の食塩泉のようです。データの下に記されている文章の冒頭には"BITTE"と書かれていますね。ということはドイツ語じゃないですか。グーグル先生に翻訳してもらったところ、まず泥を落としてから温泉に入って下さい、という内容なんだそうです。ということは、この温泉はドイツ系の訪問客が多いのかしら(ドイツにも温泉は多いですからね)。
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画像左(上)に写っている、ズラリと並んでいる小さな小屋は、更衣用の個室です。でも暗くて狭いので、私は他の視線が届かない建物の影でササッと着替えちゃいました。
一方、画像右(下)の、樹の枝を重ねて屋根にしている施設は、地面がビショビショに濡れていることから想像がつきますが、シャワーです。シャワーといっても、お湯なんて親切なものは出てきません。ただの冷たい水であり、コックを開けるとドバっと吐き出されるシンプルなタイプのものです。後述する泥湯で体中が泥まみれになりましたら、この冷水シャワーで冷たさを怺えながら泥を洗い落とします。
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ダルヤン泥温泉には泥湯と普通の温泉露天風呂という2つの浴槽がありますが、まずは名物の泥湯から入ってみることにしました。スルタニエの泥湯は湖畔でしたが、こちらは山裾であり、はるかに大きくて立派です。
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スルタニエと違うのは大きさばかりじゃありません。こちらの泥は塊や不純物がなく、綺麗で肌理が細かくて、とっても滑らかで体に塗りやすいんです。その一方、源泉温度が40℃に満たないのに表面積がやけに広いためか、湯口から離れるほどどんどんぬるくなり、お湯の投入口から最も離れている手前側のステップ付近では、冷たさすら覚えるほどでした。しかも非常に滑りやすい上、濃いグレーの泥のため底は全く見えませんから、入浴時は足裏の感覚で足元の状況を探りながら、転ばないよう慎重に入ることになります。そんな状況ですから、自分でタイマー撮影するのは難しいと判断し、監視員のおじさんに撮影を頼んだところ、快く引き受けてくれたので、肌寒さに身震いしつつ、体に泥を塗りたくって一枚撮ってもらいました。夏に入れば最高に気持ち良いんだろうけどなぁ…。なお泥湯からは明瞭なタマゴの味と匂い、そして塩辛さが感じられました。お湯は底からプクプクと上がってくる他(画像左(上))、奥の方からの流入も見られました。
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泥湯から上がった後は、上述の真水シャワーで泥を落とすわけですが、秋で日暮れに近い時間帯ともなれば、真水を浴びるのは一種の滝行みたいなもので、気合を入れて冷たさと対峙しなければなりません。でも対峙といったところで、まともに浴びられるはずもなく、どうしても逃げ腰の状態でシャワーを浴びる格好になりますから、泥が落としきれないんです。そこで監視員のおじさんの登場!
シャワーで泥を落としきれていない客をおじさんが制止し、勢い良く噴射されるホースの水で徹底的に泥を落としてくれるんです。これが冷てぇのなんの! さっきまでベンチでショボンと腰掛けていたおじさんは、まるで別人のようにキラリと白い歯を浮かべて見せながら、サディスティックな性格をむき出しにして嬉しそうに客へ冷水を浴びせかけていたのでした。
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私も冷水の洗礼を受けて泥を完全に洗い落としてから、泥湯の手前にある露天風呂へと入ります。先ほどは、おじさんに特殊な性癖があってホースの冷水を浴びせているような表現をしてしまいましたが、(おそらく)実はそうではなく、露天風呂を綺麗に保つための対処にすぎません。目測で4m×8mほどの浴槽には、おじさんの仕事の甲斐があって濁りや不純物の無い、クリアなお湯が湛えられています。そして箱根の大涌谷のような、噴気帯に漂っているような硫化水素臭が、湯面から漂ってきます。イオウ感は嗅覚のみならず、視覚面でも現れており、白く塗装されたプールサイドの湯面上には、イオウの付着によって部分的に黄色く染まっていました。肉眼でははっきり確認できたのですが、私の安いデジカメではいまいち捉えきれず、レタッチソフトで加工してみたのですが、辛うじて黄色くなっているのがわかる程度(右(下)画像の赤丸内)。わかるかな、わかんねぇだろうなぁ。
そんな往年の松鶴家千とせの名台詞はともかく、私が泥湯に浸かっているうちに、ツアーの団体さんは立ち去ってしまったらしく、露天風呂には誰一人としていませんでした。よし、温泉を独り占めできるぞ!
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ということで、再びカメラをおじさんに手渡し、入浴中の私を撮ってもらいました。深さが1.7メートルもあるため、身長が1.65mしかない私は完全に沈んでしまいます。そこで学生時代にちょこっと齧った小堀流の泳法(立ち泳ぎを特徴とする日本の古式泳法)を実践しながら、辛うじて顔を湯面上に出しています。お湯の温度は36.6℃。日本のお風呂からすればかなりぬるいのですが、お隣の泥湯はそれより更にぬるかったので、この温度でも十分に温かく感じられます。いやむしろ、思いのほか、長湯できなかったのが正直なところです。と申しますのもお湯の塩分濃度がとても高く、イオウによる血管拡張も相乗効果となったのか、数分浸かっているだけで心臓の鼓動が高鳴り、体力が奪われてしまったのです。深くて落ち着いて湯浴みできないことも理由の一つですが、情けないことにお湯の意外な力強さに、私の体は音を上げてしまいました。でも、それだけお湯が濃いってことなんですね。塩辛くてタマゴ味を有し、刺激を伴う硫化水素臭を放つ、本物の温泉です。食塩泉だけあり、ツルスベ浴感はなかなか。しかも入浴中にはしっかり気泡も付着しました。高クオリティのお湯です。
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浴槽内に湯口らしきものが無いかわりに、底に敷き詰められた砂利からプクプク絶え間なく泡が上がっていましたので、お湯は足元湧出もしくは足元供給なのでしょう。その量も相当多いようであり、浴槽からは大量のお湯が、まるで川のように惜しげも無く流れ出ていました。文句なしの掛け流しです。
なおここではロッカーのようなものが見当たらなかったので、私の貴重品はおじさんや自分の目が届く位置へ置いておきました。ご参考までに。
ダルヤンから舟で10分ほど。川の対岸。
GPS:N36.844177, E28.631355,
5リラ
シャンプーや石鹸は使用禁止。ロッカーやドライヤーは見当たらず
私の好み:★★+0.5
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スルタニエ温泉からダルヤンの街へ戻るルートの途中にあるので、せっかく舟を貸し切ったんですから、温泉をハシゴしない手はありません。私は水着のまま舟に乗り込み、スルタニエから約30分ほどでダルヤン泥温泉に到着です。船頭さんが船着場へ舟を舫ります。
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エントランスに立てられている看板にご注目。シャンプーや石鹸は使用禁止です。シャワーの水を含め、お湯は全て川へ排湯されるので、環境保護のために泡立つものは使えないわけです。緑に囲まれた窓口のお兄さんに5リラを支払い入場します。
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エントランスから食堂を抜けて入浴ゾーンへ。水路でアクセスする施設だからか、装飾としての船具が随所に見られました。
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ダルヤンはビーチリゾート地ですから、夏が観光の最盛期であり、私が訪れた秋は一気に客足が減って静かになるのですが、付近にギリシャ・ロードス島への足がかりとなる観光地マルマリスがあるためか、シーズンオフでも欧州各地から訪れる観光客が一定程度おり、この日も温泉を巡るツアー客が陽気に湯浴みを楽しんでおりました。前回のスルタニエおよびこの泥温泉では、いわゆる東洋人顔は全く見かけませんでしたし、ほとんどがツアー客のようでしたから、一人で舟を借りきって温泉めぐりをする極東人の私は、意外と奇特な存在だったかも。
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(右(下)画像はクリックで拡大)
左(上)の左側に写っているおじさんは、露天風呂の監視員です。まるでカミさんから追い出されて覇気を失った亭主のように、所在なさげに座っているのですが、そんな外見とは裏腹に、お客さんの動向には眼光炯々、特にスリッパで入浴ゾーンへ入ろうとしたり、後述する泥湯の泥を付けたまま露天風呂へ入ろうとする客がいれば、その都度しっかり声をかけて注意していました。
おじさんが腰掛けている背後には、大きいながらも大した内容が書かれていない簡単な分析表が掲示されています。これによれば、温度は39℃、ナトリウムイオン11.44g, カルシウムイオン1.108g、塩化物イオン20.140g、硫酸塩イオン2.735gとのこと。スルタニエ温泉のように濃い目の食塩泉のようです。データの下に記されている文章の冒頭には"BITTE"と書かれていますね。ということはドイツ語じゃないですか。グーグル先生に翻訳してもらったところ、まず泥を落としてから温泉に入って下さい、という内容なんだそうです。ということは、この温泉はドイツ系の訪問客が多いのかしら(ドイツにも温泉は多いですからね)。
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画像左(上)に写っている、ズラリと並んでいる小さな小屋は、更衣用の個室です。でも暗くて狭いので、私は他の視線が届かない建物の影でササッと着替えちゃいました。
一方、画像右(下)の、樹の枝を重ねて屋根にしている施設は、地面がビショビショに濡れていることから想像がつきますが、シャワーです。シャワーといっても、お湯なんて親切なものは出てきません。ただの冷たい水であり、コックを開けるとドバっと吐き出されるシンプルなタイプのものです。後述する泥湯で体中が泥まみれになりましたら、この冷水シャワーで冷たさを怺えながら泥を洗い落とします。
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ダルヤン泥温泉には泥湯と普通の温泉露天風呂という2つの浴槽がありますが、まずは名物の泥湯から入ってみることにしました。スルタニエの泥湯は湖畔でしたが、こちらは山裾であり、はるかに大きくて立派です。
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スルタニエと違うのは大きさばかりじゃありません。こちらの泥は塊や不純物がなく、綺麗で肌理が細かくて、とっても滑らかで体に塗りやすいんです。その一方、源泉温度が40℃に満たないのに表面積がやけに広いためか、湯口から離れるほどどんどんぬるくなり、お湯の投入口から最も離れている手前側のステップ付近では、冷たさすら覚えるほどでした。しかも非常に滑りやすい上、濃いグレーの泥のため底は全く見えませんから、入浴時は足裏の感覚で足元の状況を探りながら、転ばないよう慎重に入ることになります。そんな状況ですから、自分でタイマー撮影するのは難しいと判断し、監視員のおじさんに撮影を頼んだところ、快く引き受けてくれたので、肌寒さに身震いしつつ、体に泥を塗りたくって一枚撮ってもらいました。夏に入れば最高に気持ち良いんだろうけどなぁ…。なお泥湯からは明瞭なタマゴの味と匂い、そして塩辛さが感じられました。お湯は底からプクプクと上がってくる他(画像左(上))、奥の方からの流入も見られました。
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泥湯から上がった後は、上述の真水シャワーで泥を落とすわけですが、秋で日暮れに近い時間帯ともなれば、真水を浴びるのは一種の滝行みたいなもので、気合を入れて冷たさと対峙しなければなりません。でも対峙といったところで、まともに浴びられるはずもなく、どうしても逃げ腰の状態でシャワーを浴びる格好になりますから、泥が落としきれないんです。そこで監視員のおじさんの登場!
シャワーで泥を落としきれていない客をおじさんが制止し、勢い良く噴射されるホースの水で徹底的に泥を落としてくれるんです。これが冷てぇのなんの! さっきまでベンチでショボンと腰掛けていたおじさんは、まるで別人のようにキラリと白い歯を浮かべて見せながら、サディスティックな性格をむき出しにして嬉しそうに客へ冷水を浴びせかけていたのでした。
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私も冷水の洗礼を受けて泥を完全に洗い落としてから、泥湯の手前にある露天風呂へと入ります。先ほどは、おじさんに特殊な性癖があってホースの冷水を浴びせているような表現をしてしまいましたが、(おそらく)実はそうではなく、露天風呂を綺麗に保つための対処にすぎません。目測で4m×8mほどの浴槽には、おじさんの仕事の甲斐があって濁りや不純物の無い、クリアなお湯が湛えられています。そして箱根の大涌谷のような、噴気帯に漂っているような硫化水素臭が、湯面から漂ってきます。イオウ感は嗅覚のみならず、視覚面でも現れており、白く塗装されたプールサイドの湯面上には、イオウの付着によって部分的に黄色く染まっていました。肉眼でははっきり確認できたのですが、私の安いデジカメではいまいち捉えきれず、レタッチソフトで加工してみたのですが、辛うじて黄色くなっているのがわかる程度(右(下)画像の赤丸内)。わかるかな、わかんねぇだろうなぁ。
そんな往年の松鶴家千とせの名台詞はともかく、私が泥湯に浸かっているうちに、ツアーの団体さんは立ち去ってしまったらしく、露天風呂には誰一人としていませんでした。よし、温泉を独り占めできるぞ!
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ということで、再びカメラをおじさんに手渡し、入浴中の私を撮ってもらいました。深さが1.7メートルもあるため、身長が1.65mしかない私は完全に沈んでしまいます。そこで学生時代にちょこっと齧った小堀流の泳法(立ち泳ぎを特徴とする日本の古式泳法)を実践しながら、辛うじて顔を湯面上に出しています。お湯の温度は36.6℃。日本のお風呂からすればかなりぬるいのですが、お隣の泥湯はそれより更にぬるかったので、この温度でも十分に温かく感じられます。いやむしろ、思いのほか、長湯できなかったのが正直なところです。と申しますのもお湯の塩分濃度がとても高く、イオウによる血管拡張も相乗効果となったのか、数分浸かっているだけで心臓の鼓動が高鳴り、体力が奪われてしまったのです。深くて落ち着いて湯浴みできないことも理由の一つですが、情けないことにお湯の意外な力強さに、私の体は音を上げてしまいました。でも、それだけお湯が濃いってことなんですね。塩辛くてタマゴ味を有し、刺激を伴う硫化水素臭を放つ、本物の温泉です。食塩泉だけあり、ツルスベ浴感はなかなか。しかも入浴中にはしっかり気泡も付着しました。高クオリティのお湯です。
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浴槽内に湯口らしきものが無いかわりに、底に敷き詰められた砂利からプクプク絶え間なく泡が上がっていましたので、お湯は足元湧出もしくは足元供給なのでしょう。その量も相当多いようであり、浴槽からは大量のお湯が、まるで川のように惜しげも無く流れ出ていました。文句なしの掛け流しです。
なおここではロッカーのようなものが見当たらなかったので、私の貴重品はおじさんや自分の目が届く位置へ置いておきました。ご参考までに。
ダルヤンから舟で10分ほど。川の対岸。
GPS:N36.844177, E28.631355,
5リラ
シャンプーや石鹸は使用禁止。ロッカーやドライヤーは見当たらず
私の好み:★★+0.5