話の流れとしては前回からの続きとなります。トルコ・エーゲ海地方のダルヤンという小さな街で温泉を楽しんだ私は、温泉による石灰棚で有名な世界遺産パムッカレを目指すべく、ダルヤンからバスに乗ってパムッカレの玄関口であるデニズリという街へ移動し(ここまでは前回記事を参照)、そこから地元の足であるミニバス(路線バス)に乗り継いで、パムッカレの奥に位置する温泉地カラハユットへ向かったのでした。
旅行日:2014年10月下旬
●デニズリからカラハユットへ
ダルヤンからのバスがデニズリのオトガル(バスターミナル)地下2階に着いたのはお昼12時をちょっと越えた頃。オトガルの構内を出ること無く、同じく地下2階の発着場からカラハユット行のミニバスに乗り継ぐ。この地下2階には乗り場がたくさんあり、ターミナルには行き先を案内する表示類もないので、どのバスに乗るべきか全く見当がつかない。トルコ屈指の観光名所へアクセスする路線なのに、わかりやすい標識類がまったく無いとは想定外である。仕方ないので、そこでバスの関係者らしき人物を何人か見つけて、手当たり次第に「カラハユット?」と尋ねたところ、行き着いたのは76番乗り場であった。白い車体のボンネットおよびダッシュボードに「パムッカレ・カラハユット」と表示されていることを確認して乗り込む。
時刻表があるのかよくわからないが、私を含む乗客が数人乗りこんだところで(12:35頃)、運転手はおもむろにドアを閉めてバスを動かした。まずはこの日の宿泊地であるカラハユットという温泉地のホテルへ大きな荷物を置いてから、身軽になってパムッカレを観光するつもりだ。車内の運賃表によれば、デニズリからパムッカレまでは3.5リラ、その奥に位置するカラハユットまでは4リラとのこと。他の乗客は乗って早々に支払っていたので、私もそれに倣って出発時に4リラを支払う。
途中パムッカレ村を通過し、その間に幾度も停車して客の乗降が繰り返され、デニズリから約35分の乗車でカラハユットに到着した(14:10頃)。おじさんの立像と玉ねぎのお化けのようなドームが中心にあるロータリーでバスを降りる。
玉ねぎ状の巨大なドームは重炭酸土類泉によって出来上がった石灰華であり、上から常に熱い温泉が落とされて、現在進行形で赤茶色の石灰ドームが少しずつ成長している。温泉地カラハユットの象徴的なモニュメントである。
カラハユットには豊富な温泉資源を活かして、大規模リゾートから小さなペンションまで、温泉を引いている宿泊施設がいくつもある。ロータリーからホテルへ向かって歩いている途中、上画像のようなお湯が抜かれた温泉プールを見つけた。当地の温泉は金気を付近で赤茶けているので、温泉であるかどうかは、色ですぐに判別できる。でもこのプールは、縁の土が思いっきりえぐられていた(工事で掘られていた)上、まわりの建物も荒れていた。廃止されちゃったのか、これから改修工事が行われるのかは不明。
ロータリーから2~3分(約300メートル)でこの日の宿泊先である「ホテルヘラクレス」にたどり着く。今宵ここで一泊。ホテル内には温泉プールがあるので、どんなお湯に出会えるのか期待に胸が膨らむが(このホテルについては後日改めて記事にします)、ここでの湯浴みは観光をひと通り終えてからのお楽しみとして後回しにして、ひとまずチェックインして部屋に大きな荷物を置き、身軽になってパムッカレ観光へ出かける。
●カラハユットでランチ
そういえばまだ昼飯を食っていなかった。パムッカレでは食事が期待できそうにないので、ここで摂っておく必要があるだろう。ロータリーの向こう側から奥へ伸びる商店街を歩いて、簡単に食事ができそうな店を探した。約600メートルにわたって一本道の両側に店が立ち並ぶ、ローカル色の強い長閑な商店街だ。
商店街の真ん中ほどでロカンタ(大衆食堂)を見つけた。カフェテリア方式なので、既に出来上がっているいくつかの料理の中で、自分が気に入ったものをカウンター越しに指差し、お店の人によそってもらえば良い。この時はレバーと手羽先の煮込みを半皿分ずつお願いした。トルコのロカンタでは、2つの料理を半分ずつで頼めば、一皿分の料金で良い。優柔不断な私にとってはありがたいシステムだ。この煮込みの他、ピラウ(バターライスのピラフ)も一緒に頼み、〆て6リラ(約300円)。
●世界遺産のパムッカレ・ヒエラポリスを見学&入浴
腹拵えを済ませたところでロータリーへ戻り、カラハユットからデニズリ行のミニバスに乗車してパムッカレへと向かう。バスの本数はかなり多く、10~20分程度待っていればやってくる。5~6分の乗車(運賃2リラ)でパムッカレの北側ゲート(出入口)に着いた。
ガイドブックによれば、入口付近には売店や軽食コーナーがあるとのことだったが、私が訪れた時にはクローズされていた。先ほどカラハユットの街で食事をしておいて正解だった。トイレを済ませ(紙が用意されており、意外と綺麗)、チケットカウンターにて入場料の25リラ(約1300円)を支払い、改札機にバーコードを読み取らせて入場する。シーズンオフだからか、この北側ゲートはかなり空いており、チケットもすぐに購入できた。これによって有料エリアに含まれるヒエラポリス遺跡とパムッカレを両方が見学可能となる。なお私が訪れた時期(10月下旬)は、8時から17時までが開場時間となっていた(夏季はもっと長いはず)。
石畳状になってる遺跡の中を歩いてパムッカレへ向かったのだが、徐々に雲行きが怪しくなり、不気味な風も吹いてきた。
世界遺産パムッカレ。真っ白な石灰棚で有名な世界的観光名所だが、ここ数年ネットにアップされている旅行記で皆さんが語っている通り、温泉が枯れて薄汚くなっちゃっている箇所が多く、ガッカリ感は否めない。一応水が溜まっていた箇所で入浴を試みたが、運悪く雨が降ってきたので、数分浸かっただけで退散。一旦別の場所を見学した後、日没直前に再訪したら、上画像のようにそこそこ綺麗な景色をカメラに収めることができた。
(パムッカレについては、次回記事で取り上げます)
パムッカレの丘の最上段からヒエラポリス遺跡へ進むと、古代ローマ時代の遺跡が掛け流しの重曹泉の中に沈んでいるという、世にも珍しい温泉露天風呂「アンティーク・プール」があるので、そこでも入浴を楽しんだ。詳しくは改めて独立した記事で取り上げるが、入浴には入場料とは別箇に料金が必要で、これがアホみたいに高い。でも、温泉ファンなら一浴する価値のある、炭酸の激しい泡付きが体験できる面白い温泉であった。
(「アンティーク・プール」については、次々回記事で取り上げます)
パムッカレの石灰棚は丘の断崖に温泉によるトラバーチンがこびりついたものであるが、その丘の上に広がっているのがヒエラポリス遺跡。地震によって14世紀に壊滅してしまったらしいが、今でもかなりの広範囲に亘って、当時の建物の跡が残っており、とりわけこのローマ劇場は、中世史以前の知識がチンプンカンプンな私ですらも息を呑むほど圧巻であった。
「アンティーク・プール」での入浴や遺跡見学をしているうちに、雨は上がったが、日が暮れてしまった。「秋の陽は釣瓶落とし」という表現は、日本でもトルコでも変わらないらしく、日が傾きはじめるとあっという間に暗くなってしまう。3つあるゲートのどこから退場しても良いのだが、入場した北側ゲートは駐車場以外何もないので、人家や商店のあるパムッカレ村に近いゲートから退出することにした。この村側のゲートへ向かうには、土足厳禁の石灰棚を裸足で歩いて、坂を下って行かなければならない。日中なら白い石灰棚の中を歩くことは当地を観光する主要な楽しみの一つとなりうるが、日没後のトラバーチンにおける歩行は、暗い、冷たい、滑るの三拍子が揃ってしまい、結構な苦行であった。具体的に言えば、石灰棚をライトアップする照明がところどころにあるので、その周辺だけは明るいが、そこから外れると途端に暗くなる。石灰棚の上には冷め切った冷たい温泉が流れており、そこを裸足で歩かねばならない。石灰棚の最上部から村側ゲートがある下部までは結構な距離があり、その間はひたすら水の冷たさを足裏や足首に感じながら歩くことになる。そして暗いと足元の確認がおろそかになるので、日中なら滑らないはずのところでも滑りやすい。実際に私は流水に足元を奪われて、左足の親指を強打してしまった。
暗・冷・滑の苦行に耐えながら石灰棚ゾーンから抜け出て、靴を履いてパムッカレ村側ゲートより退出。既にゲートのオープン時間は過ぎていたが、入場者が全て退出するまでゲートは開けておいてくれるようだ。シーズンオフでひと気の無い観光客向け飲食店や土産物店を尻目に、村の中の坂道を下ってゆき・・・
村の中心部でカラハユットに戻るバスを待つ。タイミング良く、5分ほどの待ち時間でやってきた(カラハユットまで2リラ・10分弱)。
●カラハユットの商店街で夕食
パムッカレからバスでカラハユットへ戻ってから、数時間前にランチをとったばかりの商店街を再びフラフラ歩き、今度は夕食するお店を探す。一本道の商店街を一往復した後、店頭のお兄ちゃんの掛け声につられて"SULTAN SOFRASI"というお店に入った。
店内のメニューはトルコ語のみで、英語や写真が無いため戸惑ったが、そんな私の様子に勘付いた店のおじさんは、ひとつひとつを英語で説明してくれたので、とても助かった。注文したのはシシケバブ(串焼き)とギョズレメ(Gözleme)と呼ばれる粉物の一種。後者は屋台でよく見かけるスナックのひとつ。
店先ではギョズレメの実演調理が行われていたので、おばさんに断った上で写真を撮らせてもらった。注文を受けたオバちゃんは小麦粉の生地を棒で丸く伸ばし、適度な大きさになったら、中に具を入れ、窯で焼く。具は客が選べるので、私はチーズとジャガイモをチョイスした。焼きたてのギョズレメはビールが欲しくなるような味と食感であったが、このお店ではアルコール類を扱っていないので、仕方なくファンタで我慢した。
食後、腹ごなしのために商店街をお散歩。お店の多くは地元民向けなのだが、観光客向けの店舗も散見される。中でも林家ペー・パー子に親和性が高そうなピンクだらけの店が目を惹いたが、どうやら石鹸屋シャンプーなどバラの香りにこだわったグッズ専門店のようだ。
ホテルへ戻る途中に、酒屋さんでビールを購入。先ほど食事中に飲めなかったので、部屋に戻ってから飲むつもりで買った。当地はイスラム圏であるから、観光地とはいえお酒を扱っている店は限られている。それゆえ、ちゃんとお店を見つけて確保しておかないと、酔えずに物足りない夜を迎えることになる。なお、どの店でも酒類は黒いビニール袋に入れた上で渡してくれるのだが、これは周囲の視線を慮ってのこと。
●「クルムズ・ス」で朝の露天風呂
翌朝、ホテルで朝食を済ませた後、ひと気のない静かな商店街を通り抜けて…
市営温泉「クルムズ・ス」の露天風呂で朝風呂を楽しむ。時間帯の問題か、露天風呂には人っ子ひとりおらず、終始独占で掛け流しの温泉を堪能できた。
(「クルムズ・ス」については、後日記事にします)
朝風呂を済ませてホテルへ戻る途中、温泉の前からジャーミー(モスク)まで、一匹のワンコが「喜捨」を求めて、ひたすら私の後をついてきた。実に温厚なワンコで、手持ちのスナック菓子を与えると、千切れんばかりに尻尾を振って喜んでいた。
ジャーミーの近くで、上画像のようなプール付きのホテルと思しき建物を見かけた。でも建物はかなり古ぼけており、プールも空っぽであった。今でも営業しているのかどうか…。プールの内側は赤茶けているので、間違いなく温泉が張られていたはずだ。
●カラハユットの朝市
カラハユットの商店街に並行する形でバイパスが通っている。朝風呂からホテルへの帰路は、往きと同じ道ではつまらないので、商店街ではなくそのバイパスを歩くことにした。ところが商店街よりもこのバイパスの方がはるかに人出が多い。近寄ってみると沿道にテントの列が長々と連なっており、そこで朝市が開かれていたのだった。客層は爺さん婆さんばかり。食料品はもちろんのこと、衣類もかなりたくさん売られていた。
野菜や果物など、多少雨に濡れても構わないようなものは、テントを張らずに青空販売されていた。
日がな紅茶ばかり飲んでいるお国柄、朝市でもチャイ(紅茶)屋さんは欠かせない(左(上)画像)。右画像では赤ビーツや乾燥パプリカの粉末など、ご当地の食文化に多用される農産物が並んでいる。
蜂蜜屋さんでは、一般的な瓶詰めの他、ミツバチの巣がそのままパック詰めにされて売られていた。瓶によって蜂蜜の色が異なっているのは、花の種類の相違によるものだろう。
左(上)画像の屋台ではカリン・ぶどう・そして干しぶどうが並べられ、右(下)画像ではトラックに積まれたたくさんのスイカを売っていた。荷台をそのまま見せているので、いかにも産地直送という感が出ており、良い雰囲気だったのでカメラを構えたら、店のおじさんがこちらに向かって笑いながらピースサインを出してくれた。トルコは気さくな人が多い。
次回記事では、パムッカレの石灰棚で入浴したことについて書き綴る予定です。
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旅行日:2014年10月下旬
●デニズリからカラハユットへ
ダルヤンからのバスがデニズリのオトガル(バスターミナル)地下2階に着いたのはお昼12時をちょっと越えた頃。オトガルの構内を出ること無く、同じく地下2階の発着場からカラハユット行のミニバスに乗り継ぐ。この地下2階には乗り場がたくさんあり、ターミナルには行き先を案内する表示類もないので、どのバスに乗るべきか全く見当がつかない。トルコ屈指の観光名所へアクセスする路線なのに、わかりやすい標識類がまったく無いとは想定外である。仕方ないので、そこでバスの関係者らしき人物を何人か見つけて、手当たり次第に「カラハユット?」と尋ねたところ、行き着いたのは76番乗り場であった。白い車体のボンネットおよびダッシュボードに「パムッカレ・カラハユット」と表示されていることを確認して乗り込む。
時刻表があるのかよくわからないが、私を含む乗客が数人乗りこんだところで(12:35頃)、運転手はおもむろにドアを閉めてバスを動かした。まずはこの日の宿泊地であるカラハユットという温泉地のホテルへ大きな荷物を置いてから、身軽になってパムッカレを観光するつもりだ。車内の運賃表によれば、デニズリからパムッカレまでは3.5リラ、その奥に位置するカラハユットまでは4リラとのこと。他の乗客は乗って早々に支払っていたので、私もそれに倣って出発時に4リラを支払う。
途中パムッカレ村を通過し、その間に幾度も停車して客の乗降が繰り返され、デニズリから約35分の乗車でカラハユットに到着した(14:10頃)。おじさんの立像と玉ねぎのお化けのようなドームが中心にあるロータリーでバスを降りる。
玉ねぎ状の巨大なドームは重炭酸土類泉によって出来上がった石灰華であり、上から常に熱い温泉が落とされて、現在進行形で赤茶色の石灰ドームが少しずつ成長している。温泉地カラハユットの象徴的なモニュメントである。
カラハユットには豊富な温泉資源を活かして、大規模リゾートから小さなペンションまで、温泉を引いている宿泊施設がいくつもある。ロータリーからホテルへ向かって歩いている途中、上画像のようなお湯が抜かれた温泉プールを見つけた。当地の温泉は金気を付近で赤茶けているので、温泉であるかどうかは、色ですぐに判別できる。でもこのプールは、縁の土が思いっきりえぐられていた(工事で掘られていた)上、まわりの建物も荒れていた。廃止されちゃったのか、これから改修工事が行われるのかは不明。
ロータリーから2~3分(約300メートル)でこの日の宿泊先である「ホテルヘラクレス」にたどり着く。今宵ここで一泊。ホテル内には温泉プールがあるので、どんなお湯に出会えるのか期待に胸が膨らむが(このホテルについては後日改めて記事にします)、ここでの湯浴みは観光をひと通り終えてからのお楽しみとして後回しにして、ひとまずチェックインして部屋に大きな荷物を置き、身軽になってパムッカレ観光へ出かける。
●カラハユットでランチ
そういえばまだ昼飯を食っていなかった。パムッカレでは食事が期待できそうにないので、ここで摂っておく必要があるだろう。ロータリーの向こう側から奥へ伸びる商店街を歩いて、簡単に食事ができそうな店を探した。約600メートルにわたって一本道の両側に店が立ち並ぶ、ローカル色の強い長閑な商店街だ。
商店街の真ん中ほどでロカンタ(大衆食堂)を見つけた。カフェテリア方式なので、既に出来上がっているいくつかの料理の中で、自分が気に入ったものをカウンター越しに指差し、お店の人によそってもらえば良い。この時はレバーと手羽先の煮込みを半皿分ずつお願いした。トルコのロカンタでは、2つの料理を半分ずつで頼めば、一皿分の料金で良い。優柔不断な私にとってはありがたいシステムだ。この煮込みの他、ピラウ(バターライスのピラフ)も一緒に頼み、〆て6リラ(約300円)。
●世界遺産のパムッカレ・ヒエラポリスを見学&入浴
腹拵えを済ませたところでロータリーへ戻り、カラハユットからデニズリ行のミニバスに乗車してパムッカレへと向かう。バスの本数はかなり多く、10~20分程度待っていればやってくる。5~6分の乗車(運賃2リラ)でパムッカレの北側ゲート(出入口)に着いた。
ガイドブックによれば、入口付近には売店や軽食コーナーがあるとのことだったが、私が訪れた時にはクローズされていた。先ほどカラハユットの街で食事をしておいて正解だった。トイレを済ませ(紙が用意されており、意外と綺麗)、チケットカウンターにて入場料の25リラ(約1300円)を支払い、改札機にバーコードを読み取らせて入場する。シーズンオフだからか、この北側ゲートはかなり空いており、チケットもすぐに購入できた。これによって有料エリアに含まれるヒエラポリス遺跡とパムッカレを両方が見学可能となる。なお私が訪れた時期(10月下旬)は、8時から17時までが開場時間となっていた(夏季はもっと長いはず)。
石畳状になってる遺跡の中を歩いてパムッカレへ向かったのだが、徐々に雲行きが怪しくなり、不気味な風も吹いてきた。
世界遺産パムッカレ。真っ白な石灰棚で有名な世界的観光名所だが、ここ数年ネットにアップされている旅行記で皆さんが語っている通り、温泉が枯れて薄汚くなっちゃっている箇所が多く、ガッカリ感は否めない。一応水が溜まっていた箇所で入浴を試みたが、運悪く雨が降ってきたので、数分浸かっただけで退散。一旦別の場所を見学した後、日没直前に再訪したら、上画像のようにそこそこ綺麗な景色をカメラに収めることができた。
(パムッカレについては、次回記事で取り上げます)
パムッカレの丘の最上段からヒエラポリス遺跡へ進むと、古代ローマ時代の遺跡が掛け流しの重曹泉の中に沈んでいるという、世にも珍しい温泉露天風呂「アンティーク・プール」があるので、そこでも入浴を楽しんだ。詳しくは改めて独立した記事で取り上げるが、入浴には入場料とは別箇に料金が必要で、これがアホみたいに高い。でも、温泉ファンなら一浴する価値のある、炭酸の激しい泡付きが体験できる面白い温泉であった。
(「アンティーク・プール」については、次々回記事で取り上げます)
パムッカレの石灰棚は丘の断崖に温泉によるトラバーチンがこびりついたものであるが、その丘の上に広がっているのがヒエラポリス遺跡。地震によって14世紀に壊滅してしまったらしいが、今でもかなりの広範囲に亘って、当時の建物の跡が残っており、とりわけこのローマ劇場は、中世史以前の知識がチンプンカンプンな私ですらも息を呑むほど圧巻であった。
「アンティーク・プール」での入浴や遺跡見学をしているうちに、雨は上がったが、日が暮れてしまった。「秋の陽は釣瓶落とし」という表現は、日本でもトルコでも変わらないらしく、日が傾きはじめるとあっという間に暗くなってしまう。3つあるゲートのどこから退場しても良いのだが、入場した北側ゲートは駐車場以外何もないので、人家や商店のあるパムッカレ村に近いゲートから退出することにした。この村側のゲートへ向かうには、土足厳禁の石灰棚を裸足で歩いて、坂を下って行かなければならない。日中なら白い石灰棚の中を歩くことは当地を観光する主要な楽しみの一つとなりうるが、日没後のトラバーチンにおける歩行は、暗い、冷たい、滑るの三拍子が揃ってしまい、結構な苦行であった。具体的に言えば、石灰棚をライトアップする照明がところどころにあるので、その周辺だけは明るいが、そこから外れると途端に暗くなる。石灰棚の上には冷め切った冷たい温泉が流れており、そこを裸足で歩かねばならない。石灰棚の最上部から村側ゲートがある下部までは結構な距離があり、その間はひたすら水の冷たさを足裏や足首に感じながら歩くことになる。そして暗いと足元の確認がおろそかになるので、日中なら滑らないはずのところでも滑りやすい。実際に私は流水に足元を奪われて、左足の親指を強打してしまった。
暗・冷・滑の苦行に耐えながら石灰棚ゾーンから抜け出て、靴を履いてパムッカレ村側ゲートより退出。既にゲートのオープン時間は過ぎていたが、入場者が全て退出するまでゲートは開けておいてくれるようだ。シーズンオフでひと気の無い観光客向け飲食店や土産物店を尻目に、村の中の坂道を下ってゆき・・・
村の中心部でカラハユットに戻るバスを待つ。タイミング良く、5分ほどの待ち時間でやってきた(カラハユットまで2リラ・10分弱)。
●カラハユットの商店街で夕食
パムッカレからバスでカラハユットへ戻ってから、数時間前にランチをとったばかりの商店街を再びフラフラ歩き、今度は夕食するお店を探す。一本道の商店街を一往復した後、店頭のお兄ちゃんの掛け声につられて"SULTAN SOFRASI"というお店に入った。
店内のメニューはトルコ語のみで、英語や写真が無いため戸惑ったが、そんな私の様子に勘付いた店のおじさんは、ひとつひとつを英語で説明してくれたので、とても助かった。注文したのはシシケバブ(串焼き)とギョズレメ(Gözleme)と呼ばれる粉物の一種。後者は屋台でよく見かけるスナックのひとつ。
店先ではギョズレメの実演調理が行われていたので、おばさんに断った上で写真を撮らせてもらった。注文を受けたオバちゃんは小麦粉の生地を棒で丸く伸ばし、適度な大きさになったら、中に具を入れ、窯で焼く。具は客が選べるので、私はチーズとジャガイモをチョイスした。焼きたてのギョズレメはビールが欲しくなるような味と食感であったが、このお店ではアルコール類を扱っていないので、仕方なくファンタで我慢した。
食後、腹ごなしのために商店街をお散歩。お店の多くは地元民向けなのだが、観光客向けの店舗も散見される。中でも林家ペー・パー子に親和性が高そうなピンクだらけの店が目を惹いたが、どうやら石鹸屋シャンプーなどバラの香りにこだわったグッズ専門店のようだ。
ホテルへ戻る途中に、酒屋さんでビールを購入。先ほど食事中に飲めなかったので、部屋に戻ってから飲むつもりで買った。当地はイスラム圏であるから、観光地とはいえお酒を扱っている店は限られている。それゆえ、ちゃんとお店を見つけて確保しておかないと、酔えずに物足りない夜を迎えることになる。なお、どの店でも酒類は黒いビニール袋に入れた上で渡してくれるのだが、これは周囲の視線を慮ってのこと。
●「クルムズ・ス」で朝の露天風呂
翌朝、ホテルで朝食を済ませた後、ひと気のない静かな商店街を通り抜けて…
市営温泉「クルムズ・ス」の露天風呂で朝風呂を楽しむ。時間帯の問題か、露天風呂には人っ子ひとりおらず、終始独占で掛け流しの温泉を堪能できた。
(「クルムズ・ス」については、後日記事にします)
朝風呂を済ませてホテルへ戻る途中、温泉の前からジャーミー(モスク)まで、一匹のワンコが「喜捨」を求めて、ひたすら私の後をついてきた。実に温厚なワンコで、手持ちのスナック菓子を与えると、千切れんばかりに尻尾を振って喜んでいた。
ジャーミーの近くで、上画像のようなプール付きのホテルと思しき建物を見かけた。でも建物はかなり古ぼけており、プールも空っぽであった。今でも営業しているのかどうか…。プールの内側は赤茶けているので、間違いなく温泉が張られていたはずだ。
●カラハユットの朝市
カラハユットの商店街に並行する形でバイパスが通っている。朝風呂からホテルへの帰路は、往きと同じ道ではつまらないので、商店街ではなくそのバイパスを歩くことにした。ところが商店街よりもこのバイパスの方がはるかに人出が多い。近寄ってみると沿道にテントの列が長々と連なっており、そこで朝市が開かれていたのだった。客層は爺さん婆さんばかり。食料品はもちろんのこと、衣類もかなりたくさん売られていた。
野菜や果物など、多少雨に濡れても構わないようなものは、テントを張らずに青空販売されていた。
日がな紅茶ばかり飲んでいるお国柄、朝市でもチャイ(紅茶)屋さんは欠かせない(左(上)画像)。右画像では赤ビーツや乾燥パプリカの粉末など、ご当地の食文化に多用される農産物が並んでいる。
蜂蜜屋さんでは、一般的な瓶詰めの他、ミツバチの巣がそのままパック詰めにされて売られていた。瓶によって蜂蜜の色が異なっているのは、花の種類の相違によるものだろう。
左(上)画像の屋台ではカリン・ぶどう・そして干しぶどうが並べられ、右(下)画像ではトラックに積まれたたくさんのスイカを売っていた。荷台をそのまま見せているので、いかにも産地直送という感が出ており、良い雰囲気だったのでカメラを構えたら、店のおじさんがこちらに向かって笑いながらピースサインを出してくれた。トルコは気さくな人が多い。
次回記事では、パムッカレの石灰棚で入浴したことについて書き綴る予定です。
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